映画

インサイド・ヘッド(ピート・ドクター)

公開時には興味が持てなくて見ていなかったのだけど、先日2が公開されたので見てみました。抽象的な世界をよくエンターテインメントとして成立させたな、と感心しました。 よくできた映画ほど何を書いても言わずもがなの蛇足になってしまいますが、巧みだな…

シークレット・レベル(ティム・ミラー)

こうなりたかったファイナル・ファンタジー映画版、ということなんでしょうか。しかしながら、映像、音楽ともクオリティが高く、短編で走り切るゆえに「持つ」けど、長編で観たいかどうかでいうと微妙、という気分になったのも確か。 単純に面白かったタイト…

エルヴィス(バズ・ラーマン)

オースティン・バトラーはフェイド・ラウサが最高だったけど、今作のエルヴィスは本当にすごかったですね。なんか「引き受けてるな」という印象を受けました。しかもがっしり受け止めていたのが素晴らしかった。観た方が絶賛していたのもなるほど納得でした。…

グラディエーター(リドリー・スコット)

(1と2両方ネタバレです。)先日2作目を観た時に、「あれ?マキシマスは復讐を遂げて妻と子の待つ故郷(安息の地)に還ったのではなかったかな、それからすると1作目の感動を棄損するような話だよな…」と思ったのですが、今回見返してみると、ギリギリそ…

L.A.コンフィデンシャル(カーティス・ハンソン)

久しぶりに見ましたが、全編にわたってスムーズな語りで、撮影、音楽も的確としか言いようがない。当時から言われていたけど、アカデミー作品賞は『タイタニック』よりこっちだろうと思いますね。 ところで『ザ・バットマン』を見たときは、バットマンの世界…

レイジング・ファイア(ベニー・チャン)

いつものドニーさん映画でありながら、しっかりベニー・チャン監督らしさもある作品でしたね。ただンゴウの暴走が警察以外の一般市民も巻き込んだものになっていくから、敵役としてあまり共感できない感じだったかな。(本当はそれなりに共感してほしい造形…

パリ、テキサス(ヴィム・ヴェンダース)

タイトルの勝利なのかな…、ハッとするような画作りがあったり、長回しに堪える演技といった見どころはあるのだけど、物語に対してやっぱり長すぎるという印象でした。 作品としては、登場人物に共感できるかどうかが映画の評価とイコールとはならない、そう…

ドミノ 復讐の咆哮(ブライアン・デ・パルマ)

監督のヒッチコック好きはよく知られたところですが、エッセンスとして参照するにとどまらず完全にヒッチコック的枠組みで通した作品という印象でした。端的に言えば、ふとしたことから大きな陰謀に巻き込まれて、最後は映画映えする舞台でクライマックスを…

グラディエーターⅡ(リドリー・スコット)

びっくりするくらいストレートな貴種流離譚になっていて、エンターテインメントに全部振り切っていた感じ。陰鬱な話が続いていた最近のリドリー・スコットにしては珍しいのではないかと思いました。前作と直結していたというのも意外だったけれど、面白かっ…

スプートニク(エゴール・アブラメンコ)

ロシア映画か…とは思ったものの、『ボーン・スプレマシー』で可憐だったオクサナ・アキンシナちゃんが出ているということで見てみました。いまこんな感じなんですね。(生活に倦み疲れた医師。もう「ちゃん」では全然ない。)作品の出来は悪くなかったです。…

ルックバック(押山清高)

評判のマンガとその映画化ですが(原作既読)、正直僕自身に響くところはあまりなかったです。アニメとして見たときは動きの素晴らしさなどはあったし、『銀河鉄道の夜』的に「別れが定められた友情もの」として涙するところはあったのですが。 ☆☆☆1/2

キング・オブ・エジプト(アレックス・プロヤス)

『アイ,ロボット』の時もそんなに面白くはないんだろうな、としばらく経ってから見て全然面白いじゃないか!となったんだけど、この作品も同様で、いかにもCG紙芝居だなと思っていたら、手堅いバディものかつロードムービーで面白かったです。物語の最初と…

スペースボール(メル・ブルックス)

公開当時は気の抜けたスター・ウォーズのパロディとして紹介されることが多かったと記憶しているのだけど、初めてちゃんと見ました。視覚効果にILMが参加していたりと存外見た目はちゃんとしていたんですね。 しかしながら、作品自体は安定のメル・ブルッ…

ドッグマン(リュック・ベッソン)

久しぶりに監督作品を見たけど、これくらいの規模の映画がちょうどいいのだと思う。枠物語がシェラザードものなのも興味を持続させて上手い。 よく考えると穴だらけの脚本だし、使われている歌や曲がベタすぎてどうなのかとも思うのだけど、ケイレブ・ランド…

マッシブ・タレント(トム・ゴーミカン)

独特のキャリアを築くニコラス・ケイジの実像を二重写しにしたコメディ、ということになるのでしょうか。 所謂映画ファンならキャリア初期からそれなりに彼の映画を観てきていると思うのですが(役作りが度外れているマニアックな俳優という認識から一般の観…

白鍵と黒鍵の間に(冨永昌敬)

60年代の邦画娯楽作のようなサラッと撮った感触がありました。それでいて最後には大きな跳躍があって、その辺りはちょっと鈴木清順っぽいかな。もともとアヴァンギャルドな要素もある監督だけど。 役者陣がよかった。池松壮亮はどの映画でもいつも池松壮亮な…

リバー、流れないでよ(山口淳太)

ヨーロッパ企画らしい構造に仕掛けのある物語なのですが、『サマータイムマシン・ブルース』的な映画といえばとおりがいいのかな。実際、『サマー~』の役者陣リユニオンという趣もあって、あの時若者だった人たちが年を取られましたなあ…という感慨も。 さ…

碁盤斬り(白石和彌)

監督作品に散見される「サービス精神の空回り」要素は若干感じたものの、ちゃんと時代劇を作りたいという真摯さも感じられたので悪くなかったと思います。(時々わざとカキワリ的バックにしているのは清順オマージュでしょうか?) 原作となる古典落語は知ら…

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(エマ・タミー)

そもそもセサミストリートにしてからがそうだけど、ジム・ヘンソンのクリーチャーってどこか不気味だよね…という発想の一点突破ホラーなんだろうなとは思っていたのですが、あまりにも本筋が空疎だな。と思ったらゲームが原作だったんですね。なるほど納得。…

パリタクシー(クリスチャン・カリオン)

筋はふた昔前の浪花節であり、これっていい話なのかな?と思いました。「主人公たちにとって大事なこと」の前には市井の人々の日常生活に支障があっても免罪されるという傲慢さが見逃せなかった。あと根本的には、よく素性の分からないアメリカの兵隊に身を…

時の支配者(ルネ・ラルー)

82年のアニメーションなので、今の目で見ると物足りない部分はあるのですが(いや、しかし84年にナウシカがあり、そもそもカリオストロが79年ということを考えれば、作品としてそもそも動かすことには重きがないのかな)、妙な味わいはあると思います。やは…

ダークグラス(ダリオ・アルジェント)

こんなに丁寧に人物造形や交流を描写していたのは監督初めてでは?と思いました。理屈を超えた素っ頓狂な展開がないのは寂しいといえば寂しいけれど、悪くなかったですよ。 ☆☆☆

奈落のマイホーム(キム・ジフン)

いざ事故が発生する、という場面に到るまでの描写がやや長く感じましたが、結末で本当によかったね…(もしくは本当に悲しい)という気分にさせるための必要な段取りだったかな、と見終わった後では思いました。 途中で「ああ、これはポセイドン・アドベンチ…

ブラックアダム(ジャウム・コレット=セラ)

危機を救いに来ました面で現れたヒーローチームに対して、ヒロインが(圧制を敷かれている国民の声を代弁して)「本当に助けてほしい時になぜ手を差し伸べてくれなかったのか?あなたたちがいう破壊神(=主人公)が初めてそれを打破してくれたのだ」という…

鬼手(リ・ゴン)

エクストリーム囲碁アクション映画『神の一手』は、なるほど現在の韓国映画の勢いをもってして初めて成立するような絶妙なバランスの作品だなと感心しながら見たのですが(ばかばかしいほど漫画的だけど理屈を超えて確かに面白い、という案配)、そのスピン…

許されざる者(李相日)

面白かったし、安っぽいところもなかったのだけど、見れば見るほど、オリジナルの物語の結構の素晴らしさが際立つというか、あの映画はやっぱりよくできていたのだなと思いました。 今作の良かったところとしては、オリジナルはタイトルに反してマニーが許さ…

イントゥ・ザ・ストーム(スティーブン・クォーレ)

地味な役者陣を見て、ああ特撮にお金をかけたかったんだなと最初は思いました。正直、登場人物たちの造形はステレオタイプで、典型を一歩も踏み出ることはないのだけど、異なる立場の人々が竜巻をきっかけに合流していく出し入れの手さばきが上手だから、パ…

メモリー(マーティン・キャンベル)

主人公の老年の殺し屋がアルツハイマーを患っている、という設定がほぼ全然活かされていない。役者陣は手堅いところを連れてきたからがなんとかしてくれるだろう…と製作陣が思ったのかどうかは知りませんが、話がしっかりしてないとそれは無理だよなあと思い…

ツイスターズ(リー・アイザック・チョン)

僕の世代だと、『ツイスター』はあまりにも大規模化した映画製作費の捻出のために、まさかのワーナー、ユニバーサルの相乗り製作ということが話題になったのを覚えていると思います。なんでまたこれだけ間が空いての復活企画が?とも思うけれど、直球で作る…

THE FIRST SLAM DUNK(井上雄彦)

2回目だったのですが、なぜか今回の方がグッときました。最後の20分くらいはずっと涙していた気がします。 弱点は、前回観た時と同様、やはり登場人物(特に主人公宮城とその母)の葛藤に映画を支えるほどの厚みがないと感じられること。直接の描写は点描と…