全滅なう [★★★]
全滅なう(仮) (一迅社文庫) 十文字 青 ま@や 一迅社 2011-08-20 売り上げランキング : 13339 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
優等生で学校でも評判の天川立己は、不登校の大日向夕鶴子を登校させようと画策する。
次第にクラスメイトと打ち解けていく夕鶴子。そんな夕鶴子の変化に戸惑う立己。
思いがけず知ってしまった夕鶴子の秘密――。
どこか不思議で、もどかしいのがくせになりそうな青春ラブストーリー。
最初に言っておくと、めちゃくちゃおもしろかったです。十文字青はこれだからやめられない。
基本的に十文字青作品の主人公は「いつも心に剣を」「絶望同盟」などからわかります通り、ネガティブ思考というか妙に鬱屈しきった感じで、やるせなさや己の無力さなどを通じて徐々に読者へフラストレーションを溜めていくことが多いのですが、この主人公はいつもと違いました。多くの友達に恵まれ、主人公は育ててくれた家族に楽をさせてあげたいという至極真っ当な感情を持ちあわせています。
普通だ。普通すぎる……ではこの作品の魅力とは? 答えは恋でした。
初恋という誰しもが通ってきた道。初々しく、たどたどしく、もどかしい、まだそれが恋だと自覚していないあの感情が、作者特有の文筆でつづられていきます。好きな人のひとつひとつの仕草、表情、言葉に至るまで、すべてが愛おしく感じられる浮き足立つようなあの陶酔感となんでもできそうな気がする高揚感が、この作品で味わえることができました。なんとも懐かしい感情だっただろうか。
そんな男子の視点でおくられる物語ですから、ヒロインである夕鶴子のかわいさもハンパないくらい書かれてます。すごく守ってあげたくなります。そしてとある「いわく」を抱えた彼女が最後に取った行動に、ぜひ悶えていただきたいのです。私はとても心がドキドキしました。
シリーズではないので単発です。ちょっとだけ幸せになれる物語なので、ぜひお手に取ってみてください。
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