花物語 [★★★]
花物語 (講談社BOX) 西尾 維新 講談社 2011-03-30 売り上げランキング : 2 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
阿良々木暦の卒業後、高校三年生に進級した神原駿河。直江津高校にひとり残された彼女の耳に届いたのは、“願いを必ず叶えてくれる『悪魔様』”の噂だった……。
<物語>は、少しずつ深みへと墜ちていく──。
自分で思う自分と、他人が思う自分は必ずしも一致しない。むしろ一致する方が珍しい。
それと同じで、個人の善悪は他人の解釈によって大きく意味を違える。そんなお話だった。
前回のSF臭から一転、なんだか急に辛気くさいお話になったこの花物語。
それでもなんだか久々に「ああ、西尾維新だなあ」って感じがした。特に沼地蝋花というキャラが。
不幸の蒐集家と自称する彼女が歩んできた人生で構築された人間性は、元スポーツ選手とは思えないほどひどくゆがんでいて、共感もなにもあったものではない。あらゆる手段で他人の不幸を聞く。おもしろおかしく興味本位で相談に臨む。ただし、自分よりも「かわいそう」な不幸は好まない。
まあでも、共感は決してできませんが、言っていることの一部はちょっと頷きかけたところもありました。この沼地蝋花はちょっと行き過ぎてるところはありますが、ある意味人間の後ろ暗い部分に関しては人間味に溢れています。そんなんでいいのか。
バスケという繋がりがあって沼地蝋花と再会した神原。
ある意味自分とは対極的な存在である沼地。そんな彼女の経緯を聞き、募る思い。
自分を散々戒めてきた「猿の手」が沼地に奪われたことにより、結果的には彼女に助けられる形になった神原は、どこかしっくりこない思いでした。自分が助かることで誰かがそれを背負ってしまうことを許せない性分の彼女です。たとえ相手が因縁の沼地蝋花でもそれは同じ。
その決着のつけかたがまた良かった。たしかにこれは元バスケ部同士じゃないとできない。
お互いに認め合ってるからこそ、ここまで対立したんですよね。このぶつかり合いを青春と呼ばずしてなんと呼ぶのだろう。宿敵とぶつかり合ったことで、自分と向き合うことができた神原と沼地の対比がおもしろかった。なんだかんだでいいコンビだったのかもしれない。ライバルと言ったほうがいいか。
あと、沼地蝋花は個人的に結構好きだったりします。ビジュアルが見れなかったのが残念でしたが。
おもしろかったなー。化物語第二部で一番好きな話かもしれない。
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