空色パンデミック3 [★★★]
空色パンデミック3 (ファミ通文庫) 本田 誠 (イラスト)庭 エンターブレイン 2010-08-30 売り上げランキング : 1379 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本当の空想病患者は誰なのか。漠とした疑問を胸に、僕は不確かな日常を過ごしていた。そんなある日、僕の感染事例に興味をもつ米国研究所長が来日した。面会すると……え? この少女が所長? 一方、数日後に控えたクリスマスの準備中、結衣さんに1冊の本を渡された。"空想病"を題材にしたその小説に、僕はなぜか違和感を覚える。思い返すと、その時からだったんだ、僕の世界が崩壊を始めたのは──。狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」第3巻。
すげえ。なんだこれ……あまりにもすごすぎて言葉がうまく出てこない……。
でもこれはたしかにライトノベルでしか成し得ないことだよなあ。まさか「空色パンデミック」メタがくるとは思ってもみなかったよ。そしてあのあとがきも――結衣さんの存在が決して空想なんかではないと確信させるメッセージ――がとても心に響いた。
いままでの設定やライトノベル全体の常識を覆すような展開と技法で再び作られるセカイ。
仲西景とは中野空の産物であり、「空色パンデミック」に登場するキャラクターに過ぎないことを告げられる景。結衣さんも、青井くんも、森崎も、今井さんもすべてが空想の産物。肌で感じてきたはずのセカイは終わりを来し、構築と崩壊を繰り返す。なにが現実で、なにが空想? 仲西景とは本当に空想の産物? 中野空の空想病によって作られた妄想?
常時景によって語れる一人称すら信じきれなくなってくる不安感、焦燥感が私たち読者にも鮮明に伝わってくる。けれど彼がその都度感じている、この文面で綴られている想いだけはきっと確かなものなんだと思いました。根拠はないけど、あの結衣さんの書いたあとがきが、そんなことを示してくれているような気がして、とても胸が熱くなった。
そう、どんなに物語を覆したって作り変えたって、景が結衣さんに馳せる想いは絶対に不変なんだ。だから信じられるのかもしれないし、こうしたエピローグを含んだハッピーエンドを期待できるのかもしれない。
それでいて、落とすところがやっぱりこれなんだなあ。
あとになってわかると、事がものすごい単純明快でぽかんとさせられてしまう。でも逆にこの作品はこのオチ以外をやってはいけないんじゃないだろうか。やったら、それはもう結衣さんと景の結びつきがなくなってしまう気がする。いつだって景は結衣さんのナイトなんだから。だからこそ、二人の信頼関係がとても羨ましい。
答えがわからない未来、それはこの先にきっと見つかるかもれない。そうでないかもしれない。
でも、二人が互いを信じる限り、そんな心配は杞憂かな、と少し安心できる。
しっかしまあ結衣さんがメインヒロインのはずなんだけど、やたら青井くんプッシュするな。
いや私的にはそれはすごく嬉しいし、なんかもう挿絵とか自然に女の子女の子しててとってもかわいらしいじゃないですか。まあ本当は女の子だから当然なんですけど、なんともいえない魅力がありますね彼……いや、彼女は。もっとコスプレしてもいいのよ。
もうここまでやられると次がまったく予想できないのですが、果たして。
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