空色パンデミック1 [★★]
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「見つけたわよ、ジャスティスの仇!!」「……はい?」高校受験の朝、駅のホームで僕はその少女と出逢った。彼女──結衣さんは"空想病"。発作を起こすと正義の使者とかになりきってしまうらしい。以後なぜか結衣さんは何かにつけ僕の前に現れる。空騒ぎに付き合ってられない。最初はそう思っていた。彼女を守るため世界を敵にまわして戦うことになるなんて、思いもしなかった──。えんため大賞優秀賞受賞、狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」。
すげえ。これはすげえ。今年の新人でいまのところダンチで面白い。
いやもう下手すれば国家間の戦争させ巻き起こす「空想病」という設定のひとり勝ちと言わざるをえない。というか厨二病や人の黒歴史設定とか差し置いて一つのボーイ・ミーツ・ガールの体裁がしっかりこなされていて読みに飽きがこない。それでいてオチはかなり予想外の方向へ行ったが、ただこのオチは賛否両論だと思う。私的にはべつに気にならなかったけども。というかこういうオチじゃないと逆に違和感あるとおもうんだけど。
さてこの「空想病」という名称からして痛々しい病名ですが、まあ文字通りそういう要素だらけです。公衆の面前にもかかわらず自分をなんらかのゲームやアニメの主人公だという「物語」に没頭してしまい(もちろんそこに社会の秩序や常識なんてのはない)、その「物語」を早急に完結させないと他人を巻き込み被害がおよぶという、一見すると危険だかそうなんだかわからない病気だと思いますが、この設定がなんとも巧い。物語的な意味でもキャラの造詣を深める意味でも。
かの病気にも種類があって自分だけで終わる自己完結型、他人も巻き込む劇場型、そして罹患者同士がぶつかり合って発生する世界をも巻き込む規模の妄想劇が始まってしまう天地創造型があり、ヒロインである結衣が劇場型の罹患者。しかもこの病気、発病している間のできごとは全て覚えているという羞恥プレイをしたあとのようなやっちまった感のオプション付きである。このヒロインと出会って主人公が徐々に「空想病」という厄介な病気に絡んでいくことになります。
いやしかしこんな大変そうな設定を踏まえた上でよくここまできれいにお話をまとめたなあという印象でした。こういうデカい設定って、たいていはキャラが薄くなりがちなんですけど、この物語においてはそれはないと言ってもいい。むしろこの設定の上でキャラをきちんと描いていたことに好感さえ覚える。各キャラがいかにして「空想病」に絡んでいる切り口から背景にいたってまで。
最後まで主人公である景視点の物語であったけど、なかなか熱く読ませてもらった。結衣さんってかなり迷惑なヒロインだと思うんだけど、やっぱり慣れなのかな。いやでも景はちゃんと結衣さんを支えてあげたいと思っているし。
女装少年であり真ヒロインである青井くんの活躍もたくさんあったし文句ないっす。しかも2巻だと表紙もらえてるじゃない……。
設定はアレだけど、とてもキレイなボーイ・ミーツ・ガールであり青春モノでありました。好物。
きれいに終わっているのにナンバリングされてて、やっぱり今月2巻でるけどこの作者さんの器量なら2巻も楽しみに読めそう。これは超オススメ。
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