ながされて藍蘭島第7話前編 にゃんだってお師匠様
南のぬしの決定戦に、行人とすずは猫チームで参加。背景は相変わらずすごく綺麗。キャラも動きはいい。アニメとしては出来がいいはず。だけど、なんか…おかしい。何かが決定的に違う。何だ?
とりあえず今回の原作(第13話・第14話)を読み直すと、違和感の理由のいくつかに気づきました。
- 東方院行人が超うざキャラになってる
- これがたぶん、ぼく的に一番重症。制作者の行人イメージとぼくの行人イメージが完全にずれてる。行人ってこんな「ちょっと挑発されただけで激しくキレるガキ」じゃなく、「時には熱くなるけど基本的にクレバーで落ち着いたキャラ」というイメージだった。
- 月日を示す要素がカットされてる
- 藍蘭島の原作ってよく読むとぜんぜん日数がたってなくて、「1話ごとに数日進む」ぐらいの感覚。ぼくが原作を読む時は、たまに出てくる「島に来てからの日数、以前のお話からの日数」で、心理状態の変化や過去のエピソードを思い描く事が何度かありました。各エピソードも微妙に中長期の時間軸に支配されており、「ながされて藍蘭島は、本来はエピソードの順番をあまり入れ替えるべきじゃない漫画」です。ところが、アニメは原作とかなり順番入れ替えてる。よって「行人がこの島に流れ着いてからの日数」を特定する台詞が全部切られてる。
- 藍蘭島の由来を特定するエピソードが全部カットされてる
- 原作では「藍蘭島は人間が流れ着く前から存在しており、昔から動物が知性を持っていた」様子が書かれている。アニメではすべて削られている。藍蘭島は原作以上に「なぞの島」となってます。
- 犬の長がしゃべってる!
- 第5話「さがして、くまくま」で「藍蘭島の動物は日本語をしゃべってるわけじゃない。だけど、藍蘭島で暮らしていると動物語がわかるようになるんだ!」と定義したせいか、原作では「しゃべれなかった」犬の長がフツーにしゃべってます。なので、まちとあやねの登場パターンが変更に。
…というか、話の大枠は同じだけど全体的なストーリーの流れがかなり変わってる。「犬の長をしゃべれる事にした」ために、玉つき的にまちとあやねの登場を削らざるを得なくなり、結果として細かいエピソードのかなりを変更しオリジナルストーリーを入れた、という感じ。「藍蘭島の陸生脊椎動物は、とんかつ以外はみんなしゃべれるんだ!」という定義、本当にいいのかなぁ? 後々修正しようがない矛盾が起こるんでは…。といってもまぁ2期3期はなさそうなのでいいのか。
(07/06/01追記:原作で行人が動物の言葉が理解できるようになるのは、「人間と動物が入れ替わる」という話以降っぽい。この「言語理解の過程」は原作でも明確に語られてたわけじゃないようなので、アニメでもこだわるポイントじゃないようです)
- トラップにしかけたバナナの皮が小さい
- アニメオリジナル展開部分のミス。制作スタッフが「藍蘭島では、食用植物が巨大化している」という基本設定を忘れたようです。いや原作の別の巻で「小さい食用植物」が出てたかもしれないんで確証はないんだけど。
島は大きく4つのエリアに分かれ、各地域に「ぬし」がいる。すずのお師匠様(猫の長。今の南のぬし)の手伝いとの事で、年に1度の「南のぬし決定戦」に猫チームとして参加する行人とすず。犬チームにはまちとあやねが参加し、まち×行人、あやね×すずが対決。最後は、猫の長の奇策により猫チームが勝利。
ながされて藍蘭島第7話後編 みたくって、さくら
今回は2本立て。後半は原作14話より。ただ、「原作の1話を30分アニメにすると間のびする。原作の2話を30分アニメにすると時間が足りない」ようで、前半同様かなりのエピソードが削られてます。
原作の微妙にだれた部分(ツチノコ登場とか)はばっさりカットし、くじを引く際のミニエピソードや行人が崖から突き落とされるシーンの作りかえなど上手な演出を入れてるので、前編よりはいい感じになってる。
ただ、原作で印象深いエピソードがいくつも切られてしまってる。
まず、原作で結構笑いのツボだった「まちが行人の体の上で飛びはねて行人が悶絶するシーン」がカット。で、代わりに入れたのはまちのホラー描写&行人の「座敷わらし?」というセリフ。アニメ第4話で「幽霊を一切認めなかった」行人が、寝ぼけているとはいえ島に流れ着いて大して時間がたってない今の段階で「座敷わらし」なんて言うはずないと思うんだけど…。
おはな(アニメ第2話で出てきた、巨体の女の子)、しずく、ややあたりの事もすべてカット。30分アニメでキャラ出しすぎたら混乱するのはわかるけど、こういう地道な積み重ねで生き生き感が出てくるんだけどなぁ。
ゆきのの肩車エピソードが削られ、北のぬしの登場タイミングが大幅変更になり、北のぬしがえらく耽美な声になってる(もっと渋くて重々しい声を想像してた)。
しかし何よりも問題なのは、梅梅(メイメイ)の登場シーンが全てカットされた事!!! マジ? ここで出さないってどういう事…?
これは、原作では「花見に行ってから約2週間後に梅梅が顔見せする」と明確に決まっているけど、アニメではそこまで厳密にやる気がないんじゃないかな、と推測してます。ただ、「元」北のぬしが隠居した事を語るシーンまで削ると、後々に致命的な矛盾・意味不明感を生じる危険性があるため、残したものと思われます。
「新しいキャラの登場を予感させる伏線」が「なんだかよくわからないけどたぶん伏線」になっちゃってますけど。
北の岬にある桜を見に行くみんな。北のぬしに見つからないよう、3つのグループに分かれて向かう事に。行人はワナにかかってまちと一緒のグループになり、苦労しながら進むはめになる。結局北のぬしには見つかってしまうが、「元」北のぬしはすでに何者かに破れ、隠居の身となっていた。
しかし、原作のインパクトのあるエピソードをいくつも削ってまで、「みんなが協力して、川に橋をかける」という微妙なオリジナルエピソードを入れ、桜の描写にものすごく手間と時間かけた理由がいまいちわかんないんですよね。
このアニメの問題は、結構重症かも
絵は綺麗、キャラもよく動く。原作の大枠はなぞっている。原作のだれた部分はカットしている。原作に比べて派手でわかりやすいアクションも入れてる。最後の「イルカに乗ってみんなが村に帰る」シーンあたりも、手を抜こうと思ったら「止め絵ほぼ1枚」で済ませる事も出来るのに、きっちり動いてる。
つまり、純粋なアニメ作品としてはかなりよく出来てるんですよ。「脚本がまったくダメ」とか「絵が致命的にぼろぼろ」とか、分かりやすく批判出来るポイントがあまりない。理性的に感想を言うと「ハーレム設定を受けいれられるなら、とてもよいアニメ」となる。
なのに、今ひとつ面白くない。だれてる。
瀬戸の花嫁第7話とか、
らき☆すた第6話のイニDシーンみたいな、クセになる面白さがない。原作で感じられたまったりほのぼの感も、微妙に欠けてる。
これってすっごくもったいない。
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