反クォークとは? わかりやすく解説

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はん‐クオーク【反クオーク】

読み方:はんくおーく

クオーク反粒子クオーク質量スピンは同じで、電荷は−1/3eまたは+2/3e。色荷カラー)とよばれる三つ自由度については、対となるクオークがもつ赤・青・緑の色に対しそれぞれの余色をもつ。


クォーク

(反クォーク から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/05 06:56 UTC 版)

クォーク
ハドロンである陽子は、2つのアップ (u) と1つのダウン (d) による3つのクォークからなる。
型数 6 (アップダウンチャームストレンジトップボトム
組成 素粒子
粒子統計 フェルミ粒子
グループ クォーク
世代 第一、第二、第三世代
相互作用 強い相互作用
弱い相互作用
電磁相互作用
重力相互作用
反粒子 反クォーク (q)
記号 q
崩壊粒子 安定
電荷 +23 e, −13 e
カラー 持つ
スピン 12
バリオン数 13
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クォーク (quark) とは、素粒子のグループの一つである。レプトンボソンとともに物質の基本的な構成要素であり、クォークはハドロンを構成する。クオークと表記することもある[1]

クォークという名称は、1963年にモデルの提唱者の一人であるマレー・ゲルマンにより、ジェイムズ・ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』中の一節 "Three quarks for Muster Mark" から命名された[2][3]。カモメの鳴き声を意味する。

日本語では他の素粒子には「電子」「光子」などの漢語の名前が使われているが、クォークはquarkを音写した「クォーク」が用いられている。中国語では「層子」と表記される。

概要

クォークは、現在の実験的事実からは内部構造を持たないとされており、レプトンゲージ粒子ヒッグス粒子とともに標準模型を構成する素粒子のグループのひとつである。クォークどうしは結合してハドロンバリオンメソンなど)と呼ばれる複合粒子を形成する。最も安定なハドロンは、原子核の構成要素である陽子および中性子である[4]クォークの閉じ込めとして知られる現象により、クォークは相当な高エネルギー状態でなければ単独で観測されることはなく、ハドロンの中においてのみ観測することができる[5][6]。この理由により、クォークについて知られていることはハドロンの状態から分かることがほとんどであり、裸のクォークの性質はまだよく分かっていない。クォークが裸の状態で存在する「クォーク星」と呼ぶべき天体が存在する可能性が指摘されており、生成過程としては天体の超新星爆発の後などが考えられている。クォーク星らしいと考えられる特徴を持つ天体が既にいくつか発見されている(クォークグルーオンプラズマも参照)。

クォークは、6種類(フレーバーと呼ばれる)存在し、三つの世代を形成する。すなわち、第一世代のアップダウン、第二世代のチャームストレンジ、および第三世代のトップボトムである[7]。各世代は、電荷が正のものと負のもので対を作っている。クォークの質量は世代が上がるごとに増加する。より重たいクォークは粒子崩壊(高質量状態から低質量状態への変換)の過程を経てすぐにアップおよびダウンクォークに変化する。このようにアップおよびダウンクォークは安定であり、宇宙の中で最も多く存在するクォークである。一方のチャーム、ストレンジ、トップおよびボトムは、宇宙線粒子加速器の中で起こるような高エネルギー衝突の中でしか生成されない。

クォークは、電荷色荷スピンおよび質量などさまざまな固有の性質を持つ。クォークは標準模型において唯一、四つの基本相互作用全ての影響を受ける素粒子のグループである。基本的な相互作用は、基本的な力として知られ、電磁力重力強い力および弱い力がある。また、クォークは電荷が素電荷整数倍ではないことが知られている唯一の粒子群である。全てのクォークのフレーバーについて、それに対応する反粒子が存在する。この反クォークは、クォークのいくつかの性質が大きさは等しいが符号が逆になった値(反数)を持つ。

クォークモデルは、二人の物理学者、マレー・ゲルマンおよびジョージ・ツワイクによって独立に1964年に提唱された[8]。クォークはハドロンを系統立てる枠組みの一部として導入され、SLACにおける深非弾性散乱実験により物理的な存在の証拠が1968年に発見された[9][10]。クォークのフレーバーの6つが全て加速器実験により観測されており、最後に見つかったものは1995年にフェルミラボで見つかったトップクォークである[8]

ハドロンとクォーク

クォークモデルが確立するまではハドロンが強い相互作用を行う粒子であり、また素粒子であると考えられていた。しかし異常磁気モーメントの問題、特に電荷を持たない中性子が強い磁気モーメントを持つ事は未解決問題であるとされていた。加えて新たなハドロンの発見が続き、結局は核子について、より小さい構成要素による構造を仮定せざるを得なくなった(クォークモデル参照)。現在では、ハドロンは、6種類のクォークとハドロン内部で強い相互作用を伝播する8種類のグルーオンとから構成されるものとして考えられている。

ハドロンは、バリオン中間子(メソン)に分けられる。バリオンは価クォーク3個、中間子は価クォーク1個と反価クォーク1個から構成される。例えば、

  • バリオンである陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個
  • バリオンである中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個
  • 中間子であるK中間子はストレンジクォーク1個と反アップクォーク1個

からなる。

クォークの質量

カレントクォーク1個の質量は、例えばアップクォーク (u) は電子の10倍、ダウンクォーク (d) は20倍程度だが、これらが集まると質量は普通とは違った結果になる。例えば、

  • uudの組み合わせは陽子を構成するが、質量は10+10+20=40とはならず電子の1836倍程度
  • uddでは中性子だが、10+20+20=50とはならず1839倍程度

となる。これは強い相互作用の結合エネルギーによるものである。

多クォーク粒子

これまでは、ハドロンは上記のように価クォーク2個の中間子または3個のバリオンの組み合わせでしか見つかっていなかった。しかし、理論上予測されていた価クォーク4個の組合わせからなるテトラクォークおよび5個の組み合わせからなるペンタクォークが発見された可能性がある。

クォークの一覧

クォークの性質[11]
世代 名前 記号 質量 (MeV/c2)* J B Q I3 C S T B′ 反粒子 反粒子記号
第一
世代
アップ u 1.7 - 3.1 12 +13 +23 +12 0 0 0 0 反アップ u
ダウン d 4.1 - 5.7 12 +13 13 12 0 0 0 0 反ダウン d
第二
世代
チャーム c 1290+50
−110
12 +13 +23 0 +1 0 0 0 反チャーム c
ストレンジ s 100+30
−20
12 +13 13 0 0 −1 0 0 反ストレンジ s
第三
世代
トップ t 172000±2200 12 +13 +23 0 0 0 +1 0 反トップ t
ボトム b 4190+180
−60
12 +13 13 0 0 0 0 −1 反ボトム b

脚注

  1. ^ 学術用語集物理学編では「クォーク」を採用している。
  2. ^ "Three quarts for Mister Mark" (マーク氏に3クォートを!)という酒場での掛け声を、韻を踏むように改変した文章であるとゲルマンはしている
  3. ^ M. Gell-Mann (1995). The Quark and the Jaguar: Adventures in the Simple and the Complex. Henry Holt and Co. p. 180. ISBN 978-0-8050-7253-2 
  4. ^ Quark (subatomic particle)”. Encyclopædia Britannica. 2008年6月29日閲覧。
  5. ^ R. Nave. “Confinement of Quarks”. HyperPhysics. Georgia State University, Department of Physics and Astronomy. 2008年6月29日閲覧。
  6. ^ R. Nave. “Bag Model of Quark Confinement”. HyperPhysics. Georgia State University, Department of Physics and Astronomy. 2008年6月29日閲覧。
  7. ^ R. Nave. “Quarks”. HyperPhysics. Georgia State University, Department of Physics and Astronomy. 2008年6月29日閲覧。
  8. ^ a b B. Carithers, P. Grannis (1995). “Discovery of the Top Quark” (PDF). Beam Line (SLAC) 25 (3): 4–16. http://www.slac.stanford.edu/pubs/beamline/25/3/25-3-carithers.pdf 2008年9月23日閲覧。. 
  9. ^ E.D. Bloom et al. (1969). “High-Energy Inelastic ep Scattering at 6° and 10°”. Physical Review Letters 23 (16): 930–934. doi:10.1103/PhysRevLett.23.930. 
  10. ^ M. Breidenbach et al. (1969). “Observed Behavior of Highly Inelastic Electron–Proton Scattering”. Physical Review Letters 23 (16): 935–939. doi:10.1103/PhysRevLett.23.935. 
  11. ^ K. Nakamura et al. (Particle Data Group) (2010). “Review of Particle Physics: Quarks”. Journal of Physics G 37: 075021. doi:10.1088/0954-3899/37/7A/075021. http://pdg.lbl.gov/2010/tables/rpp2010-sum-quarks.pdf. 

関連項目

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