“文学少女”見習いの、初戀。 [★★]
遠子先輩は卒業し、心葉やななせが三年生になり、文芸部に心葉の後輩ができる番外編。
読み始めは「恋する挿話集」みたいにコミカルなお話が続くだろうなと思ってたんですが（語り部が若干アホの子入ってるし）、いつもの“文学少女”だった。
劇場アニメ化も決定し、完結してもなお勢いが止まらない“文学少女”ワールドに今後も期待。
“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
聖条学園に入学した日坂菜乃は、ひとりの上級生と出会う。文芸部部長、井上心葉。彼に惹かれ、勢いで文芸部に入部してしまった菜乃だったが、心葉の胸には既にひとりの"文学少女"が宿っていた。
まるで相手にされず、落ち込む菜乃。けれど、彼女がある事件に巻き込まれ、追い詰められたとき、心葉は告げる。
「気づかないふりも、目をそらすことも、もうしないって誓ったんだ」――文学初心者の少女が物語に隠された真実を探す、もうひとつの"文学少女"の物語!!
恋に恋する、“文学少女”見習い登場！
心葉はどんだけツンデレでたらしなんだよ！
といわずにはいられません。でもなー、心葉は遠子先輩一筋だしな……。
まあそれは置いておいて、今回は文学少女見習いの菜乃ちゃん（今回の表紙の子）が語り部の「初戀」。彼女は入学前に心葉に一目惚れし、淡い恋心を抱きながら聖条学園に入学して心葉と出会い、ドストレートに想いをぶつけるんですが全く相手にされず撃沈。しかしたかが一度や二度で諦めるような彼女ではありませんでした。
なんというか、見た目はへらへらしてて若干アホの子入ってるんですけど恋にはものすごく熱くてタフネスです。心葉が言うとおり恋に恋する女の子って感じなんですけど、ここまで本気になれるとなんか関心までしてしまう。それくらい恋にはアクティブな娘さん。まさかあんなことまでしちゃうなんて……最近の子はませんてんな！
しかし思えばこのシリーズにはこんなキャラはいなかった。千愛ちゃんと若干表面は似ているが中身が違いすぎるしな、アレは。そんな叶わぬ恋に臆することなく、心葉へ真っ直ぐに想いを伝え、行動にもしっかり出していく菜乃ちゃんはすごい。いい意味でも悪い意味でも「恋は盲目」ってことを体言しているようだった。そこら辺意地になってるというか、むきになっているところがどことなく遠子先輩っぽい。なるほど「“文学少女”見習い」ねー。
でも私は菜乃ちゃんにたじたじになっている心葉を見ても、そして彼女の為に先輩らしく助けてあげるところを見ても、心葉はやっぱり遠子先輩しか見てないんだなって思う。まあここで菜乃ちゃんに靡いたら盛大に心葉をぶん殴りたいところでありますが、まあそんなことは絶対にありえないでしょうけどね。だったらせめてななせにいってやれよと。
さてここからはちょい主観入りますが、心葉はむしろ自分を引っ張りまわすはた迷惑な菜乃ちゃんを延長線上に、かつての遠子先輩の姿を結び付けているのではないでしょうか。だから表面はつんけんしているけど、菜乃ちゃんのアクティブさにはどこか懐かしいものを感じているのではないかしら。それにしたって最後のあれはどうかと思うけどもね。
さて、遠子先輩はいずとも本来の“文学少女”らしさ漂う事件が起こります。
今回は「曽根崎心中」を題材としたものすごーい愛憎劇です。
私は「愛する人と一緒に死にたい」って気持ちは試したくはないけど、同意はできる。確かにロマンこそありますよ、そりゃあね。けどこの事件の真実と結末は、すごくやるせなかった。スウィートなんて欠片もない、けれど底抜けに純粋な愛。ホント愛って色んな形がありますよねー、とこのシリーズを読むたびに思わされる。
そして最後には美羽にニヤニヤさせられてしまった。ホント素直じゃないね！
というか芥川くんもなかなか無意識にやり手ですね。この二人のやり取り好きだ。
うん、十分満足。もう少しだけ続くらしいので期待しておきましょう。超オススメ！
そして次回は挿話集の続編みたい。やっとななせのターンか！
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