研究開発
【英】:research and development (R&D
概要
研究開発には基礎研究と製品開発がある. 近年, 研究開発のスピードが競争に勝つための決め手になってきた. また, 企業収益に直結しない地球環境問題や安全・PL問題などの企業の社会的責任を果たすための技術開発も求められている. 研究開発のステージは以下の5つに分けられる. 研究開発テーマの選択, 各テーマへの経営資源の配分の決定, 研究開発の実行と進捗管理,研究開発成果の評価, 開発成果の事業化.
詳説
科学技術の革新が加速度的に進行し, グローバルに企業が競争する今日ほど, 研究開発 (R&D) が企業の至上命令になっている時代はない. 研究開発は大きく基礎研究と製品開発の2つに分けることが出来る. この内, 基礎研究は基礎技術についての科学的研究であり, 一方製品開発は新製品, 新生産方式や新サービスなどについての応用研究である. 競争のきびしさの増大と同時に, 産業技術の先端分野がシフトしてきた. 今日の最先端分野はバイオテクノロジーであり, 新素材であり, 情報科学の分野である. この様な分野では新しい知識を自社で独占することが難しい. 1990年代になると, 市場のグローバル化, 規制緩和政策などの結果, 巨大企業といえども多くの強力なライバル企業との競争を強いられ事業の利益率を下げてきた. そこで産業界は, 研究開発資金を長期的な基礎研究から応用研究に振り替え始めた. いかなる経営でも2つの目的がある. 1つは顧客満足であり, もう1つはROI(Return on Investment)である. 両目的に最も影響を持つ1つの要因が, 研究開発にかかわる時間である. 情報技術の発達がその傾向を加速している. 研究開発のスピードが競争に勝つための決め手になってきた. また, 時間以外の限られた資源をいかに有効に研究開発に配分するかも問題である. 近年は企業収益に直結しない地球環境問題や安全・PL問題などの企業の社会的責任を果たすための技術開発も求められている.
研究開発のステージは以下の5つに分けられる. 研究開発テーマの選択, 各テーマへの経営資源の配分の決定, 研究開発の実行と進捗管理, 研究開発成果の評価, 開発成果の事業化. 研究開発テーマの選択は, 研究開発テーマにどの様に優先順位を付けるかという研究開発課題選択問題である. 各テーマへの経営資源の配分の決定は, ヒト・モノ・カネなどの経営資源をどの様に各テーマに配分するかである. 研究開発の実行と進捗管理は, 研究開発の途中で, その進み具合や問題点などをチェックして, 計画通り継続するか, 規模拡大や縮小あるいは中止などの研究の方針変更を行うかどうかを決めることである. このステージでの研究開発での不確実性, 流動性を考慮した軌道修正の手法としてPDPC(Process Decision Program Chart)法が提案されている. これは, 出発点(目標, テーマ)とゴール(到達目標)を決め, ゴールに至るための楽観的方策と予測結果をあらかじめ設定する. 一方, 悲観的結果を予測しそれへの対策を盛り込むことで, 変化への柔軟な対応を可能にする手法である. 研究開発成果の評価は, 研究開発が完了した段階で, その研究開発の成果を定量的, 定性的に評価することである. 具体的には, 次の様な指標が考えられる.
ここで, 研究開発費は, 研究開発コストの総額である. また事業収益は, 売上高, 付加価値額, 利益額, ロイヤリティ収入などである. 開発成果の事業化の決定は, 経営幹部に委ねられる. その際の評価項目としては, 次の6つが考えられる:販売対象, 価格, 販売経路, 販売予測額, 所要設備投資額, 人的資源の確保. それらの評価を助けるものとしてフィールド・テストが行われることが多い. そこでは, 次の5つの特性が調査される:経営資源, 基礎技術, 製品用途, 製品特性, 他社との競争状況. 研究開発費を効果的に使っていくためには, 研究開発費管理が重要である. 研究開発費は研究員などの人件費と研究所や設備などの減価償却費, また研究材料費から構成されている. 研究開発費管理においては, 財務会計からは, 支出したときに一括して費用にする方法と, いったん繰延資産に計上して徐々に費用にしていく方法の選択がある. 一方管理会計からは, 費用を製品原価を含めて各製品のコストとして集計する方法がある. また研究開発を先行投資として, プロジェクト別の採算管理も重要である. 次に, 研究開発との関連で企業における特許戦略が重要になってきた. 特許の取得は, 自社の技術や製品の防衛といった面だけでなく, ディファクト・スタンダード作りや特許使用料収入などの面が重要である.
[1] 浦川卓也, 『市場創造の研究開発マネジメント』, ダイヤモンド社, 1996.
[2] 城川俊一, 「研究開発過程のモデル化について」, 『経営行動』, 9 (1994), 9-20.
[3] D. F. Kocaoglu (ed.), Management of R&D and Engineering, North-Holland, 1992.
[4] 西山茂, 『戦略管理会計』, ダイヤモンド社, 1999.
[5] M. L. Patterson, Accelerating Innovation-Improving the Process of Product Development, Van Nostrand Reinhold, 1993.
[6] リチャード・S・ローゼンブルーム, ウィリアム・J・スペンサー, 『中央研究所の時代の終焉』, 日経BP社, 1998.
研究開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 09:17 UTC 版)
研究開発(けんきゅうかいはつ、英語: Research and development、R&D)とは、特定の対象を調査して、基礎学問の研究や、目的に応じた応用研究の模索、将来的に発展する技術等の試験を行い、技術的な優位を得るための活動である。
- ^ a b c d 土方千代子、椎野裕美子『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』秀和システム、2006年7月。ISBN 978-4798013978。 p.202
- ^ 榊原清則・辻本将晴、2003年6月「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」(内閣府経済社会総合研究所 ディスカッション・ペーパー・シリーズ)p.13
- ^ 児玉文雄『ハイテク技術のパラダイム:マクロ技術学の体系』中央公論社、1991年、p.43
- ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.2。
- ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.4
- ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.13
- ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.16
- ^ Morbey、Reithner 1990など
- ^ 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」p.6
- ^ https://japan.cnet.com/article/20345869/2/
- ^ https://japan.cnet.com/article/20345950/
- ^ a b 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.204
- ^ a b c d 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.207
- ^ 「経済成長を加速させる米日、鈍化させる韓国」『』。2018年8月1日閲覧。
- ^ 『ポケット図解 最新経営学がよーくわかる本』p.208
- ^ 経済産業省「大学発ベンチャーの成長支援に関する調査報告書」
- ^ "一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は、財務諸表に注記しなければならない。" 研究開発費等に係る会計基準.
- ^ "1990年代まで、企業の試験研究や開発のための支出 ... 繰り延べ資産としてバランスシートに計上し ... 研究開発は将来の利益のために支出する投資という性質があり、単年度の費用とするよりも、複数年にわたって費用負担させる考え方には、合理性があるように思える。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
- ^ "収益費用アプローチからみれば,将来の経済的便益をもたらすと予測される特定の支出である試験研究費と開発費を支出した会計年度だけに負担させるいわゆる発生時費用処理よりも,この支出が影響する将来の一定年度にわたって負担させるべきという繰延処理の方が理論上は妥当である。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
- ^ "いくらお金をかけて研究開発を行ったとしても、それがすべて利益を生み出すわけでもないし、途中で断念するケースもある。結局のところ研究開発の成否はまちまちで、お金をかけた研究開発が資産と呼べるものかどうかは、時間が経たないとわからない。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
- ^ "研究費は,発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり,また,研究開発計画が進行し,将来の収益の獲得期待が高まったとしても,依然としてその獲得が確実であるとはいえない。そのため,研究開発費を資産として貸借対照表に計上することは適当でない。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
- ^ "どちらかを選択できるとなると、企業によって処理がまちまちになり、企業間の財務体質の比較がしにくくなるという問題が生じる。" 柴山 公認会計士. (2013). 研究開発費 -繰り延べ資産から費用の一括計上へ統一されたわけ.
- ^ "資産への計上が任意となることから,内外企業間の比較可能性が阻害されていた(「研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書」2)。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
- ^ "仮に,一定の要件を満たすものについて資産計上を強制する処理を採用する場合には,資産計上の要件を定める必要がある。しかし,実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり,抽象的な要件のもとで資産計上を求めることとした場合,企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあると考えられる。" 譚. (2017). 日本における研究開発費会計の変遷. 産業経済研究所紀要.
- ^ "研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない" 研究開発費等に係る会計基準.
・研究開発(R&D、Research & Development)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 05:27 UTC 版)
「アスファルト8:Airborne」の記事における「・研究開発(R&D、Research & Development)」の解説
報酬となるマシンを研究開発していくモード。各テストで「クオリティチェック」を集めていき、最後のアルティメットAIに勝利することでラボをクリアしていく。最終ラボクリアでマシン入手もしくはそれに必要な数の設計図獲得となる。プレイするにはプロトキー(一定の時間経過で3本補充、充填時間はイベントごとで異なる)が必要で、また各ラボアンロックは一定時間で開放される。
※この「・研究開発(R&D、Research & Development)」の解説は、「アスファルト8:Airborne」の解説の一部です。
「・研究開発(R&D、Research & Development)」を含む「アスファルト8:Airborne」の記事については、「アスファルト8:Airborne」の概要を参照ください。
「研究開発」の例文・使い方・用例・文例
- 彼の会社は研究開発において他社よりもたえず一歩先を行っていた
- チューリッヒの年次総会の様子を詳しく説明する前に、研究開発部がようやくHyper Z microphoneの試作品を提出したことを報告したいと思います。
- もちろん、予算の制限があるのであまり凝ったものにはできませんが、研究開発部にデザインを再検討してもらい、Hyper X100のコンセプトにより近いものにしてもらうつもりです。
- この会社のサービスは、研究開発の技術サービスをプロに提供することだ。
- それは研究開発に割り当てられる。
- 私はそれからずっと研究開発部門で働いてきました。
- 私の仕事は医薬品の研究開発です。
- 新しいことに挑戦し続けるために、新しいニーズに応えるために、日々研究開発に努めています。
- 研究開発にお金を割り当てる。
- 企業は規模を縮小し、研究開発にふりむける利益分も減らしています。
- 現在の研究開発への投資が将来の会社発展の基礎となる.
- ソーラーカーは研究開発の途上にある.
- 彼らは研究開発に資金を提供した
- 国防のための研究開発を専門とする研究所
- 米国国防省のための中央研究開発組織
- 司法省の研究開発部門である司法当局
- 空中戦とミサイル兵器システムのための研究開発のための米国海軍の主要な政府機関
- 研究開発のための費用
- 国が目標を設定し,推進する大型研究開発計画
- 大規模な研究開発
研究開発と同じ種類の言葉
「研究開発」に関係したコラム
-
株式の投資判断とされるR&D比率とは、売上高のR&Dの割合をパーセンテージで表したものです。R&D比率は、売上高研究開発費比率ともいいます。R&D比率のR&Dとは研究開発費のことです。一般的にR&D比...
-
東京証券取引所(東証)では、規模別株価指数の算出のために一部上場銘柄を大型株、中型株、小型株の3つに分類しています。その基準は、時価総額や株式の流動性などによって順位づけしたものになっています。大型株...
- 研究開発のページへのリンク