雪蟷螂 [★★]
「ミミズクと夜の王」「MAMA」でお馴染み、初めての紅玉いづきさん。
これはすごかった。なんというか、全然ラノベっぽくないんだけどものすごい魅せられた。
極寒の世界でこその情熱的な愛が、ものすごく温かく見えてしまったのです。
雪蟷螂 (電撃文庫)
涙氷の降るその山脈で雪蟷螂の女が起つ。
この婚礼に永遠の祝福を。
長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えた様々な思惑が交錯することによって阻まれる。果たして、極寒の地に舞う恋の行方は……。
喰らいたいほどの愛は、白銀の世界の下に――。
『雪蟷螂』の異名を持つ女傑が統べる誇り高き蛮族・フェルビエと、死後遺体をミイラとして保存する永遠生を進行とするミルデ族。二つの部族は長い間対立してきたが、それぞれの長が政略結婚して終結を図る。しかし幾人の想いの交錯によって早々うまくいかず――。
なんと素晴らしい愛と誇りの物語でしょうか。
閉鎖された僻地、凍て付いた世界でこその心が灼けつくような想い。そんな「冷」と「熱」の妙なバランスが心地いいのです。
相手を喰ってしまいたいほどの激情の想いというものは、何かドロドロとした粘着性のある展開を想定せざるを得ませんでしたが、この物語はそういうものが一切ない。綺麗なほど、さっぱりした終結。
阻まれる政略結婚に対しフェルビエ族長のアルテシアが取った行動は、フェルビエという一族の誇りを重んじたもので。正直、たとえ一族のためだとしてもここまでするかって感じです。でもミルデ族長のオウガを認めさせるにはそれだけしかなかったのか。
気高い愛と誇りに生きる美しき主の姿を、信仰と言っていいほどルイとトーチカが付き従うのも分かる気がするなぁ。
そして幕間に見せられるアルテシアの叔母・ロージアの過去がまたすごい。
かつては刃を交え、殺陣を組んだ相手を喰らいたいほど愛すその姿。生き様。フェルビエという蛮族。
しかしその先代たちの過去が壮絶すぎて現在の人物のストーリーが霞んでしまったのもちょっとはあります。
それでもルイがオウガに向けた憎しみから恋情への変化や、トーチカがアルテシアに付き従う理由もなかなか印象に残りましたけれどね。余韻を味わせてくれるエピローグも素敵です。
それからイラストレーターさんがいい仕事していると思いました。かなり清廉された挿絵でしたね。
うーん、ちょっと言葉少ない感じになってしまいました。語彙に乏しくてうまくこの物語の感想を伝えられい私が残念だ。
肌に合う人はものすごい合うと思うんですけどね。これは前作も読んでおいたほうがいいかもしれない。
というわけで激情の愛に生きる蛮族の物語でした。超オススメ。
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