テアニンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 自然 > 物質 > 化合物 > アミノ酸 > テアニンの意味・解説 

テアニン【theanine】

読み方:てあにん

アミノ酸の一。緑茶うま味成分で、抹茶玉露多く含まれる。脳の神経細胞保護し興奮鎮めた緊張和らげたりする。


テアニン

分子式C7H14N2O3
慣用名 L-テアニン、L-Theanine、N5-Ethyl-L-glutamine、テアニン、Theanine、(S)-2-Amino-4-(N-ethylcarbamoyl)butanoic acid、Nδ-Ethylglutamine
体系名: N5-エチル-L-グルタミン、(S)-2-アミノ-4-(N-エチルカルバモイル)ブタン酸、Nδ-エチルグルタミン


テアニン(テアニン)

テアニンは玉露から見つけられ緑茶風味増強のために食品添加物として使われています。飲んだテアニンは脳内神経伝達物質であるドーパミン増やす働 きがあるといわれています。

テアニン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/16 03:57 UTC 版)

テアニン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
法的規制
  • legal
投与経路 oral
識別
CAS番号
3081-61-6
ATCコード none
PubChem CID: 439378
ChemSpider 388498 
KEGG C01047  
別名 L-theanine, N-ethyl-L-glutamine
γ-グルタミルエチルアミド, γ-(エチルアミド) L-グルタミン酸
化学的データ
化学式C7H14N2O3
分子量174.20 g/mol
物理的データ
融点117 °C (243 °F)
テンプレートを表示

テアニンL-Theanine)とは、に多量に含まれるアミノ酸の1種で、グルタミンアミドの部分の相手が、アンモニアからエチルアミンに変わった化合物である。グルタミン酸側鎖のカルボキシ基に、エチルアミンのアミノ基が脱水縮合した化合物とも説明できる。

所在

テアニンは植物の中でもチャノキCamellia sinensis)とそのごく近縁種、そしてキノコ(菌類)の1種であるニセイロガワリBoletus badius)にしか見つかっていないアミノ酸であり[1][注釈 1]、茶の旨味成分の1つである。テアニンは乾燥茶葉中に1%から2%程度含まれ、特に上級な緑茶に多く含まれている。また、テアニンは茶の等級に関わらず、全遊離アミノ酸の約半量を占めている。テアニンは茶葉が含有する窒素の過半を占めており、チャノキが、吸収したアンモニア態窒素を植物体にとって安全な形態にして、蓄積するために合成している物質と考えられている。茶でテアニンは根で生成され、幹を経由して葉に蓄えられる。テアニンに太陽光が当たるとカテキンに変化する。特にテアニンを多く含有する玉露抹茶の原料となる茶葉は、収穫の前(最低2週間程度)日光を遮る被覆を施される。これにより、煎茶の旨味の原因とされるテアニンなどのアミノ酸が増加し、逆に渋みの原因とされるカテキン類(いわゆるタンニン)が減少する[2]

体内動態・生理作用

テアニンは、経口摂取すると小腸からアミノ酸トランスポーターに乗り吸収され[3]、さらに血液脳関門を通過できるため、脳へ直接入ることが可能であり[4]、さらに、精神に影響を与える作用が認められる[5]。また、脳以外でも生理作用を発揮する。加えて「薬物相互作用の節」にあるように、脳でも末梢でも、薬物相互作用が起こることが知られている[6][7]

生理作用

テアニンを摂取することにより、リラックスの指標であるα波の発生が30分から40分後に確認されており、50 mg摂取では不安傾向の低い人に、200 mg摂取では不安傾向の高い人においてもリラックス効果が認められている[2]。 抗ストレス作用についても同様に効果が確認されており、ヒトにクレペリン型暗算課題でストレスをかけ、ストレス負荷により変動する心拍数、唾液中の免疫グロブリンA、主観的ストレス感をみたところ、テアニン摂取でストレスの抑制が認められた[8]。リラックスや抗ストレス作用に随伴して、血圧降下作用も見られる[9][3]。睡眠に関しては、テアニン摂取により睡眠の質の改善が報告されており、中途覚醒の減少が認められた他にも、被験者へのアンケートにより起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感の改善が認められている[10]月経前症候群(PMS)に関しては、PMS時のイライラ、憂鬱、集中力の低下等の精神的症状を改善することが報告されている[11]

またテアニンは、あるラットの実験では神経系の変性・衰退を防止する効果が見られ、脳梗塞を繰り返すことで引き起こさせたラットの記憶障害を防止するという[12]

考えられる作用機序

構造的には、ヒトなどでは脳内で興奮性の神経伝達物質として作用するグルタミン酸と類似性があるものの、テアニンのシナプス後部細胞のグルタミン酸受容体との親和性は低い上に、むしろテアニンの主な効果としては、抑制神経伝達物質のGABAを増加させているように見受けられる[13]。研究者は、テアニンがグルタミン酸の興奮毒性を防ぐかもしれないとも予測している[14]。テアニンは脳内のドーパミンの濃度を上昇させ、グルタミン酸受容体(AMPA型NMDA型カイニン酸型)への親和性は低い[14]

脳内のセロトニンに対するテアニンの影響は、学者の中でも議論となっている。同様な実験法を用いるにもかかわらず、研究によって脳内で増加を示したり、減少を示したりするからである[4][15][16]。高血圧マウスを用いて注射した研究では、著しく5-ヒドロキシインドール類(セロトニンの分解物)が減少していたことが明らかになった[9]

危険性・安全性の評価

ラットの研究を通じて、非常に高濃度テアニンを繰り返し使用しても、心身共に無害であるとされている[17]アメリカ食品医薬品局 (FDA)は、食品添加物としてテアニンをGRAS (一般に安全と認められる)に分類している[18]。一方、ドイツの連邦リスク評価研究所 (BfR) は単離されたテアニンを飲料に添加することに反対している[19]

薬物相互作用

既述の通り、テアニンはチャノキに含有され、玉露などの茶葉にも含まれている。加えて、茶葉にはカフェインも含有されている。したがって、テアニンとカフェインとを、同時に経口摂取することはありがちなことと言える。これらをヒトが同時に摂取した場合、テアニンとカフェインとの相乗効果もあいまって、認知活動や気分の改善が見られることが見い出された[20]

また、統合失調症の治療において、投薬中の抗精神病薬にテアニンを併用することで、いくつか症状が減少することが、プラセボ対照試験で示されている[21]ほか、精神疾患の予防にも有用である[22]

研究

テアニンは、免疫系へも影響を与える可能性が示唆されており、テアニンはガンマ・デルタT細胞の防衛機能を増強することで、感染に対する生体の免疫反応を助けるかもしれない。この研究は、被験者は4週間にわたって毎日600 mLのコーヒーまたはお茶を飲むものである。結果、血液の分析では抗菌タンパク質の産生はお茶を飲む群のほうが5倍高まっており、より高い免疫反応を示すものであった。[23]

歴史

テアニンは1950年に京都府立農業試験場茶業研究所(現在の京都府農林水産技術センター・農林センター茶業研究所(宇治茶部))により玉露から発見された[24]。その後、分離精製されて構造が明らかになり、日本では1964年7月に食品添加物として指定された。テアニンはお茶に含まれるアミノ酸であることから、茶の旧学名“Thea sinensis”にちなんで“Theanine(テアニン)”と命名されたと言われている。

利用

ガムやキャンディーなどの菓子類、ゼリー、アイスクリーム、ヨーグルトなどの冷菓清涼飲料水やニアウォーターなどの飲料、およびサプリメントや美容食品などに応用されている。また、テアニンは緑茶の呈味改善剤として使用されているが、緑茶以外の様々な食品の苦味やえぐ味も抑えるので、風味の改善に用いられている。

サプリメント利用

日本国外の飲料メーカーではテアニンを含む飲料を販売しているが、その宣伝は精神集中を助けると謳うもの、リラックス・鎮静を謳うもの、まちまちである。

日本国外のサプリメントとしてのL−テアニン原料として、日本の太陽化学[25]の製造しているサンテアニンがよく用いられる。原料表示にL-Theanine (Suntheanine) と記載されていることが多い[26]。製造過程では、チャノキ由来の原料は用いず、微生物(Pseudomonas nitroreducens)の作るグルタミナーゼを利用した醗酵によって合成されている[27]

脚注

注釈

  1. ^ アマゾンの熱帯雨林に生育するセイヨウヒイラギ の仲間、en:Ilex guayusaもテアニンを含むという。

出典

  1. ^ Casimir J, Jadot J, Renard M (1960). “Séparation et caractérisation de la N-éthyl-γ-glutamine à partir de Xerocomus badius”. Biochim. Biophys. Acta 39: 462–468. doi:10.1016/0006-3002(60)90199-2. PMID 13808157. 
  2. ^ a b 小林加奈理, 長戸有希子, 青井暢之 ほか、「L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響」『日本農芸化学会誌』 72巻 2号 1998年 p.153-157, doi:10.1271/nogeikagaku1924.72.153
  3. ^ a b 横越英彦, 「脳の機能と栄養」『心身健康科学』 6巻 1号 2010年 p.1_6-1_12, 日本心身健康科学会, doi:10.11427/jhas.6.1_6
  4. ^ a b Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T (1998). “Effect of theanine, r-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats”. Neurochem. Res. 23 (5): 667–73. doi:10.1023/A:1022490806093. PMID 9566605. 
  5. ^ Gomez-Ramirez M; Higgins, BA; Rycroft, JA; Owen, GN; Mahoney, J; Shpaner, M; Foxe, JJ (2007). “The Deployment of Intersensory Selective Attention: A High-density Electrical Mapping Study of the Effects of Theanine”. Clin. Neuropharmacol. 30 (1): 25–38. doi:10.1097/01.WNF.0000240940.13876.17. PMID 17272967. 
  6. ^ mukohmatcha (2022年3月23日). “お茶/緑茶 カテキンとテアニンの効果/効能まとめ一覧 - 日本一の八女茶専門店『向抹茶』(むこうまっちゃ)Mukoh Matcha / Mukou Mathca”. 2022年10月2日閲覧。
  7. ^ Unno, Keiko; Nakamura, Yoriyuki (2021-08-12). “Green Tea Suppresses Brain Aging”. Molecules (Basel, Switzerland) 26 (16): 4897. doi:10.3390/molecules26164897. ISSN 1420-3049. PMC 8401650. PMID 34443485. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34443485/. 
  8. ^ Kimura K, Ozeki M, Juneja LR, Ohira H (2007). “L-Theanine reduces psychological and physiological stress responses”. Biol. Psychol. 74 (1): 39-45. doi:10.1016/j.biopsycho.2006.06.006. PMID 16930802. 
  9. ^ a b Yokogoshi H, Kato Y, Sagesaka YM, Takihara-Matsuura T, Kakuda T, Takeuchi N (1995). “Reduction effect of theanine on blood pressure and brain 5-hydroxyindoles in spontaneously hypertensive rats”. Biosci. Biotechnol. Biochem. 59 (4): 615–618. doi:10.1271/bbb.59.615. PMID 7539642. 
  10. ^ 小関誠, L.R.ジュネジャ, 白川修一郎「アクチグラフを用いたL-テアニンの睡眠改善効果の検討」『日本生理人類学会誌』第9巻第4号、2004年、143-150頁、doi:10.20718/jjpa.9.4_143NAID 110002510948 
  11. ^ 上田智子, 小関誠, 大久保勉, 朱政治, L.R.ジュネジャ, 横越英彦, 松本清一「PMSと健康食品: L-テアニンの月経前症候群改善効果に関する研究」『女性心身医学』第6巻第2号、2001年、234-239頁、doi:10.18977/jspog.6.2_234NAID 110004012542 
  12. ^ Egashira N, Ishigami N, Pu F, et al. (2008). “Theanine prevents memory impairment induced by repeated cerebral ischemia in rats”. Phytother Res 22 (1): 65–8. doi:10.1002/ptr.2261. PMID 17705146. 
  13. ^ Kakuda T, Nozawa A, Sugimoto A, Niino H (2002). “Inhibition by theanine of binding of [3H]AMPA, [3H]kainate, and [3H]MDL 105,519 to glutamate receptors”. Biosci. Biotechnol. Biochem. 66 (12): 2683-2686. doi:10.1271/bbb.66.2683. PMID 12596867. 
  14. ^ a b Nathan P, Lu K, Gray M, Oliver C (2006). “The neuropharmacology of L-theanine(N-ethyl-L-glutamine): a possible neuroprotective and cognitive enhancing agent”. J. Herb. Pharmacother. 6 (2): 21–30. doi:10.1300/J157v06n02_02. PMID 17182482. 
  15. ^ Yokogoshi H, Mochizuki M, Saitoh K (1998). “Theanine-induced reduction of brain serotonin concentration in rats”. Biosci. Biotechnol. Biochem. 62 (4): 816-817. doi:10.1271/bbb.62.816. PMID 9614715. 
  16. ^ Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T. Effect of theanine, γ-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats. Neurochem Res. 1998;23(5):667-73.
  17. ^ Borzelleca J, Peters D, Hall W (2006). “A 13-week dietary toxicity and toxicokinetic study with L-theanine in rats”. Food Chem Toxicol 44 (7): 1158–66. doi:10.1016/j.fct.2006.03.014. PMID 16759779. 
  18. ^ FDA confirms GRAS status of Suntheanine”. NutraIngredients-USA.com (2007年3月22日). 2013年3月16日閲覧。
  19. ^ Ritsner, Michael S.; Miodownik, Chanoch; Ratner, Yael; Shleifer, Tatyana; Mar, Maria; Pintov, Leonid; Lerner, Vladimir (2011). “L-Theanine Relieves Positive, Activation, and Anxiety Symptoms in Patients with Schizophrenia and Schizoaffective Disorder”. The Journal of Clinical Psychiatry 72 (1): 34–42. doi:10.4088/JCP.09m05324gre. PMID 21208586. 
  20. ^ Haskell CF, Kennedy DO, Milne AL, Wesnes KA, Scholey AB (2008). “The effects of L-theanine, caffeine and their combination on cognition and mood”. Biol. Psychol. 77 (2): 113–22. doi:10.1016/j.biopsycho.2007.09.008. PMID 18006208. 
  21. ^ Egashira N, Ishigami N, Pu F, et al., L-Theanine relieves positive, activation, and anxiety symptoms in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder: an 8-week, randomized, double-blind, placebo-controlled, 2-center study, J Clin Psychiatry 2010;71:1-9., Stanley Research, http://www.stanleyresearch.org/Trial/Drug/awardedtrialdetail.aspx?id=252 
  22. ^ 緑茶成分テアニンの向精神作用について 日本生物学的精神医学会誌 27 巻 4 号 p177-181 功刀浩,太田深秀,若林千里,秀瀬真輔, 小澤隼人,大久保勉
  23. ^ Kamath A, Wang L, Das H, Li L, Reinhold V, Bukowski J (2003). “Antigens in tea-beverage prime human Vgamma 2Vdelta 2 T cells in vitro and in vivo for memory and nonmemory antibacterial cytokine responses”. Proc Natl Acad Sci USA 100 (10): 6009–14. doi:10.1073/pnas.1035603100. PMC 156317. PMID 12719524. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC156317/. 
  24. ^ 茶業研究所のあゆみ、京都府農林水産技術センター 農林センター 茶業研究所(宇治茶部)
  25. ^ 太陽化学株式会社”. 2011年2月10日閲覧。
  26. ^ Taiyo International. “Suntheanine Buyer's Guide”. 2011年2月10日閲覧。
  27. ^ GRAS Notice 000209: L-theanine” (PDF) (2006年7月). 2020年11月25日閲覧。

関連人物

外部リンク




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「テアニン」の関連用語











テアニンのお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



テアニンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
Supplement Kuchikomi RankingSupplement Kuchikomi Ranking
(C)2024 All Rights Reserved. 健康食品のあり方を考える日本サプリメント評議会の運営です。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのテアニン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS