AURA ～魔竜院光牙最後の戦い～ [★★★]
初めての田中ロミオさん。なんというか、またすごい作家さんに出会った気がする。
なんとド直球の学園ラブコメでございましょう。ちょっと曲がってるけど、これは良かったなぁ。
とにかく読み入った。最後なんてすごいハートウォーミングでしたよ。
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その日。教科書を忘れた俺は、夜半に忍び込んだ学校で彼女と出会った。
教室に向かう階段の踊り場。冷たい月の光のスポットライトを浴び、闇を見据えている少女。美しい――。そこには、人を惹き付けるオーラを放つ青の魔女がいた。
……いや待て、冗談じゃない。妄想はやめた。俺は高校デビューに成功したんだ！ そのはずだったのに、この妄想女はッ！
「情報体の干渉は、プロテクトを持たない現象界人には防ぐことはできない」「何いってんだかわかんねーよ」
実はだいたい理解できていた。田中ロミオ、学園ラブコメに挑む――!?
それいけ妄想戦士！ イタい過去なんて吹き飛ばせばいいっ！
まず一言、これは私的にかなり面白かったです。
とにかく主人公の佐藤一郎の語りには同意するところが幾多もありましたゆえ。
マンガやアニメのキャラに憧れて、自分なりの設定を考えてそのキャラに体の芯からなりきる、いわゆる妄想戦士（ドリームソルジャー）。そんな痛い過去を持つ一郎は中学でそれを卒業し、高校デビューしたはずだったのに、同じクラスの現妄想戦士・佐藤良子に振り回されるお話。
皆が皆かは分かりませんが、マンガとかアニメのキャラの必殺技とかマネたことありません？
私の世代だったら「ＯＮＥＰＩＥＣＥ」のサンジの足技だったり、「ＲＡＶＥ」のハルの爆発の剣だったり、「スレイヤーズ」のリナの竜破斬だったり。
ファンタジーにしか存在しない、現実では「ありえねえ」というような必殺技の数々を身振り手振りで演じていた時期が私にもありますよ（マイ設定とかはさすがにないけど）。この本の妄想戦士たちとそう変わりません。
そんな妄想戦士たちが半分を占めるクラスとか……ものすごい痛い連中ですね。しかも自分が元そういうのだって考えると、なんか心を抉られたようでしたよ。
その妄想戦士の一人であり、メインヒロインの佐藤良子。
彼女は自称「魔女」で青いローブを常に着衣し、一郎以外の人からは「見えない」設定になっている痛い子。もちろん他人から何を聞かれようがガン無視ですよ。ガン無視。教師もその例外ではないところが、もう本当になりきってる感じ。まあ妄想戦士たちは重度まで行くと、そういうマイ設定が「本当の自分」と信じてやまないですから。
しかしですね、そんな演技の中にも時折見せる感情の揺らぎにはグッとくるものがありました。
それにしてもクラス内でできる各派閥――いわゆる仲良しグループの出来方とか、最初の席替えの重要さとか、最初は馴染んでいたのに「そっち系」だって分かった瞬間サーッと離れていく元友人とかは変にリアルで「ですよねー」と同意できるところが色々。なんかイケメングループと可愛い女子グループって自然にリンクできるように世の中できてるんですよね。とにかくそういうリアルな描写に田中ロミオの凄さを感じた。
そんなクラスの半数を占める妄想戦士たちのリーダーとして祭り上げられてしまった佐藤一郎。
彼の目指していた「普通」は見事に打ち砕かれ、あろうことか存在自体が浮きまくってる良子の世話係まで命じられる始末。
いやもうなんか彼の苦労がまたすごいのよ。でもね、ラストに行くほどカッコいいんだ。
良子の内面の弱さを知った彼が取った行動には、思わず「きたあああああ！」と叫んでしまうほど。言うなれば、痛カッコいいっ！
文句なしで面白かったです！ これぞ青春！ 「これラブコメ……？」って問われるとちょっと戸惑うけど！
最後の展開には思わず笑ってしまいました。このクラスの一般人はどこへ行った。
そして良子可愛いよ良子。電波でも可愛いならいいじゃないっ！ 超オススメ！
