イスカリオテ [★]
「レンタルマギカ」「SCAR/EDGE」の三田誠さんによる新シリーズ。
要素的には上記の作品を足して二で割った感じ。全てに共通しているのは燃えるバトルモノだということ。
三田さんは相変わらず戦闘描写は巧いなーと思った。
イスカリオテ (電撃文庫) (2008/11/10) 三田 誠 商品詳細を見る |
七つの大罪を具現する<獣(ベスティア)>。
彼らは地脈の特異点より現れ、人に憑依し、街を蹂躙する。それに対抗するために作られた特別指定教区──御陵(みささぎ)市。
それを倒すための、少女の姿をした第九祭器・ノウェム、そして奇蹟を模倣する──断罪衣(イスカリオテ)。
九瀬イザヤは、兄にしてかつての英雄のニセモノとして、その地に降りたつ──。
これは、自分を騙し、セカイを騙し、騙すことさえ騙そうとする者たちによる奇蹟の物語。
自分も世界も偽り、自由を手に入れる男の物語――。
元は少年院にいた少年が富と自由を得るために、<獣>を屠りしかつての英雄・九瀬諫也を演じるハメとなって御陵の地に着、「断罪衣」に覚醒して<獣>を倒すってもんです。
まあこの一巻では世界観の説明やらキャラの相関、<獣>の強さから「断罪衣」の覚醒まで、磐石を固めるようなものでしたな。
さて主人公のイザヤはあくまで自分のために諫也を演じているわけでして、しかし周りには決して正体をばらしてはいけないのです。特にメインヒロインたる朱鷺頭玻璃には。
彼女が過去に犯した罪、そしてそれさえも周知の事実となったおかげで余計にバレると厄介なことになってしまうわけです。何をしてでもそれだけは防がなければいけない。
それよりももう一人のメインヒロインになりえる自動人形のノウェム。
イザヤの正体を知る数少ない一人であり、イザヤのサポート役として戦闘はもちろん身の回りの世話までやってくれるという、至れり尽くせりな可愛らしいヒロインであります。しかもこのノウェム、機械や人形らしからぬ仕草や表情をするもんですから可愛いのなんのって……この人形笑うぞ!
本当のイザヤは聖人を気取るのに反吐が出そうになるほどの男。言葉遣いも悪ければ態度も悪い。要は問題児。それでもちゃんと諫也を騙れるのはやはり双子だからなのかな。
ノウェムが「逃げないのですか?」と問うてもイザヤが逃げなかった理由は、こんな嘘まみれの世界の中でもノウェムだけが彼を全面的に受け入れたからなのかなーと思います。なんというか、母性溢れる優しさというのでしょうか。こういう面からもノウェムは人形っぽくないんだよね。
こうしたヒロインの魅せ方が三田さんのいいところなんですよね。作風から好きなんだなきっと私は。
そして最後の見せ場は断罪衣に覚醒するイザヤなわけですが、燃えたなぁ。
しぶしぶ諫也を演じているわけですが、しかしなかなか様になっており、かつかなりのカリスマ性を発揮。さすがは双子と言うべきなのか、性格は正反対だけどやっぱり似通う部分はあるもんですね。
一巻からバトル要素8割以上を占めてるので、日常パートを重視したい人はあまり読みづらいかもしれない。
しかしその分三田さんが「この作品はどうしてもこう書きたいんだ!」という情熱が文脈から伝わってくるようでした。本当に異能とか魔法とか好きなんですね。
2巻以降はもっと日常パートから人間関係にも焦点を当ててほしいものです。もちろん、バトルもね。
はてさて期待の新シリーズでしたが、私は難なく読めたので面白かったですよ。ただ好みが分かれそうだ。オススメです。