サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY [★★]
スニーカーの新人さん。帯で乙一さんが絶賛していました。
夏休みのとある日常を描くタイムループモノ。これは最高に好みでした!
そして何よりもイラストの椎名優の絵がマッチングしすぎです。すごく爽やかで繊細なイラストでした。
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ――。
能力者が集う街、咲良田。浅井ケイは、記憶を保持する能力をもった高校一年生。春埼美空は、「リセット」――世界を三日分巻き戻す能力をもっており、ケイの指示で発動する。高校の「奉仕クラブ」に所属する彼らは、ある日「死んだ猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのだが……。
リセット後の世界で「現実」に立ち向かう、少年と少女の物語。
とある夏、世界を殺すと同時に世界を取り戻す物語――。
能力者が集まる街・咲良田で、世界を三日前に巻き戻すことのできる美空と、どんなことがあっても記憶を保持できるケイの二人が、管理局から「猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのが発端。
美空の「リセット」を繰り返していくうちに、新たなる事実ができたり、敵が出てきたり、協力したり対峙したりと、なかなかストーリーも凝っている作品だと思いました。おそらくタイムループモノにわけていいんじゃないかな。もしくはパラドックスかな。
最初は「この能力ってどうやって使うんだろ」と思っていた能力も、後になると重要な伏線だったりするわけで油断できません。
そして何よりも、この二人の能力は二人が常に一緒にいてこそ発揮されるというところがミソ。美空の「リセット」は自らの記憶も三日前に遡ってしまうので、能力を使ったことさえ覚えていないんですよねー。それをうまくフォローするのがケイの能力というわけです。しかもこの二人の恋人までではないんだけど、何かが通じ合うパートナーとしての距離感がすごく素敵。夏祭りのところはすごくキューンってくるよ!
そんでもって主人公のケイの思考というのがなかなか複雑。いや、裏を返せばもしかしたら驚くほど単純なのかも。誰かと一緒に笑っていければそれでいい、ってすごく若者らしい言葉ですよね。
終盤の村瀬さんとの対峙で使った駆け引きは、ものすごいひやひやしました。けどそこであの人のあの能力が生かされるとは思わなかったなー。なんというか、結構血みどろな戦いだったけどロマンがあるというか、どこまでも綺麗な終わり方だと思う。
ちなみに、ケイと野ノ尾さんの無意味で内容のない会話もツボ。ここらへんは西尾維新とか森田季節のキャラの空気とかぶった気がします。
物語りももちろんそうなのですが、ここまで文章と絵がマッチングした組み合わせは久々だと思いました。
どこまでも綺麗で透明感のある独特な文章、そして夏らしい爽やかで繊細な絵があってこその、この作品なんだなーと。瞼の裏に夏の情景が鮮明によみがえるようでした。文章だけで世界観はすごく出ていたと思いますし。
いやー、なんか読了後はすごい爽やかな気分になれた。私もこんな一波乱ある夏を過ごしてみたい。
すごく満足でした。あとがきを見ると2巻も出る予定らしいので期待して待ちましょう。
こういう雰囲気が好きな人は買って損はしないと思いますよ! 超オススメです!