

“文学少女”と慟哭の巡礼者 [★★★]
“文学少女”もこの巻で一区切りって感じなのかな。
いよいよ、所々で仄めかされていた心葉と美羽の過去に向き合っていきます。伏線回収と言ったところ。
やばいなホントこのシリーズ。陳腐な表現で申し訳ないけど、本当にすごすぎる。
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もうすぐ遠子は卒業する。それを寂しく思う一方で、ななせとは初詣に行ったりと、ほんの少し距離を縮める心葉。
だが、突然ななせが入院したと聞き、見舞いに行った心葉は、片時も忘れたことのなかったひとりの少女と再会する!
過去と変わらず微笑む少女。しかし彼女を中心として、心葉と周囲の人達との絆は大きく軋み始める。一体何が真実なのか。彼女は何を願っているのか──。
“文学少女”が“想像”する、少女の本当の想いとは!? 待望の第5弾!
明かされる心葉と美羽の真実。そして美羽の望むものとは――。
いよいよ美羽との過去に決着がつきます。ここいらで一区切りって感じですかね。
ホントもう今までの伏線が次々に物語へ収束して、その完成へ導く過程と構成には驚きました。
最初は初詣の心葉とななせちゃんのやり取りにニヤニヤして、「え、いつの間に?」という関係になっていたことに驚きました。いつかはまあそうなると思ってたけどこれは不意打ち。いやいや、微笑ましいじゃないですか。あのツンツンななせちゃんをオトしたということですね、やるな心葉くん。
と思ってニヤニヤしていたのも束の間。
ななせちゃんが入院したと聞いて、病院に行ったら今度は美羽との再会。ここからずっとシリアス。
イラスト化となった美羽はなかなか可愛かったですが……これが卑しい女の子。でも驚くほど透明な女の子。
中学二年のときトリップ状態の美羽はなんかもう見てられないほど痛々しくて、それでも純粋で心葉のことを大事に思っているんですよ。
最初はその横暴さにかなりイライラしてたんですが、美羽の過去を知っていくごとに、なんだか極端に憎めない存在に。だってあまりにも辛すぎるんだもの。
一方の心葉。
知らずに美羽への好意を伝え続け、それに逆らうような行動――小説を投稿したこと――を取ってしまい、それが間違ったことだったと気づくに遅すぎて。美羽が再び病院の窓から身投げしてしまうときの心葉の心情がもうすげえ切なくて痛々しくてたまらない。
ななせちゃんの言葉も、芥川くんの言葉も、心葉の過去への思いに届かない。
それだけ美羽の好意を受け入れて付き合っていこうと覚悟してたんでしょうか。だとしたらななせちゃんが不憫すぎるだろう。しかもななせちゃんは健気すぎるし。
「……あたしは、誰かを、幸せにできる人になりたかった」
そしてプラネタリウムでのラストシーン。遠子先輩もうホント素敵すぎる。
なんか言葉に出来ないほどすごかった。美羽の本当の思いとか知ったときは、いつの間にか涙なんか出ちゃっててもう感動ってもんじゃない。
ああもうそろそろ完結だなぁとしみじみ思います。そして物語の最後に気になる一文が。
おおっと、またの新展開に期待です。心葉はもうケリがついたから、いよいよ遠子先輩か。
もう最高! 「読んでない人は損してる!」って言いきれるほど素敵な物語でした。超オススメ!
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