

ぶよぶよカルテット [★]
なんというか、音楽を題材にするラノベってのは自然に引き込まれてしまうのですね。『さよならピアノソナタ』とかいい例。
たぶん続刊はないと思うのだけれど、これはこれで一冊の本としては十分楽しめたわけで、ちょっとえっちぃところもあったんだけどそこを差し引きしても良かったです。まあ作者さんが本来美少女文庫系の人だからだろうけど。
![]() | ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1) (2008/06/20) みかづき 紅月 商品詳細を見る |
夢はとびっきりの、ぶよぶよしたアルペジオ!
希代の変わり者な作曲家エリックサティ。彼に憧れた貧乏な音楽少女「音城トリル」と、そんな彼女の目指す音楽の追求に巻き込まれた少年の、笑いあり涙ありの、楽しく愉快なミュージックラブコメディ、ここに開演。
天才と変人は紙一重! それでもぶよぶよしとけばいいじゃないっ!
天才音楽家で校内でも一、二を争う美少女なのに、やること成すことの奇行っぷりで変人のレッテルを貼られてしまった音城トリルに妙に気に入られてしまった主人公の地梨琢己。
最初は変人と有名なトリルを警戒していたはものの、一緒に音楽に取り組むうちに打ち解けていくという物語であります。まあその紆余曲折の内で色々な壁にぶつかっていくのですが。
変人と校内で謳われるトリル先輩ですが、音楽に対してはすごくマジメで純粋で、自分が音楽に対する信念とかを決して曲げない人なんですよ。サティへの偏愛もそこに出てきているんじゃないかな。
音楽を理屈とか論理とか考えないで、まさに自然体で感じ取って心から音楽を楽しむトリル先輩の生き様と天真爛漫な笑顔はすごく印象的でした。
一度は音楽を手放した琢己はトリル先輩と過ごすうちに、現在プロで活躍中の七瀬凛音との仲もだんだん昔の通りになってくるだけど、そんな双方の天才に囲まれて自分の力量の限界を知って距離を置いてしまうところがすごく切ない。決定的になったのは真里亞先輩のとある一言。
物語はそこではい終了ではありません。
音楽技能とすればプロレベルのトリル先輩と凛音ですが、互いにいがみ合う犬猿の仲。
そんな二人のとある事情を知った琢己は真里亞先輩に協力を頼んで、ある決心をするのですがそこからの展開がまあ素晴らしきことかな。
天才には天才にしかできないこと、凡人には凡人にしかできないことがあるんです。
そうしてできた一つの演奏は、琢己の言葉を借りるならばもう言葉にできなかった。最後はみんなで大団円でよかったなぁ。
音楽面の素晴らしさもさることながら、人と人の繋がりだとか感情だとか距離感だとかそういうのも鮮明に描かれていましたね。
うんやあ楽しい読書でした。トリル先輩可愛いよう。オススメです。