クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子 [★★★]
戯言シリーズ第3弾。またしてもぶっ飛んだヒロイン登場。そして容赦なく人が死ぬ。
いやはやこのシリーズは全く飽きがこないね。すっかり西尾ワールドに嵌りつつありますよ。
口絵カラーのいーちゃんの女装が可愛いと思ってしまったのは正常なんだろうか。いや、でもアレはアレでいけるんだぜ。
クビツリハイスクール―戯言遣いの弟子 (講談社文庫 に 32-3 西尾維新文庫) (2008/08/12) 西尾 維新 商品詳細を見る |
知らない誰かと仲良くするためには絶対に守らなければならない約束がひとつだけ存在する。
その約束とは、相手に対して常に友愛の情を持つことだ。つまるところそれがどういうことかといえば、知らない誰かと仲良くすることなんて結局は不可能だという意味なのだろう。
いや、そもそも、知らない誰かと仲良くしようだなんて考え自体が常軌を逸しているとしか思えない。
絵空事を語ることさえ自らに許さず、たったひとつの矛盾さえも生理的に見逃すことのできない誠実な正直者、つまりこのぼくは、6月、人類最強の請負人・哀川潤に、およそ問答無用に引き連れられて、高名なお嬢様学校であるところの私立澄百合学園へと向かうことになった。そして事件はその学園の中で起きる。
それは巻き込まれたと言えるかもしれないし、また、自ら渦の中へと飛び込んだと言えるかもしれない。まあ別に、どう言い、どう言いつくろったところで、それはきっと意味がないのだろう。
だって起きた事件自体が、そもそも戯言みたいなものだったのだから――戯言シリーズ第3弾
《ジグザグ》の欺瞞と狂気、首吊高校の惨劇は終わらない――。
というわけで、戯言シリーズ第3弾の感想でございます。
由緒正しきお嬢様学校・澄百合学園――通称「首吊高校」と呼ばれた学校へ、一人の少女を救い出すためにいーちゃんと哀川潤が向かう。そして首吊高校で起こった惨劇とは――。
しかし『クビツリハイスクール』とはまた言い得て妙というか、おっかねえ学校だよホント。いやもう学校じゃなくて収容所って言ってもいい。
女子高と言うのは外見だけであって、その実態は数々の戦闘訓練をプログラミングされている閉鎖的な空間。確かに妙なもので、学校は常に開放されているものだけどいわゆる一種の収容所なんだよね。公的な空間にも関わらず、外からは中で何が起こっているかわからないというところがミソなんですよ。そういうのって学校に限らず実は結構あるんですよね。
さて、それではこのクビツリハイスクールのメインヒロイン、紫木一姫について。
自らを首吊高校の落ちこぼれと呼び、この学園から逃亡を謀る彼女。言語によるコミュニケーションが多少ヘタだけど、素直でいい娘……だったと思います。まあこれが一筋縄じゃないんですけど、これ以上言っちゃうとネタバレのため、読んでない人は是非確かめてみてください。
相変わらず人が死にまくりです。残酷ってレベルじゃねえ。もはや凄惨だ。
《闇突》・西条玉藻も、《策士》・荻原子荻も喋るだけ喋らせて要が済んだらはいサヨナラ。首を切断されたり、全身をバラバラにされたりとまあエグイことよ。
子荻ちゃんは特に好みだったんだけどな……。最後はあんなになっちゃって。。
ところで、子荻ちゃんがいーちゃんの本名を推理する場面。あれで本当に本名が推理できるだろうか。
「じゃあ質問①。あなたのニックネームを、全て教えてください」
「はあ……では次の質問です。名前をローマ字で表記した場合の、母音の数と子音の数を教えてください」
「ふん。なるほど。それでは最後の質問です。《あ》を《1》、《い》を《2》、《う》を《3》……そして《ん》を《46》としてあなたの名前を数字に置き換えます。その総和は?」
以上の質問でいーちゃんの本名をどうやら見抜いたらしいのですが、私にはまったく分からんよ。そもそも最後の質問は《が》とか《ぱ》とか《じゃ》はどうするんだろう。
序盤からは学園でもっとも危険因子とされた《ジグザグ》という名前が出てくるのですが、こいつがまたエグイ。理事長をバラバラにし、職員室に死屍累々の山を築き、玉藻や子荻などの生徒をも手にかける。今回のラスボス的なやつ。
まあ、後半部分から大分正体の予測もついたんだけど、やっぱりアイツだったか。いーちゃんも潤さんも気づいてて、あえて泳がせたのがすごいよ。
《ジグザグ》は人を信じられないがゆえに、人を騙し、人を裏切り、言い訳を並べることしか知らなかった悲しい人間でした。いーちゃんのために泣いてくれたことも助けたことも、全てが演技。いーちゃんに人当たりのよさを演じていただけ。
そしていーちゃんもこれまで言わなかった衝撃の事実を語る。
過去にいーちゃん自身が“壊して”しまった人を《ジグザグ》に投影し、かつて壊してしまったことをやり直したい気持ちに駆られ、だからこそ《ジグザグ》を説得したのかもしれないですね。
「人を疑うことを知らない」「怒ることを知らない」「どんなことでも許す」――そんな聖人君子よろしく過去壊してしまった人間をまるで人間じゃないように語っていたいーちゃんにも黒い部分を感じました。
「胸を張れ、背筋を伸ばせ、自分を誇れ、敵に吼えろ俯くな! 諦めんな見限んなてめえで勝手に終わらせんな! 同情されてーんかガキども! 媚びんな気持ち悪い懐いてくんな、動物かてめーら! 自己陶酔に他人を巻き込むな、悩みたきゃ勝手に悩んでろ、相談すんなお前らみてーな変なんの気持ちが分かるか! 傷舐め合ってんじゃねえぞ妥協すんな! 簡単に否定すんな、難解な肯定すんな! 他のことなんかどうでもいいから自分のことだけは自分で決めろ!」
潤さんがいーちゃんと《ジグザグ》に喝。この啖呵はキタ。
でも潤さんは完璧な人間ゆえ、欠陥を抱えた人間なんて理解できないのかもしれないね。
それこそ戯言なのかもしれないし、潤さんの唯一欠陥部位なのかもしれないし。
面白かった。今回は以前に比べて大分薄いけど、それでも内容は濃い。
しっかし、潤さんの制服姿も新鮮だったけどいーちゃんの女装姿も新鮮だった。良い意味で!
というわけで戯言シリーズ3冊目感想でした。超オススメ!
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