共感-性とは? わかりやすく解説

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共感性

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共感

(共感-性 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/14 23:02 UTC 版)

共感(きょうかん)、エンパシー(empathy)は、他者と喜怒哀楽の感情を共有することを指す。もしくはその感情のこと。例えば友人がつらい表情をしている時、相手が「つらい思いをしているのだ」ということが分かるだけでなく、自分もつらい感情を持つのがこれである。通常は、人間に本能的に備わっているものである。しかし、例えば反社会性パーソナリティ障害サイコパスの人物では、“共感の欠如”が、見られる[1]。近藤章久は深い共感と直観を精神治療の根幹とした。

共感性がたとえば友情を生み出す。友人になったきっかけは、「何となく」であることが多いが、「何となく」の本性は、共感性である。共感しない立場をとると、子猫を憎むことを主張しているかのように受け取られ、不興を買う[2]

動物においても類似の例はあり、たとえばコンラート・ローレンツはガンが湖に群れで舞い降り、また新たな餌場に移動する際に、鳴き声を互いに聞くことで気分を共有するのだと論じている。

情動的共感と認知的共感

共感のしやすさ(共感力)を客観的に測定するテストとして、対人性反応性指標(interpersonal reactivity index,IRI)が広く用いられている[3]。IRIでは、他者の幸不幸に共感する気持ちを評価する「共感的配慮」、他者の立場に立って物事を自然に考えることができるかどうかを評価する「視点取得」、フィクションの人物に感情移入する傾向を評価する「空想」、他者の不幸な境遇を我が身に置き換えて恐怖を感じる傾向を評価する「個人的苦悩」の4つの尺度で共感力を測定する。

共感は、他者の感じていることを自分の感覚として感じる感情的側面と、相手の立場から見えるであろう状況を推測して分析する認知的側面によって成り立っている[3]。上記の4つの尺度のうち、視点取得のみが認知的共感に分類されており、他の3つは感情的共感に分類されている。また、共感力は他者の表情声色といった社会的信号の感受性にも左右される[3]

感情的共感の感情的ミラーリングメカニズムとは異なり、認知的共感は脳内のメンタライゼーションネットワークを活性化する。感情的な共感は交渉で裏目に出る可能性がある。ほとんどの場合、代わりに認知的共感を使用する方がはるかに効果的である[4]

マーチン・ホフマンによれば、幼児期における共感の発達段階として、自己を投影して相手も同じことを感じているであろうとする段階(いわば自己中心的な共感であり、ヒトや場合によって状況が異なる可能性を考えない)を経て、やがて自分の境遇とは異なる相手の様子を推し量る段階に達するとしている[要出典]

共感の機能、共感の限界

他人から共感されることは自分の存在を認めてもらえたという承認欲求を満たすことから、傾聴し共感を示すことは精神的な援助となる[5]。1993年以来、一般人が共感を示す対話スキルを学んで被災者高齢者の話を傾聴し、心のケアを行う傾聴ボランティアが増加している。一般にカウンセリングでは、クライアントの苦しみや辛さを追体験し、できる限り分かってあげることを共感という[5]

ただし、強い共感を持つ人たちは、一般的に見られる多くのうつや、不安に関連する病気症候群に悩む傾向がある[2]

クライアントの個人的な経験によって発生した苦しみに共感する手法に懐疑的な心理士もいる。信田さよ子はカウンセリングにおける共感に対して懐疑的な見方をしており、クライアントの身になって考えよう、共感しようと思ったことはないと述べている[5]。職業的カウンセラーは、職業として毎日のように長時間カウンセリングを行うので、自分の心を守り、燃え尽き症候群に陥らないように、職業的カウンセリングを行っている最中はクライアントに共感することを意図的に控えようとする人も多い。またクライアントに共感し、またクライアントの側もカウンセラーの側に共感し、あまりに心理的に親密な関係になり互いにそれに喜びを感じるようになると、知らず知らずのうちに共依存になってしまうこともあるので、多くの場合、心理士になる手前の訓練の段階で、クライアントとは心理的に一定の境界線を引く方法を身につけるように、と先輩の心理士から指導やアドバイスを受けるので、その指導やアドバイス通り、クライアントと心理的な境界線を引くために、意図的に共感を控えめにする傾向はある。そうは言っても、実際には、そういう心理士でも職業的カウンセリングの場で共感することもある。また、世界中の心理士が全員、信田さよ子のように考えているというわけではなく、つきつめればやはり共感や愛情こそが大切だと考え、適切な範囲で(共感を示すことが適切な場合で、自分の心が壊れない程度の範囲で)共感を行いそれを示すことで、クライアントに良い結果をもたらそうとしている心理士はそれなりの割合でいる。

またどんな心理士でも、職業的カウンセリングの場を離れれば、普通に家族・友人・知人・他人などに共感したり反発したりしているし、テレビドラマを観て登場人物に共感して涙を流すこともある。心理士でも、愛しい自分の子供が苦しんで涙を流せば、自然と共感して涙が流れるし、親である自分が共感することが自分の子供には必要だと分かっている。

人間は魅力的な人々、自分に似た人々、あるいは自らの民族的背景や国民的背景を共有している人々に類似点を見つけ、それに魅力を感じ、共感を抱く傾向がある。数値の違いや統計データにはさほど敏感ではない。道徳思いやり、優しさ、、良き隣人であることなどにもとづいて、正しいことをすること、そして世界をより良い場所にするなど、良いことをしたいのであれば、共感はむしろ悪い指針となる場合があり、良い人であるためには自制心と正義感とともに客観的な思いやりが必要だと、哲学・心理学協会(SPP)の前会長を務めていたイェール大学・心理学部教授ポール・ブルーム氏は主張している[2]。たとえば、怒り狂って暴力的になっている人を見て、単純にその感情に共感ばかりしている人は、その人自身も暴力的な衝動を感じてしまう可能性がある。したがって、共感するだけでなく、感情に流されない自制心や正義感や思いやりを持つことが、世界を本当に良くするのに役立つのである。

共感が欠如する人、場合

ヒトの自然な発達段階において阻害されると、共感することを欠如するようになる場合がある。 また、一般に男性は女性より共感性が低い傾向がある。

共感の欠如は、自閉症アスペルガー症候群反社会性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害の人の特徴とされる。

サイモン・バロン=コーエンは、自閉症アスペルガー症候群の人は、一般的に認知的共感が低く、他の人の心を理解するのに苦労し、感情的共感も低いと指摘する[2]

共感の欠如と暴力性の有無

ただし共感の欠如にもかかわらず、自閉症やアスペルガー症候群の人はサイコパスらのように搾取と暴力の傾向を示さない。 実は、アスペルガー症候群と自閉症の人はしばしば強い道徳的規範を持っており、加害者よりも虐待の犠牲者になる可能性がより高い[2]

精神医学ではまだ厳密に定義されていないが、先天的に極端に共感性が低いサイコパスと呼ばれる人達もいる[6]。サイコパスのほうは、自閉症やアスペルガー症候群の人と異なり、暴力的であり、他人から搾取する(他人を食い物にする)性質があり、実社会や組織内でさまざまな犯罪行為を起こしたり、殺人行為まで平然と冷静に行ってしまえる性質を持っているので、要注意である。

テレビドラマの登場人物への共感

ドラマで演技する俳優は、なかでも優れた俳優は、あたかも実際にある人物の人生を生きているかのようにありありと思い描いて感じることで本当にその感情を感じることができる。たとえば劇中である大切な人物が亡くなるという設定になっている場合、その人物は俳優であり物理的には死んでいないと頭のどこかでは知っていても、演技をしている瞬間だけはその人物(劇中の子供、恋人、友人など)が本当に死んだかのように心でありありと思い描き、自分の心中にあるその心的なイメージをありありとリアルに感じることで、俳優は実際に悲しみの感情を感じて涙を流すことが可能である。なお西田敏行は、後輩の俳優たちに向かって「演ずるのではなく、生きよ」とアドバイスしていた。俳優の演技を見る視聴者の中には俳優の表情や声の調子や涙から、俳優が感じている"悲しみ"を感じ取り、それに共感して涙を流す人もいる。この場合の視聴者の共感は、距離を置いて分析すれば、奇妙で不思議な共感ではある。架空の設定、架空の人物の悲しみに対する共感であり、しかしながら、その瞬間に俳優が感じた"本物の悲しみ"に対する共感だからである。視聴者の共感は、俳優が見せた"本物の悲しみ"の感情への共感ではあるが、俳優が感じた悲しみはもとをたどれば虚構の設定から作り出されており、俳優が職業的テクニックを駆使して作り出している感情だからである。

脚注

  1. ^ DSM-IV-TR diagnostic criteria for narcissistic personality disorder,2000年
  2. ^ a b c d e Against Empathy
  3. ^ a b c 金井 2013, pp. 60–65.
  4. ^ MD, Srini Pillay (2018年10月4日). “Brain science to improve your relationships” (英語). Harvard Health Blog. 2020年11月3日閲覧。
  5. ^ a b c 池田理知子・五十嵐紀子(編)『よくわかるヘルスコミュニケーション』 ミネルヴァ書房 <やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ> 2016年、ISBN 978-4-623-07786-1 pp.110-111.
  6. ^ 日経サイエンス2013年2月号サイコパス特集

参考文献

関連項目

外部リンク



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