2025-03-18

この町では精子でモノを買う

国道沿いを真っ直ぐ行ったところに、そのスーパーはあった。

並木はなく、竜巻を飢えさせるといった寸法だった。

空はペイントの灰色ペンキで塗り潰したような色をしていて、迷うべき道もなく歩みを進め、スーパーに入ることにした。

スーパーの名はニルヴァーナだった。

自動ドアの先、真左側にレジが一列に連なって並び、コマ送りフィルムのような店員の動きが目に入る。

俺は前を向いて真っ直ぐ進んだ。店内にはウェルカムトゥザジャングル1992年ライブアレンジ版が流れている。

商品棚には所狭しと商品が並べなら、アマゾン倉庫のような広さを誇るこのスーパーでは何でも売っている。

例えば、オーラツーミーアロマフレーバーコレクションアクティブベリーミントからモーゼルC96まで。

俺は野菜売り場、青果売り場と順調に通り過ぎ、生鮮食品までの途中には支柱があって、そこにはこの町における今月の目標警句?)が書いてあった。

火が水の中で消えないのであれば、

家庭内での暴力はどうやったら消える?

俺は調味料コーナーに足を向けた。

各種様々な調味料が均一な等間隔に並べられ、距離を離して眺めるとアンディー・ウォーホル自画像に見えるよう並べられていた。

俺はマヨネーズケチャップを籠に入れると、その場を後にした。

必要ものを他にもどんどんとカゴに入れるとレジの方へと向かう。

途中、すれ違う客は俺のような独り者もいればカップル家族連れも多い。

大抵の男は籠を手に持ち、同行者がにこやかにしかけてくるときでもちんぽを立てていた。

既に支払いの準備を済ませているのだろう。

俺はレジへの列へと並ぶことにした。

混んでいる。少なくとも俺の前には七人ほどは居た。

彼らは皆、待っている間にちんぽを立てていた。

俺も彼らに習ってちんぽを立てようとする。

たくましい想像力を駆使して若い女の裸体を想像する。

俺の股間は緩やかな丘陵を見せ、小人の力こぶのような盛り上がりを見せた。

だが、万全じゃない。

実際、俺がこの町に来たのは一昨日で、俺は疲れていたのだ。

昨晩ホテルの眠り心地の悪いベッドのせいでもあるかもしれない。

レジは進み、だんだんと順番が迫ってくる。

焦りは、何よりも厄介だ。そのことを俺は経験上、熟知していた。

いよいよ俺の前に居るのは二組の客のみになった。

会計を済ませている男は中年ヤンキース帽子かぶり店員から2862円になりますと言われ、屹立させたちんぽから精子をだらりと滑らすようにカルトンへ放った。

次に会計を済ませたのは若いカップルで、支払額を告げられると筋肉質の男はスペースシャトルみたいな角度をしたちんぽをファスナーから覗かせ、勢いよく精子を支払った。

いくらかは勢いが良すぎてカルトンを飛び出し、店員の服へとべっとりついた。彼女は顔色一つ変えずレジスターの下に手を入れ、過払い分ですといって割引券を女の方に渡した。

そして俺の番となったのだが、正直いって焦っていた。

俺のちんぽは起ち切らずにいた。

苛々し、貧乏揺すりのように膝を揺すりながら激しく女の裸体を想像したが駄目だった。逆効果ですらあった。

会計は6210円になります、と言われたときにも俺のちんぽは駄目だった。

店員は俺を見た。俺も店員を見た。店員広瀬すずに似ていた。

彼女は白いポロシャツを着ており、ピンク色の下着が薄っすら見えた。

俺は彼女を見続けた。店員ポロシャツボタンをはずし始め、そのときになってようやくボタンが深く胸元まであることに気が付いた。

彼女ボタンをすべて外した。胸元が露になると乳房が顔を見せ、ピンク色の下着は前から外せるようになっていた。

店員はブラを外した。乳首下着と同じような色をしていた。

俺は射精した。

支払を終え、購入したものをカゴからエコバックへと移し替えていく。

全てを入れ終え担ぐとずっしりとした重さを右肩に感じながら、一度だけ振り返る。

広瀬すずは着衣を直し、冷淡な顔立ちのまま客から精子を受け取り続けていた。

不意に彼女こちらを向いた。

目が合う。彼女の唇は閉じたままだった。そしてすぐに目を逸らした。

俺も彼女から目を逸らすと、それからスーパーを出た。

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