碁盤斬り(白石和彌)

 監督作品に散見される「サービス精神の空回り」要素は若干感じたものの、ちゃんと時代劇を作りたいという真摯さも感じられたので悪くなかったと思います。(時々わざとカキワリ的バックにしているのは清順オマージュでしょうか?)

 原作となる古典落語は知らなかったのだけど、「む?これって番頭が一番悪いんじゃないかな?」と思われた部分は原作に由来するところだったので仕方なかったのかな…それでいて最後に自らけじめをつけないといけない場面ではスルーかつ最後まで不問だったのは脚本の瑕疵ではなかろうか。(原作では、本当は番頭が主人に代わって、となる場面で、映画オリジナルで弥吉というキャラクターを登場させたせいで辻褄が合わなくなっている。)

 とはいえ、こちらも映画オリジナルの要素である仇討ちにまつわる件は、この部分があったからこそ映画として成立している内容であって、碁打ちの姿勢と重なる武士としての「清廉潔白な」生き様がなんの留保もなく称揚されるような従来の作劇から一歩踏み出して、自らの来し方を省みるような結末を付けていたのも、「今作られるべき時代劇とは?」ということをきちんと考えて作っている印象があってよかったです。草彅くんは上手なタイプではないけれど瞬発力がありますね。

☆☆☆1/2