建造方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 05:17 UTC 版)
代表的な建造方法として、長大な吊り橋を建設する場合と同じ方法を採ることが提唱されている。まず静止軌道上に人工衛星を設置し、地球側にケーブルを少しずつ下ろしていく。その際、ケーブル自体の重さによって重心が静止軌道から外れないように、反対側にもケーブルを伸ばす。地球側に伸ばしたケーブルが地上に達すると、それをガイドにしてケーブルをさらに何本も張って太くし、構造物を構築する。 この手法を小説『楽園の泉』(1979年)で提唱したアーサー・C・クラークは、ケーブルの素材として無重力環境でしか作れない物質を設定したため、小惑星帯から適切な鉱物を含む小惑星を運搬してきて静止軌道に設置し、工場を建設して静止軌道上で製造する工法を取った。この場合はまず小惑星を動かす段階で大量の資材を地球から持ち出さなければならず、「軌道エレベータを建造するために多数のロケットを打ち上げる」という本末転倒な事態になってしまう。 しかしカーボンナノチューブは地上でも製造可能である。ガイド用の細いケーブルと必要最小限の付帯設備だけはロケットで静止軌道まで運ばなければならないが、あとはケーブルを伝って地上側から敷設していくことができると考えられている。上端に達した敷設装置は、そのままアンカーの一部になる。なお、アース・ポートを赤道以外の場所に建設する場合でも、最初のケーブルの下端が赤道に向かって降りてくるのを捕まえ、建設予定地まで移動させなければならない。 現在の構想では、最終的にはケーブルの長さ1kmあたり7kg、アンカーまで含めた全体の質量は約1,400tとなる。建設費は100億ドルから200億ドル(1兆円から2兆円)とされている。ただし、実際に十人単位の人を運べるものを建設する場合、値段はより高額となると考える研究者もいる。なお、国際宇宙ステーションの建設・運用には1,000億USドル以上の費用が掛かっているが、こちらはすべてをロケットで打ち上げているため単純比較はできない。 SF作家のチャールズ・シェフィールドは、小説『星ぼしに架ける橋』(1979年)の中で、宇宙空間で建造した全長数万kmの軌道エレベータを、回転させながら一端を大気圏に突入させ、巨大な縦穴の底に接地したところで穴の壁を丸ごと爆破した岩雪崩で強引に押さえつけて固定するという、小説ならではのスリルある豪快なアイデアを示している。アーサー・C・クラークはこれを「髪の毛が逆立つような方法。この部分だけは信じられない。許可が下りないのは確かである」と評した。 なお、クラーク/シェフィールドの両作品とも現実の21世紀初頭より宇宙開発が進み、既に多数のロケットが地球と宇宙を行き来している世界の物語である。
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