ちょっと大きく場内がざわついております、タイキエルドラドも後方だ、
さあ早くもこれから400のハロン棒というところ、
サイレンススズカ逃げる逃げる逃げる! 大逃げであります!
さあサイレンススズカと武豊、大きく逃げて直線に入ってくる大歓声だ!
マラソンや駅伝などの長距離陸上競技や、自転車ロードレースでも同種の作戦が採られることがあるが、本項では主に競馬のそれについて解説する。また、自転車ロードレースについても軽く解説する。
競馬において、スタートから先頭に立ち、そのまま先頭でレースを引っぱる作戦のことを「逃げ」と呼ぶ。この作戦を得意とする馬は「逃げ馬」と呼ばれる。
そんな「逃げ」の中でも、後続をひときわ大きく突き放して逃げることを「大逃げ」と呼ぶ。どこで何馬身離せば大逃げ、という明確な基準はないが、道中で集団を10馬身以上離していれば文句なく大逃げと呼べるだろう。大逃げを仕掛けた馬がいるときは、中継のカメラが引きまくって隊列の画面で馬が点にしか見えなくなったりする。
作戦としては基本的に「前半で稼いだ大差のリードで後半を凌ぎきる」というシンプルなものだが、前半で他の馬に大差をつけるということはそのぶんハイペースで飛ばし、前半だけで著しく消耗するということであり、大逃げを仕掛けた馬は大抵は最後の直線、早ければ3コーナーあたりで捕まって沈んで行くことになる。
3コーナーを回っていってあと800mしかありませんが、この差はどうなんでしょうか、セーフティリードか、ツインターボの逃げ、軽快に飛ばしてます、まだ10馬身ぐらいのリードがあります!
しかし差が徐々に詰まってまいりました3・4コーナー中間、2番手にはナリタブライアンとネーハイシーザー、外からグイグイ上がっていきましたヒシアマゾンが行った! ヒシアマゾンが一気に行ってナリタブライアンに並んでくる!
4コーナーに入ってツインターボの先頭はここで終わり!
しかしそれ故に、大逃げの作戦にこだわる馬、大レースで大逃げを仕掛けてそのまま逃げ切ってしまう馬、勝てないまでも上位に粘り込む馬は、観るものに強い印象を与え、レースを大いに盛り上げる。
また、ハイペースで大逃げする馬が引っぱるレースはレコードタイムにもなりやすく、記録にも記憶にも残るレースになることも。
道中は好位で脚をため、直線でスパートをかけて差し切るというのが競馬の定石だが、みんながみんなそれをやりだすと、いわゆる「スローペース症候群」、スタートから団子状態のまま直線の瞬発力でレースが決まる「直線ヨーイドン」と揶揄されるレースになりがちである。
ところがそこに一頭でも油断ならないハイペースの逃げ馬が加わると、そのペースについていくか行かないか、どこで逃げ馬を捕まえに行くか、位置取りとペース配分に新たな駆け引きが加わり、レースの緊迫感が増す。そして大逃げを仕掛けた馬が後続を大きく突き放したまま直線に入ったときの「もしかしてこのまま……」というハラハラドキドキは、何物にも替えがたい魅力がある。単に目立つというだけでなく、大逃げのレースが盛り上がるゆえんである。
ただし、単にハイペースで逃げれば大逃げになるわけではない。実際のところ、大逃げの展開になるかどうかを左右するのは、大抵の場合は逃げ馬自身よりも、むしろその後ろの馬である。
これはたとえば、パンサラッサの2022年宝塚記念と天皇賞(秋)を見比べるとわかりやすい。パンサラッサは宝塚記念では1000m通過57秒6、天皇賞(秋)では1000m通過57秒4とどちらも同じぐらいのペースで飛ばしたのだが、宝塚記念では2番人気のタイトルホルダーがそれについていったため全体がパンサラッサの超ハイペースに付き合うことになり、それほど大逃げの形にはならなかった。一方、天皇賞(秋)ではついてくる馬がおらず、2番手以降がスローペースで控えたため、15馬身以上離した大逃げの展開になった。
なので、見た目は大逃げでも実際はペースが速くないということもある。代表的な例は2009年のエリザベス女王杯で、クィーンスプマンテとテイエムプリキュアが2頭で平均ペースで逃げたが、3番手のリトルアマポーラ(クリストフ・スミヨン)が超スローに抑えたため20馬身以上離した大逃げとなった(詳しくは後述)。人気馬が後方待機の差し馬中心で、逃げ馬がノーマークの人気薄のときにこういうことがたまに起こる。そしてこういうレースで馬券を外した競輪もやってる競馬ファンは「追走義務違反」と怒るが、残念ながら日本の競馬に追走義務違反はない。海外では伏兵の大逃げ大差圧勝が決まったレースで勝ち馬以外の全騎手が騎乗停止なんて事例もあるが……。
なお、大逃げの展開となるのは基本的に1800m以上のレースである。マイル以下の短距離のレースでは、もともと全体のペースが速く道中も短いため、1頭ないし2頭が後続を大きく突き放すような展開にはなりにくい。
またダートは地方競馬場に小回りで直線が短いコースが多いこともあって強豪馬に逃げ・先行馬が多いため、やはり独走大逃げの形にはなりにくい。地方JpnIでは先行する中央の一線級と地方馬との間が道中から大きく開くことはよくあるが、それは大逃げではなく単に実力差があるだけである。
大逃げを仕掛けた馬が勝った、あるいは3着以内に粘った有名な重賞レースをいくつか紹介する。なるべく1頭1レース。「競馬の伝説のレース集」の記事も参照。
さあプリテイキャストが大逃げを打ちました、柴田政人が大逃げを打っています!
まだ50mのリードで3コーナーの坂を下りました、3コーナーの坂を下りました、
2番手のカツラノハイセイコ、そしてホウヨウボーイ、
この2頭ははたして前のプリテイキャストに追いつくかどうか、
驚きの声が場内から湧き上がっております!
グレード制導入前、まだ春天と同じ3200mでの開催だった天皇賞(秋)での伝説の大逃げ。
1番人気は前年のダービー馬カツラノハイセイコで、安定した成績を収めていたホウヨウボーイ、シルクスキーらがそれに次ぐ人気を集める中、8番人気の牝馬プリテイキャストが後続を100m以上離す大逃げを仕掛け、そのまま7馬身差で逃げ切り勝ち。ゴール前で実況の盛山毅アナが「2番手以下は届かない!絶対に届かない!」と断言する圧勝だった。
2023年現在も、彼女が3200mの天皇賞を勝った最後の牝馬である。
さあカツラギエースがどこまでがんばる、カツラギエースがどこまでがんばる、
大逃げだ、大逃げであります!
ベッドタイムが早めに上がってきた、ベッドタイム上がってきた、
そしてシンボリルドルフ5番手、ミスターシービーは最後方!
さあ600を過ぎた、4コーナーのカーブを回る!
さあカツラギの逃げが鈍った、カツラギ鈍った、後続馬が追い込んでくる!
世界の強豪が追い込んできます!
1981年の創設以来、日本勢は海外馬に力の差を見せつけられてばかりいた国際招待レース。しかしこの年は前年の三冠馬ミスターシービーと、この年の無敗の三冠馬シンボリルドルフが参戦。夢の三冠馬対決と、そのどちらかによる日本馬のジャパンカップ初制覇を誰もが夢見る中、10番人気の伏兵が大観衆を唖然とさせた。
その馬の名はこの年の宝塚記念馬・カツラギエース。道中後続を10馬身以上離す大逃げを仕掛け、4コーナーでもう真後ろまで詰め寄られてそのまま沈むかと思いきや、そこから驚異の二枚腰で府中の長い直線を粘りきり、2頭の三冠馬と海外勢を完封。日本馬初のジャパンカップ制覇の栄冠を手に入れた。
そしてこのレースを見て騎手を志したひとりの少年が、19年後に同じ舞台で同じことをやるのである。
前2頭が依然として逃げている、大逃げであります!2頭!
メジロパーマー、メジロパーマーとダイタク!
さあ、3番手以下までまだ15~6馬身ある!
さあ、早く追いかけなければいけない!
ここは3・4コーナー、後続馬14頭が一気に差を詰めないと、とても前の2頭は捕まりそうにない!
メジロパーマー大逃げ、宝塚の再現なるか!?
この年の宝塚記念を超ハイペースでブッ飛ばして逃げ切りグランプリホースに輝いたが、その後2戦を惨敗していたためフロック視され、16頭中ブービーの15番人気だったメジロパーマー。特に前走の天皇賞(秋)ではダイタクヘリオスと2頭で大暴走してトウカイテイオーを巻き添えに17着に撃沈していた。
しかし天皇賞(秋)と同様、ダイタクヘリオスが途中で競り掛けに行った結果、またしても2頭で後続を大きく引き離しての大逃げとなる。マイラーのヘリオスが力尽きて沈む一方、障害で鍛えたスタミナを武器にパーマーはレガシーワールドの追撃をハナ差凌ぎきって逃げ切り、グランプリ連覇を果たしたのだった。
なお、ダイタクヘリオスがいなかったのでこの有馬記念ほどの大逃げではないが、ナイスネイチャとタケノベルベットの追撃を粘り倒して振り切った翌1993年の阪神大賞典、そして王者メジロマックイーンと鬼を宿したライスシャワーの対決と互角に渡り合った天皇賞(春)も必見である。
さあしかし、この場内のどよめきは、ツインターボのとにかく逃げ! ツインターボのとにかく逃げ! 何馬身開いているか、とても実況では、今の段階ではわからないぐらい、大きく大きく差をつけて逃げていっています!
ツインターボが逃げる! ツインターボが逃げる! さあ、追いかけるライスは3番手あたりまで上がってきたか、現在ライスは4番手、ライスは4番手、ホワイトストーンが2番手、ハシルショウグンが3番手!
さあ、早くもツインターボだけが、ツインターボだけが4コーナーのカーブに入ってきました!
「大逃げ馬」と言えば誰もがサイレンススズカと並んで真っ先に連想する馬、それがツインターボ。玉砕覚悟でブッ飛ばして逆噴射して沈んで行く、その愚直なレースぶりで成績以上に愛された彼の代表レースといえば、なんといってもこのオールカマーである。
前走七夕賞が逃げ馬5頭による超ハイペースの消耗戦となり、後続を全員すり潰しての逃げ切り勝ちだったこともあり、他の馬が同じ轍は踏まぬと控える中、中舘騎手は途中でペースを緩め、まんまとしてやったりの溜め大逃げに持ち込んだ。そのまま1番人気ライスシャワーら後ろを置き去りに、5馬身差の逃げ切り勝ち。
愛されるネタ馬が逆噴射装置の故障でそのまま逃げ切ってしまったお笑いレースとして語り継がれてきたレースだが、某アニメ視聴者は4コーナーあたりから涙腺が緩むようになるらしい……。
さあ拍手に送られてサイレンススズカ先頭だ、リードをまだ5馬身で200mを通過! さあ2番手が4頭固まってきたがミッドナイトベッドわずかに2番手に上がってきたミッドナイトベッド!
100m独走だ! サイレンススズカ、4連勝です4連勝! 重賞は3連勝!
「大逃げ馬」といえば、のもう1頭。異次元の逃亡者サイレンススズカのベストレースといえばエルコンドルパサーとグラスワンダーを切って捨てた毎日王冠だろうが、彼の名を一躍高めたレースがこちら。
4歳(現3歳)までは弥生賞でゲートをくぐってしまったりと有り余る才能を発揮しきれずにいたサイレンススズカだが、その年の終わりの香港遠征で武豊と出会ってから覚醒。スタートから超ハイペースでブッ飛ばして、道中息を入れて直線で二の脚を発揮、そのまま逃げ切るというスタイルを確立し連勝街道を突き進んだ。その4連勝目となったこの金鯱賞は、同期の菊花賞馬マチカネフクキタルや4連勝中のタイキエルドラドなどの強敵が揃う中、道中大逃げから直線に入ってもさらに差が開き続けるという異次元のレースで11馬身差のレコードタイム大差勝ち。当時の競馬ファンの度肝を抜いた。
2023年現在も、JRAの平地重賞で「大差」での勝利が記録されたのはこれが最後である。そしてこの後、サイレンススズカは天皇賞(秋)で天国まで大逃げしていってしまうことになる。
まず行ったのはやはり1番のセイウンスカイ、セイウンスカイが行って、5馬身から7馬身、
ああ~10馬身ぐらいのリードを取りました横山典弘であります、そして3番のメジロブライト、7番のシルクジャスティスは後方に控えて1コーナーに入っていきました、
おお~、セイウンスカイのこれは大逃げであります! セイウンスカイの大逃げ!
もう15馬身から20馬身ぐらいのリードをとって、2コーナーのカーブに入っていきました!
1998年のクラシック二冠馬セイウンスカイ。彼のベストレースといえばなんといっても世界レコードで逃げ切った菊花賞だが、あちらはどちらかといえば「緩急自在の幻惑逃げ」として語られるので、「大逃げ」として挙げるとすれば前哨戦のこの京都大賞典であろう。
7頭立ての少頭数だったが、スタートからどんどん飛ばして後続を大きく突き放して逃げたセイウンスカイ。しかし3コーナー前から差が詰まっていき、4コーナーではもう後続に捕まってしまう。なんだこのまま沈むのか……と思いきや、これは単なる死んだふり。後続を引きつけるだけ引きつけて横山典弘が気合いをつけると再加速。猛然と追い込んできたメジロブライトを二の脚で完封する完璧な逃げ切りであった。
なので内容としてはこちらも幻惑逃げと呼んだ方が正確ではあるが、道中につけたリードは充分に大逃げと呼べるだけの差。その上で二の脚を残して突き放したわけで、菊花賞を差し置いてこちらをセイウンスカイのベストレースに挙げるファンもいる。
ちなみにこのレースと同日に東京競馬場で行われていたのが、上でもちらっと触れたサイレンススズカvsエルコンドルパサーvsグラスワンダーの毎日王冠である。
さあ前はカネツフルーヴがさあ大きなリード、大逃げを打っております、
カネツフルーヴ1周目、3コーナーをカーブしていきますが、
どうでしょう、7馬身、8馬身、9馬身、10馬身ぐらいはありますか、
カネツフルーヴと、松永幹夫が一人旅!
南関東の名牝・ロジータの息子カネツフルーヴ。雄大な馬格でパワーに優れた一方で末脚のキレ味に欠けた彼が6歳となって編み出したのが、後続をすり潰すハイペース大逃げの戦法だった。そんな彼の代表レースといえば母仔制覇を果たした2003年川崎記念だが残念ながらニコニコに動画がないので、ここでは最もその大逃げぶりが際立つ同年のオグリキャップ記念を取り上げる。
川崎記念を逃げ切ってハイペース大逃げのスタイルを確立したカネツフルーヴと松永幹夫は、前走のダイオライト記念でも大逃げでそのまま逃げ切りを果たし、全盛期を迎えていた。それに続いて乗りこんだこのオグリキャップ記念は1周目で10馬身以上離すと、2周目ではもう15馬身は後続をぶっちぎる大逃げを披露。前述の通り基本先行有利の交流重賞でこれほどの大逃げはなかなか見られないのだが、後ろを完全に置き去りにしたカネツフルーヴはそのまま9馬身差で逃げ切り圧勝、レコードタイムを叩きだした。
ところが、このゴール直後に彼は転倒。幸い重篤な故障ではなかったのだが、休養から復帰後は輝きを失ってしまい、惨敗が続いて復活できないまま現役を引退することになってしまった。
さあ先頭はスマイルトゥモローでまもなく最初の1000m、どうか!
56秒! これはあまりに速すぎる!
スマイルトゥモロー今日は柴田善臣に乗り替わっていますが、56秒で最初の1000mを通過しました!
4コーナーのカーブご覧のように、まだ後続は見えない! まだ後続は見えない!
2002年のオークスを後方からの追い込みで制したスマイルトゥモロー。彼女はデビュー当初から非常に行きたがる気性を抱えており、折り合いを欠く彼女を主戦の吉田豊騎手がなんとかなだめて制御してきていた。しかし古馬となって気性難はさらに悪化し、その果てに生まれたのがこの衝撃の大暴走である。
主戦の吉田豊ではなく初騎乗の柴田善臣騎手を迎えたスマイルトゥモローは、スタートから狂気のラップを刻んでいく。1000mの通過タイムは、現在も東京・芝1800mでの最速記録として残る56秒3。実況のフジテレビ伊藤利尋アナも「これはあまりに速すぎる!」と叫ぶほどだった。しかもその後、彼女は府中の長い直線を残り50mまで粘り、3着に残したのである。
どこまでが作戦で、どこからが制御不能による暴走だったのかは定かでないが、スマイルトゥモローといえばオークスでのGI勝利より、GⅢのこのレースが印象深いという競馬ファンも少なくない。なお、彼女はこの後もエリザベス女王杯や阪神牝馬Sで暴走気味に大逃げしているが撃沈している。
さあかなり縦長になりました、歓声を受けて逃げるのは、タップダンスシチーだ!
タップダンスシチーが逃げている!
3・4コーナー大欅の向こう、まだリードの方は5、6馬身といったところ、
そして単騎の2番手がザッツザプレンティ、そして、3番手アクティブバイオ、
4コーナーのカーブから直線へと向かって参りました、シンボリクリスエスは現在中団のところ、
赤い帽子は最後の直線でどう上がってくるか、
タップダンスシチーの思い切った逃げがここで叶うのか!
前述の1984年、カツラギエースが逃げ切ったジャパンカップ。それを見て騎手を志したのが佐藤哲三騎手である。そんな彼が、5歳から鞍上を任された遅咲きの6歳馬タップダンスシチーと演じた伝説の逃亡劇。
重馬場の中、苦手なスタートを珍しく決めてハナを切ったタップダンスシチーは、そのまま後続を大きく突き放してひとり旅。直線でも断然人気のシンボリクリスエスら後続は重馬場に脚をとられて伸びあぐね、フジテレビ塩原恒夫アナの「2400!逃げ切るとはこういうことだ!魅せてくれた仮柵沿い!」の名実況とともに、JRAのGI最長記録となる9馬身差で逃げ切った。
なおタップダンスシチーといえばこのレースの印象が強いが、彼はスタートが苦手だったので逃げ馬なのにハナを切れたレースが少なく、緩みのないペースを刻んで緩めた逃げ馬を途中でかわしてそのまま押し切るというレースの方が本領であった(例:2004年宝塚記念)。
第4コーナーを回りきった、しかし先頭はまだイングランディーレ!
この馬はスタミナがあるぞ!? イングランディーレ粘っている!
懸命に、ゼンノロブロイ! 外からネオユニヴァース!
ネオユニヴァース、ヴィータローザ! 懸命にリンカーン、リンカーン!
しかしイングランディーレの先頭だ、イングランディーレ! これは逃げ切る逃げ切る!
なんと4歳4強も、全て退けて、イングランディーレの一人旅!
なぜかニコニコにはこのレース単独の動画がないのでウマ娘風で失礼。この年の天皇賞(春)は、前走阪神大賞典を快勝したリンカーン、前年の二冠馬ネオユニヴァース、菊花賞馬ザッツザプレンティ、そしてダービー2着・有馬記念3着のゼンノロブロイが「4歳4強」と呼ばれていた。
しかし、10番人気の5歳馬イングランディーレが大逃げを仕掛け、人気どころが後ろで牽制し合っている間に悠々ひとり旅。馬場鉄志アナの「これは逃げ切る逃げ切る!」の絶叫とともに、そのまま7馬身差で逃げ切ってしまった。
横山典弘騎手がたまに仕掛ける思い切った逃げ、いわゆる「前ポツン」を代表するレースである。そしてこのレースは「長距離で人気薄の逃げ馬を放置すると危険」という戒めを残した……はずだったのだが。
エアメサイアはまだ後ろの方だ! エアメサイアはまだ後ろの方だぞ、これで届くのか武豊!
先頭は完全に、オースミハルカ、あと300m、今年はついに逃げ切るか!?
アドマイヤグルーヴ来た! アドマイヤグルーヴ来た!
上村の夢を乗せてアドマイヤ、しかし外からスイープトウショウ!
外からスイープトウショウ! オースミハルカスイープトウショウ!
若手の川島信二騎手がデビューから主戦を務めてきたオースミハルカ。エリザベス女王杯では前年もアドマイヤグルーヴの2着に敗れていた。亡き兄弟子の岡潤一郎騎手が勝った唯一のGIであるエリザベス女王杯で、師匠の安藤正敏調教師に初のGI勝利を届けるべく、若武者が仕掛けた乾坤一擲の大逃げ。
オースミハルカと川島騎手はスタートから押してどんどん後ろを突き放すと、京都競馬場のどよめきの中、1000m60秒フラットの楽逃げペースでの大逃げに持ち込む。直線に入ってもその脚は止まらず、残り200mでも後続を5馬身以上離した独走。これは逃げ切った、と誰もが思った瞬間、大外から魔法のような鬼脚でカッ飛んできたスイープトウショウに薙ぎ払われて、惜しくも2年連続の2着に敗れた。
「GI未勝利馬がGIで生涯最高のレースをしたのに勝てなかった」レースの代表格といえる。
さあ完全にアドマイヤメイン武豊、武豊が先行策をとりまして大逃げを打つような格好になりました、間もなくスタートして1000mの赤いポールを今通過!
59秒を切っている! 59秒を切っている!
武豊、速いペースに持ち込んでいます!
二冠馬メイショウサムソンの三冠がかかった菊花賞。このレースを引っぱったのは、ダービー2着の3番人気アドマイヤメインと武豊だった。
高速馬場を活かして1000mを58秒7という超ハイペースで入り、中盤の1000mで64秒台までペースを落として、4コーナーの下りで再度加速する、1998年のセイウンスカイのような逃げを仕掛けたアドマイヤメインと武豊。最後はさすがに最後方から捲ってきたソングオブウインドと中団から抜け出してきたドリームパスポートに捕まって3着に敗れたが、それでも自身もセイウンスカイのレコードを更新する3:03.0で駆け抜けてみせた。なおメイショウサムソンは早仕掛けが祟って直線で脚が止まり4着。
勝ったソングオブウインドの鞍上は弟の武幸四郎で、このアドマイヤメインの大逃げでソングオブウインドにとっては絶好の展開になったため「豊が幸四郎にプレゼントした菊花賞」と言われることも。ちなみにアドマイヤメインはこの年の有馬記念(ディープインパクトの引退レース)でも柴田善臣と大逃げしているが9着に沈んでいる。
またこのレースに関しては「武豊がレース前に『3分3秒で逃げる』と宣言してコンマ1秒の誤差もなくその通りのタイムで駆け抜けた」と武豊の体内時計の精密さを物語る伝説としてまことしやかに語られているが、このタイム宣言は確定ソースが見当たらない。情報求む。
直線を向いてまだクィーンスプマンテとテイエムプリキュア、
クィーンスプマンテと、テイエムプリキュアが粘っている!
あと300mは切っている、ブエナビスタは届くのかあー!?
これはとんでもない波乱になるのか! とんでもない波乱になるのか!
これが競馬だ! これが競馬の恐ろしさ!!!
二冠牝馬ブエナビスタが圧倒的な人気を集める中、人気薄の逃げ馬2頭、クィーンスプマンテとテイエムプリキュアが2頭で逃げる。そこまでは誰もが予想していた展開だったが、3番手につけたリトルアマポーラとクリストフ・スミヨンが抑えすぎたため、平均ペースなのに後続を20馬身以上離した大逃げになってしまう。
遅すぎるペースに気付いてブエナビスタらが上がって行ったときには時すでに遅し。直線で先頭に立ったと思ったらまだ前に2頭いることに気付いたブエナビスタが凄まじい鬼脚で追い込んだがもはや手遅れ、馬場鉄志アナの「これが競馬だ!これが競馬の恐ろしさ!」という実況とともに、そのまま2頭が逃げ切ってしまった。
波乱を呼ぶアナウンサーとして知られた馬場アナの、これが最後の京都競馬場GI実況であった(翌年の桜花賞で競馬実況を引退)。また勝った田中博康騎手はこれが唯一のGI勝利。後に調教師としてレモンポップでフェブラリーステークスを勝つことになる。
このレースに繋がる伏線として、クィーンスプマンテが同様の大逃げで逃げ切った2009年みなみ北海道ステークスと、これほどの大逃げではないが「しかしながらテイエムプリキュアだ! 3年間の苦労が報われるぞー!」の岡安譲アナの名実況でも知られる2009年日経新春杯も必見。ちなみにこの両方とも荻野琢真騎手が騎乗している。
まだネコパンチがリード! 残りは100! さあネコパンチリード!
2番手ルーラーシップ、その外からウインバリアシオン、
ネコパンチがまんまと逃げ切った1着ゴールイン!
ルーラーシップが圧倒的1番人気を集める中、単勝167.1倍の12番人気・ネコパンチがノーマークで大逃げを仕掛け、重馬場で後続が伸びあぐねる中、そのまままんまと逃げ切ってしまった。差し馬が伸びない道悪で人気薄のノーマーク逃げ、という競馬で大穴が開くときのある種典型的なレースである。
勝利騎手インタビューでの猫ひろしポーズ(上記動画のサムネ)も印象深い。
前は飛ばしてビートブラック先頭、ビートブラック、
直線コースに向きました、ビートブラック先頭だ!
そして2番手ゴールデンハインド、あとはまだ6馬身7馬身離れてユニバーサルバンク3番手、追ってくるのはギュスターヴクライ、
オルフェーヴルはまだ中団! オルフェーヴルはまだ中団!
残り200mこれは届かない! これは届かない!
ビートブラック先頭だ!
上記の日経賞から僅か1ヶ月後。8年経って「長距離で人気薄の逃げ馬を放置すると危険」というイングランディーレの戒めが忘れられた結果、春天で再び起きた単勝万馬券・14番人気の大逃亡劇。
この年の圧倒的1番人気は前走阪神大笑点でやらかしたばかりの前年の三冠馬オルフェーヴル。そのオルフェが後方に控えたため、他の馬が後方のオルフェを警戒しているうちに、10番人気ゴールデンハインドと14番人気ビートブラックが2頭で集団を20馬身以上離した大逃げになってしまう。
結局オルフェは走る気を見せずに撃沈し、3コーナー前でハナに立ったビートブラックがそのまま押し切って4馬身差の逃げ切り(一緒に逃げたゴールデンハインドは7着)。単勝159.6倍の大波乱となった。
そして、石橋騎手は、この11年後にも再び超長距離重賞で華麗な大逃げを見せることになる(後述)。
さあ、5馬身、6馬身リードを取って、前半の800m45秒台、例年よりも少し早いペースで、
飛ばしていく飛ばしていく、ミナレットが飛ばしていきます!
その後ろ単独の2番手ケイアイエレガント、芦毛のリトルゲルダ一発を狙う、
さあ伏兵3頭前を占める中で、現在1番人気ヌーヴォレコルトは前から6頭目、
まだリードがある! まだリードがあるぞ!
新馬戦を単勝万馬券の14番人気で勝利し、2着が同着になったにもかかわらず3連単2983万馬券を叩き出した穴馬ミナレットが、忘れた頃の穴男・江田照男と二度目の伝説を創ったレース。
単勝291.8倍の最低人気だったミナレットだったが、大外から好スタートを切ると江田照男に促されハイペースでガンガン飛ばしていき、マイル戦ではなかなか見られない後続を6馬身は離した大逃げに突入。直線に入っても後ろが伸びあぐね、2番手で追ってきていた12番人気ケイアイエレガントが粘るミナレットをかわして押し切りを図ったが、それを5番人気ストレイトガールが差し切って勝利。
ミナレットもそのまま3着に粘り込み、5番人気-12番人気-18番人気の決着で3連単は2070万5810円。2024年現在も重賞歴代1位の高額配当に君臨する超大荒れ決着となり、ミナレットは伝説の穴馬として名を残すこととなった。
さあ先頭アップトゥデイト、場内がどよめくほどの大逃げで、後続を離しています、
そしてオジュウチョウサンの後ろも次第に離れていきます!
(中略)
さあオジュウチョウサンがその差を徐々に詰めにかかる!
あとは離れた! 3番手以降は大きく後ろ!
4コーナーに向かいます、さあ先頭はアップトゥデイト、その後ろからオジュウチョウサン!
さあ! 前・王者か! 現・王者か! 青い帽子2頭の追い比べに変わる直線!
障害の現王者・オジュウチョウサンに何度となく苦杯をなめさせられてきた前王者・アップトゥデイト。オジュウを倒すためにあらゆる策を試し、それをことごとく打ち破られてきた林騎手が、「オジュウチョウサンに勝つにはこれしかない」と仕掛けた渾身の大逃げが、障害競走史のみならず競馬史に残る歴史的な名勝負を生んだ。
序盤から後ろを大きく突き放した大逃げを仕掛けるアップトゥデイトに対して、2番手で追いながら虎視眈々と機を伺うオジュウチョウサン。第4竹柵障害の前から一気にギアを上げたオジュウが猛然とアップに迫り、完全にこの2頭のマッチレースとなる。これが初GI実況となった山本直アナの「さあ、前・王者か!現・王者か!」の名実況とともに2頭で直線の叩き合いとなり、最後はオジュウチョウサンが差し切って勝利。J-GI4連覇を果たし、名実ともに障害の絶対王者の地位を確固たるものにした。
2022年にJRAが実施した投票企画「競馬名勝負列伝」でも、2008年天皇賞(秋)や1996年阪神大賞典など、平地の並み居る伝説級の名勝負を抑えて2位にランクインした。
最初の1000m、57秒4! 57秒4という超ハイペース! パンサラッサの大逃げだー!
さあパンサラッサもう既に欅の向こう側を通過して、これだけの逃げ! これだけの逃げ!
〝令和のツインターボ〟が逃げに逃げまくっている!
さあ! パンサラッサ、このまま逃げ切ることが出来るのか!?
これだけの差! これだけの差!
さあ、4コーナー回って直線コース! さあ、後ろは届くのか! 後ろは届くのか!?
このまま逃げ切るのか!? ロードカナロア産駒・パンサラッサ!
〝世界のパンサラッサ〟の逃げ!
前年の福島記念をツインターボのようなレースで逃げ切り、「令和のツインターボ」として一躍注目を集めたパンサラッサ。超ハイペース逃げというスタイルでこの年の中山記念とドバイターフを制して「世界のパンサラッサ」となり、宝塚記念でもタイトルホルダーのレコードを演出、札幌記念でジャックドールの2着に粘って、乗りこんできたのがこの天皇賞(秋)である。
宝塚記念と札幌記念がともに超のつく消耗戦になったことや、前走札幌記念でそれまでの逃げから控えるレースに変えて勝利したジャックドールが控えたこともあって、パンサラッサを無理に追う馬はなく、後続を大きく突き放した大逃げとなった。1000m通過は24年前のサイレンススズカと同じ57秒4。かつて伝説の大逃げ馬が天国へと駆けていったその先へ、後続を突き放したまま逃げるパンサラッサ。直線でも粘りに粘ったが、最後はイクイノックスの上がり3F32秒7の末脚に屈して惜しくも2着。
極限の大逃げvs極限の末脚。イクイノックスの世界最強街道の始まりとして、そして2022年の、20年代の、令和の競馬を代表する名勝負として、今後も長く語り継がれていくであろうレースである。
直線コースに向いてきた、先頭まだ逃げる逃げるアイアンバローズまたリードを広げた!
2番手には外から一気に5番の、マイネルウィルトス突っ込んできている!
内を突いて2番のワープスピード、外からは11番のテーオーロイヤル、あと1番のキングズレインです!
先頭は7番アイアンバローズ! まんまと逃げ切りました3600mゴールイン!
アイアンバローズです! マジックというような逃げでした! 石橋脩!
稀代の大逃げ馬パンサラッサがターフを去った翌週、国内最長距離重賞で中長距離重賞の常連6歳馬が見せた大胆不敵なスローペース幻惑逃げ。
8年ぶりのフルゲートとなったこのレース、まずハナを主張したのは大方の予想通り大外枠の逃げ馬アフリカンゴールド。アイアンバローズは2番手につけ、後ろを離してまずは2頭で逃げると、どんどん後ろを突き放し、1周目の3コーナーでアフリカンゴールドも突き放して単騎の大逃げに突入する。これは逃げ馬2頭が競り合ってのハイペース……かと思いきや、1000m通過は1:03.9、2000m通過は2:06.8というごく普通のペース。8番人気アイアンバローズと6番人気アフリカンゴールドの競り合いに、後ろが幻惑されて超スローになっただけであった。
2周目の向こう正面で2番手のアフゴとセファーラジエルが詰めてきて、アイアンバローズは3コーナーでもう捕まる。後ろの集団も差を詰めてきてそのまま沈む……かと思いきや、これは単なる死んだふり。4コーナーから再び加速したアイアンバローズは直線で悠々と後続を突き放し、2馬身半差で完勝。
鞍上的にはビートブラックの天皇賞(春)、内容的にはセイウンスカイの京都大賞典を思い出させる見事なスローペース幻惑逃げで重賞初制覇を飾ったのだった。
重賞以外で大逃げ馬がそのまま逃げ切り勝ちしたレースでは、エイシンヒカリの2014年アイルランドトロフィー(OP、鞍上:横山典弘)が特に有名。
その大逃げぶりもさることながら、直線でどんどん右にヨレていき、最後は外ラチ沿いまで行きながら3馬身半差で逃げ切るという破天荒な内容で、エイシンヒカリを語る上では外すことのできないレースとして語り草となっている。
大逃げ馬自身は撃沈したが、大逃げの話題で外すことのできないレースもいくつかある。概要にも挙げたツインターボの1994年有馬記念や、「ツインターボの逃げは、早くもゴール前500mで壊滅している!」(三宅正治アナ)の1993年天皇賞(秋)はネタとして有名。その一方、サイレンススズカの最後のレースとなった1998年天皇賞(秋)の「沈黙の日曜日」のような悲劇もある。
これまで記事内で取り上げていない馬では、2011年天皇賞(秋)で1000m通過56秒5という殺人的ペースで逃げてトーセンジョーダンのハイパーレコードを演出したシルポート(16着、鞍上:蛯名正義)、2020年ジャパンカップのアーモンドアイvsコントレイルvsデアリングタクトによる歴史的な三冠馬3頭対決を大逃げで盛り上げたキセキ(8着、鞍上:浜中俊)が近年でも特に印象的な大逃げだろう。
また大逃げが波乱を呼んだ例としては、青葉賞を逃げ切ったリオンリオン(15着、鞍上:横山武史)が大逃げを仕掛け、離れた2番手単騎でそれを追った単勝93.1倍の12番人気ロジャーバローズの粘り込みを生んだ2019年東京優駿などもある。
同馬主の馬であっても出走する全頭が勝利に向けて全力を尽くすことが大前提である日本競馬と違い、海外では同馬主かつ同厩舎の馬が複数頭で出走してきた際、実力的に劣る方の馬が、勝たせたい馬にとって有利な展開を作るためにペースメーカー(ラビット)として先頭を走ることがある。
これは同馬主の馬は馬券上では一緒の扱いになる「カップリング」という制度があったため。この制度により、万一ペースメーカーが逃げ切ってしまっても、同馬主の本命馬が勝ったのと同じことになるわけである。実際、2001年のクイーンエリザベス2世Sではペースメーカーのサモナーがそのまま逃げ切ったという例があった。
このカップリング制度は現在では廃れており、欧州で最後まで残していたフランスでも2019年に廃止されたようだが、ともあれこのため、特に欧州では「勝つための戦法としての逃げ」というのは日本のようには定着していない。なので、たとえば2002年のニエル賞のように、3頭立てで3頭とも前に行きたがらなかった結果、歩いているのも同然というレースになってしまうこともあった。
それでも短期免許で日本競馬を経験した騎手が向こうに持ち込むなどした結果、海外でも戦法としての逃げが取られることもある。そして大レースでの意表を突いた大逃げでの逃げ切りというケースもある。
「仏チャンピオンハードル」とも称される、フランスのオートゥイユ競馬場で開催されるG1、5100mの障害競走。この年の圧倒的な1番人気は当時のフランス障害王者Questarabad。一方、Mandaliに騎乗したのは平地の騎手であるクリストフ・スミヨン。Mandaliのオーナーと会食した際に「障害に乗ってみたい」と希望し、4日前のレースで障害競走初騎乗、これが障害2戦目だった。
レース前半、他の馬が牽制し合っている間にするするっと前へ抜け出したスミヨンとMandaliは、そのまま後続を20秒以上離す超・大逃げに突入。そのまま最終的に2着に15秒差をつけて逃げ切った。15馬身差ではなく15秒差である。1秒6馬身とすると約90馬身差。スミヨンは当然ながらこれが障害初勝利であった。スミヨンには観客から大喝采、2着Questarabadをはじめ2着以下の馬たちと騎手には当然ながら大ブーイングが浴びせられた。
日本のファンの間では「(上述の2009年)エリザベス女王杯で学んだ成果」とか言われている。
新型コロナウイルスの影響で無観客で開催されたイギリスのダービー。1番人気は2000ギニー勝ち馬カメコ。前週に未勝利戦を勝って連闘で出走してきたサーペンタインは、鞍上E.マクナマラもダービー初騎乗で8番人気タイという伏兵だったが、大逃げを打ってそのまま5馬身半差で逃げ切り圧勝した。
なお、彼はその後は勝ち星から遠ざかり、ついにはダービー馬でありながら去勢されてしまい(20世紀以降で初だとか)オーストラリアに移籍している。
ツール・ド・フランスなどの自転車ロードレースでも「大逃げ」は見られることがある。
自転車ロードレースは個人競技であると同時にチーム競技であり、チームのエースを勝たせるために他の選手はアシストに回ってエースの走りやすいレースを作り、もしアシストがそのまま勝ちに行った方が有利な状況であればアシストが勝ちに行くのも構わない、というのが基本戦術になっている。
また自転車は空気抵抗で受ける負担が非常に大きいため、チームで集団を組み、定期的に先頭を交代して負担を分散するのも基本戦術である。というわけで、そうしたチームの集団が集まったメイン集団(プロトン)が形成される。
しかしそのメイン集団だけでレースを進めると集団の中で先頭争いが生じてペースが乱れてしまう。そのため、集団から離れて逃げることで集団のペースを落ち着かせることを目的とした少人数の逃げ集団もよく形成される。
というわけでロードレースで逃げを担当するのはアシストの役割であり、エースのいる集団のペースを落ち着かせるための先導を務め、ほとんどの場合は終盤でメイン集団に吸収されることになる。
前述の欧州競馬におけるペースメーカーやカップリング馬券の存在も、この自転車ロードレースにおけるエースとアシストの関係を前提に見ると理解しやすい(欧州は自転車ロードレースがサッカーに次ぐ超人気スポーツである)。
そして欧州競馬でペースメーカーが逃げ切ってしまうことが稀にあるように、自転車ロードレースでも逃げた選手がそのまま逃げ切ってしまうことも稀にだがある。
日本で最も有名な例は、2021年の東京オリンピック2020・自転車女子個人ロードレースで完全なノーマークの存在だったオーストリアのアナ・キーゼンホファーが独走で逃げ切って金メダルを獲得した一件だろう。
このときは国ごとに参加人数が割り当てられており、絶対的な優勝候補のオランダは4人が参加してチームを組んでいた一方、オーストリアはキーゼンホファーの単独参加だった。通常のロードレースでは無線を利用してチーム内での情報共有を行うのだが、この人数格差の有利不利をなくすため、東京五輪では選手の無線の使用が禁止されていた。
そのせいかオランダチームは、2位のイスラエルの選手を捕まえた時点でトップに立ったと思い込み、まだ前で無名のキーゼンホファーが逃げていることを見落としてしまった。そしてキーゼンホファーがゴールした1分以上あとに1位だと思ってバンザイしながらゴールし、次の瞬間に絶望に叩き落とされるというコントじみた展開になったのであった。
掲示板
38 ななしのよっしん
2024/05/11(土) 23:23:24 ID: gK3hnufGYC
カネツフルーヴのオグリキャップ記念の実況をしていたのは弘報館の畑野謙二アナウンサーです。
今も名古屋競馬場のスタッフとして実況を担当しています。
39 ななしのよっしん
2024/05/27(月) 10:37:39 ID: oqCTl3WVAh
セクレタリアトのベルモントステークスも入れていいんじゃない?単純なスピード能力で大逃げして直線で二の足使うのはサイレンススズカと同じだし
40 ななしのよっしん
2024/05/27(月) 17:54:26 ID: IHo8o2ZiHY
>>34に匹敵するタイムで削りあってたオークス
3歳春の牝馬にやらせるには酷だよなあ
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/25(土) 15:00
最終更新:2025/01/25(土) 15:00
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