銀の森へ(沢木耕太郎)

 先日読んだ作者の『シネマと書店とスタジアム』は、映画と本とスポーツにまつわるコラムということで、複数のジャンルを対象としたせいか些か中途半端の感がなきにしもあらずでした。

 捲土重来、だったのかは分からないけれど、今回は重複を恐れずに全部映画でまとめました!しかも2分冊!ということでその前半にあたる巻です。

 結論をいうと、やはりこちらが正解。映画という同じ評論対象を突き詰めていく感じがグルーヴを生じさせていて、それは(この本と1/3を共有する)『シネマと~』には感じられなかったものだから、もっぱら読者側に起因することなのだと思います。ひとまとまりにする意義というものはあるものだなと思いました。

 肝心の内容はもちろん沢木節で上手い。一方で、この2000年代前半というのは、ミニシアターが勢いをいつしか失っていく過程でもあったのだな、と思いました。

☆☆☆1/2