光合成と呼吸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 03:35 UTC 版)
自然界において遊離酸素は、光合成によって水が光分解されることで生じ、海洋中の緑藻類やシアノバクテリアが地球大気中の酸素70 %を、残りは陸上の植物が作り出している。 簡易な光合成の反応式は以下の通りである。 6 CO 2 + 6 H 2 O + {\displaystyle {\ce {6CO2 + 6H2O +}}} 光子 ⟶ C 6 H 12 O 6 + 6 O 2 {\displaystyle {\ce {-> C6H12O6 + 6O2}}} (二酸化炭素+水+日光 → グルコース+酸素) 光分解による酸素発生は葉緑体のチラコイド膜中で起こる。光をエネルギーとするこの作用は多くの段階を経て、ATP を光リン酸化(photophosphorylation)させるプロトンの濃度勾配を起こす。この際、水を酸化することで酸素ガスが発生し、大気中に放出される。 酸素ガスは好気性生物が呼吸を行い、ミトコンドリアで酸化的リン酸化反応を経てATPを発生させるために使われる。酸素呼吸の反応は本質的に光合成の逆である。 C 6 H 12 O 6 + 6 O 2 ⟶ 6 CO 2 + 6 H 2 O + {\displaystyle {\ce {C6H12O6 + 6O2 -> 6CO2 + 6H2O +}}} 2880 k J m o l − 1 {\displaystyle 2880\,\mathrm {kJ\,mol^{-1}} } 脊椎動物では酸素ガスは肺の膜を通して血液中に拡散し赤血球中のヘモグロビンと結びつき、その色を紫がかった赤から明るい赤へ変える。ほかの動物ではヘモシアニン(軟体動物や節足動物の一種など)やヘムエリスリン(クモやロブスターなど)が使われる例もある。1 Lの血液が溶かせる酸素ガスは200 mLである。 超酸化物イオンや過酸化水素などの活性酸素は、酸素呼吸を行う生体にとって非常に危険な副産物であり、ミトコンドリアを取り込んだ真核生物は、進化の過程でデオキシリボ核酸を酸素から保護するために核膜を獲得した。その一方で、高等生物は免疫系で細菌を破壊するために過酸化物を用いている。また、植物が病原体に抵抗して起こす過敏感反応(hypersensitive response)でも、活性酸素は重要な役割を果たす。 成人が消費する酸素は、1分あたり約250 mLであり、これは約0.36 gに相当する。ここから計算すると、人類全体が1年間に消費する量は13億トンに相当する。 なお、酸素を利用しない呼吸の形態を嫌気呼吸という。最初の地球に酸素が存在しなかったことから、これが最初の呼吸のあり方と考えられる。これは好気呼吸の経路にも、解糖系という形態で残っている。酸素を全く使わずに生活する微生物も存在し、そのような微生物は、酸素の存在下では死滅する(嫌気性生物)。初期の微生物にとっても、酸素は有毒物質であった。
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