いつも心に剣を5 [★]
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暗黒騎士となりはてた父を倒し気を失ったレーレが目を覚ましたのは魔女の砦だった。ユユの献身的な看病により、一命を取りとめたレーレ。しかし、容赦なく魔女たちが問い詰める。魔女討伐隊の一員として多くの魔女と魔王と倒したレーレに残されたのは「死」のみ。だが、魔女ルチアが異論を申し立てて--。レーレに未来はあるのか。ユユと共に道を歩むことはできるのか。人間が、魔女が、心の底から愛し必要としていたものは実はとても近かったのかもしれない……。衝撃の最終巻。---「帰らないと。ユユのところへ」---
完結、なのだが……こうも凄絶なラストになるとはだれが予想しただろうか。
だれも浮かばれない上に救われない。ラストの余韻にはどれだけの意味が隠されているのか、それは知る人ぞ知る。というか余韻に浸ると絶対しょぼんってなるよなこれ……。
これも主人公とヒロインによる、ある種の「共依存」モノであるがレーレの行動は最期まで一貫とし、逆にユユの心境や行動には一定の振幅が存在していたと言っていい。前回でユユが死んだと思い込んだレーレがその生きる目的を失ったのちにその生命を奪ったやつら(魔女サイド)に復讐の牙を振るい続け、しかし4巻終盤からこの今巻に至り魔女の一員となったユユが生きていることを肌で感じると、その生命を脅かすやつら(人間サイド)をいとも簡単に裏切り虐殺の限りを尽くす。最初から最後まで心の剣にユユしか映さなかった一匹のケモノを、純粋だと賞賛するか狂っていると慄くかは読者次第ではある。
ユユもユユでレーレが死んだと思い込んだのちにも幾多の苦難を乗り越えたが、再会を果たすとやはり優先事項はレーレに他ならない。傷だらけの精神を癒すかのようにレーレにすがる。
お互いに強く求め合い、想い会い、二人の絆はこれ以上ないものになったはいいものの、しかし二人を取り巻く環境はそれを断固として許さない。それでも生きていかなければならない二人が求めた先が、行く末が、あれだというのか……。
とにかく、すごくきっつい展開だったことは覚えている。
最期は美しいとは言わないが、二人の瞳に映った世界はどのように見えていたのかは、読者が想像するしかないんだよな。とにかくこの暗鬱とした世界を叩きつけられたのが読んでいた現状だったわけで……。
剣と、血と、絆の十文字青流異世界ファンタジー、これにて閉幕であります。
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