神様のメモ帳8 [★★★]
神様のメモ帳〈8〉 (電撃文庫) 杉井 光 岸田 メル アスキー・メディアワークス 2011-09-10 売り上げランキング : 225 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
年末年始、四代目を悩ませていたのは頻発する雀荘荒らしだった。なぜか麻雀打ちとして駆り出された僕は、雀荘で奇妙な男と出逢う。雛村玄一郎――なんと四代目の父親!
緊迫する親子勝負の裏で、雀荘荒らしをはじめ、無関係に見えたいくつもの事件が結びついていき、やがてよみがえるのは一年前のあの悪夢。
「あの事件をもう一度、完膚無きまでに終わらせるんだ」
アリスが、テツ先輩と四代目が、そして彩夏までもが、赤い悪夢の残り滓に突き動かされて走り出す──。加速するニートティーン・ストーリー、第8弾!
再び町に現れた天使の姿を借りた悪魔、エンジェル・フィックス。
1巻の内容を下地に、この巻は動いています。この麻薬によりナルミの周りだけでもたくさんの人々が傷つき、なかには天使に魅入られて帰ってこなくなった人もいました。そして、それによって体をボロボロにし、以前の記憶までも失った彩夏の目に触れぬよう、必死に隠し通そうとしたナルミたち。
四代目の両親のことからいきなりこんな展開になったときは正直びっくりしましたが、それでもうまく無理なく話を運んでいくところはさすがの杉井先生。オチも今度こそハッピーと呼べるものだったし、この独特の読了感がやっぱりこのシリーズの魅力なんだよね。
そして、彩夏のことです。
1巻のことを考えると本当に胸が苦しい事件でしたし、もう彩夏もこのまんまなのかなって思ってたらこれですよ。でもナルミたちがとった行動もわかるし、むしろ当然とも言えるけど、すべてを踏まえた上できちんと向き合ってくれたこと、そしてひとりで痛みから隔離されることよりも、みんなで痛みを分け合うことを選んだ彩夏に、なんか無性に感動してしまった。なんか肩の荷が下りたというか、背負っていた罪を許されたみたいな錯覚を覚えた。この巻の魅力はほんとうにそこに凝縮されていました。
これを機に彩夏がヒロインのひとりとして返り咲くかはわからないけど、それでもこうしたかたちに収まってくれて嬉しいと思うくらいには彩夏には思い入れがあったのでとてもよかったと思ってます。
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