ベン・トー サバの味噌煮290円 [★★]
また思い切ったタイトルだなと思いつつ、読んでみるとまあバカな内容だなと。もちろん良い意味で、ですよ。
コメディ一色なんですが、笑いも含みつつ熱いお話でもあります。「マジメにバカらしいことをすると逆にカッコよく見える」というアレです。
『バカとテストと召喚獣』ぐらい、いやそれ以上笑えたかも。ということで感想。
ベン・トー―サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫)
ビンボー高校生・佐藤洋はある日ふらりと入ったスーパーで、半額になった弁当を見つける。
それに手を伸ばした瞬間、彼は嵐のような「何か」に巻き込まれ、気付いた時には床に倒れていた。
そこは半額弁当をめぐり熾烈なバトルロワイヤルが繰り広げられる戦場だったのだ!
そこに現われた美女が佐藤に告げた言葉は…。庶民派学園シリアス・ギャグアクション、開幕!
己の誇りと命を賭して戦え! 全ては半額弁当獲得のために!
バカなんだけど、それだけでは終わらない面白さが確かにそこにありました。ラノサイ杯にも推した作品ですからね。
いやはやこの壮絶な弁当争いは読んでて中々熱くなつものがありました。 作中で名前の出てこない顎鬚や茶髪でさえ弁当争奪戦への誇りの高さを示してくれます。
主人公の佐藤洋くんも最初は興味本位だったのだけど、共に戦う仲間である白粉花と「HP(ハーフプライサー)同好会」の「氷結の魔女」と呼ばれる槍水仙先輩から戦の教えなどを享受され、その中で徐々に『狼』として成長する過程はなかなか素晴らしい。
「魔導士」の先輩もすげえカッコいいんですよ。言ってることは半額弁当のことなんだけど。
そしてなんといっても半額弁当! ただの売れ残り商品なのに、この人に書かせると高級フランス料理より美味そうに思えるから不思議。そんじゃそこらのお料理本と一緒にしてもらっては困りますぜ。
さて、熱いお話もこの「ベン・トー」の良さでもあるのですが、なんといってもギャグ路線。何度笑ったことか。
というか登場人物がみんなちょっとネジの一本でも飛んでるじゃないかってくらい。ちょっと軽く紹介してみます。
「温かなソイジョイによって僕が真のジャズマンとなり、今、幸せに包まれながら生涯を閉じたんだ」
「あの仰っていることが荒唐無稽すぎて、意味が分からないのですが」
「ハハ、まさかうちの親父じゃあるまいし」
まず主人公の佐藤洋。上のセリフで超爆笑。それなりにまともだと思ってたのに序盤から崩れました。
自分の世界にこれ見よがしにトリップする模様。これでも主人公です。
「四ってもう四回もやられてんのかよ!? 『筋肉刑事5』ってあったな、ってことは何か、一本ごとに僕は一発やられているのか!?」
「一人一発とは限りません!」
「お前どんだけ僕を辱めているんだよ!?」
続いて準ヒロイン(?)の白粉花。ライトノベル作家を目指す彼女ですが、かなり危ない嗜好の持ち主であります。
ちょっと目だたない子なのかと思ったらマッチョ萌えなガチムチ好きです。BL? そんな生温いもんじゃねえ!
強烈なインパクトです。できればそうなった過程をいずれ書いてほしいほど。
「ふざけていますよね? 怒っていいですか?」
「ダメって言ったら?」
「それでも怒ります」
「いいよって言ったら?」
「もちろん怒ります」
ヒロインの中で一番ツボった白梅梅さんです。決して「バイバイ」なんて言ってはいけません。
「怒ります」がもう口癖レベルのクールビューティーな彼女ですが、やることはすごいです。洋の制服を表情一つ変えずに剥いだところはもう笑ったってもんじゃなかった。
あと作中でセリフは出てきませんが、石岡くんの変態レベルもすごいです。そこは本編をご確認ください。
以上でなんかもう半額弁当に全てを捧げる槍水仙先輩が一番マトモに見えます。
いや、面白かった。盛大に笑った。これは続刊にも期待が持てます。
まだまだ今後の動向も気になるところですね。
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