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2011.08.19
こうすれば読書感想文が書ける/今すぐ使える穴埋めシートと構成パターン
「本を読まなくても読書感想文が書ける」みたいな話は(「これをコピペしろ」みたいなサイトを含めて)ネット上にいくらも転がっている。
もう少し心ある人に向けて、「ちゃんと本を読んで、いくらかましな感想文が書ける」方法について書く。
なぜ読書感想文は面倒なのか?
ところで読書感想文に零点はない。
提出さえすれば、どれだけめちゃくちゃな日本語で書かれていてもリジェクト(突き返)されることはまずない。
落とされるとすれば、他人が書いたものをコピペ(丸写し)した時ぐらいだ。
なんとなれば、多くの読書感想文出題者は、何が読書感想文であり何がそうでないかを線引きできるような定義も持ち合わせず、したがって明確な採点基準をつくることもできず、せいぜいが大雑把な3段階評価(優・良・可)をつけるぐらいが関の山だからだ。
読書感想文は、未だに多くのところで「自由作文」的な丸投げをされている。
何のサジェスチョンもなく、課題図書と原稿用紙の枚数だけが提示される。
どう書くか以前に、そもそも何を書いたらいいのか(読書感想文になるのか)すら分からない。
だいたい、あなたが読書感想文をどうやって書けばいいか悩んでいるのは、誰も読書感想文がどういうものか解説も例示もしたことがないからだろう。
これでは当然、読書感想文の書き方など知る由もない。
読書感想文をどう書けばいいかという問いは、それだけを眺めていても、絞り込むだけの条件が明示されていないので答えが出ない。
こうした場合は、問題を設定しなおすのが問題解決の初歩である。
こう問い直そう。
読書感想文をを課す者=読書感想文の読み手はどんなものを読みたいと期待しているのか?
さらに答えやすくするために極端な二択を作ってみる。
次の2種類の読書感想文のうち、より望まれているのはどちらか?
A.あらすじ+「興味が湧かなかった」
B.あらすじ+「おもしろかった」
当然Bの方である。では、Bと次のCの二択ではどうか?
B.あらすじ+「おもしろかった」
C.あらすじ+「これまでの考えを反省した」
当然Cの方である。
読書感想文において期待されているのは、単なる読後の「感想」ではなく、「この本を読んで人生が変わりました」みたいな「読書体験」である。
無茶な要求である。
しかし要求を極端にまで突き詰めたので、目標は明確になった。
読書による「改心」をデザインする
読書感想文では、読書による「改心」を書けばよいことまでは分かった。
しかし大抵の場合、人は本を読んで「改心」なんてしない。
第一、課題図書を読んでいちいち人生が変わっているようでは、読書感想文どころでなくなるだろう。
では、どうするか?
「改心」自体はフィクションであっても構わない。
イージー・バージョンとオーセンティック・バージョンの2つを示そう。
イージー・バージョンは、読書前と読書後の自己プロフィールをでっちあげるものである。
利点(?)としては、課題図書へのアクセスは少なくて済む。
本格派のオーセンティック・バージョンは、登場人物の「改心」をレバリッジにして、自分の「改心」をでっちあげるものである。
読書感想文の課題図書は多くの場合、小説などの物語なのでこの手が使える。ノンフィクションなるジャンルのものも、物語の形態で書かれるので大丈夫。
物語がない課題図書の場合はイージー・バージョンでいくか、普通のレポートの書き方をとる。
読書の使用前/使用後をねつ造するアプローチ
(イージー・バージョン)
読書前と読書後の自分を「比較」する。実際は「比較」したかのようにでっちあげる。
以下の項目について、読書前と読書後の欄を埋めていこう。
本を読みきってから表をつくるのではなく、あらかじめ表は用意しておいて、それを埋めるために拾い読みする。
繰り返すが、この表の内容はフィクションであり、実在の自分とは関係ないことはいうまでもない。
大げさに変化したことにした方が何にせよ書きやすいので、ない変化をでっちあげ、わずかな変化を誇張する。
以下の変化項目のそれぞれについて、きっかけ(に使えそうな箇所)を課題図書の本文から拾っておく。
(読書感想文の大まかな構成)
基礎情報(課題図書のタイトル、著者、物語の状況設定)の説明→この本を読むまでは___と思っていた。
→実際に読んでみて考えが変わった。
→特に心動かされたのは___のところである。
→そこで***(登場人物)は____と考えて___する。その結果___になる。
→この箇所を読んで____と考えるようになった。
→今後も____について考えていきたい
→(あるいは)___するようになった。今後も___という行動を続けていきたい)
→(おしまい)
がっぷり登場人物と絡んで書くアプローチ
(オーセンティック・バージョン)
課題図書を読みながら、次の表を埋めていく/次の表を埋めるために読んでいく。
自分が取り上げたい、取り上げて書きやすそうな人物や行動にしぼって表を作る。
必ずしも主人公を取り上げる必要はないし、すべての登場人物のすべての行動について表を作る必要もない。
一人の登場人物について、物語中のエピソードをいくつか拾い上げ、状況ー行動ー結果にまとめる。
または複数の登場人物について、それぞれの一人の登場人物について、複数の状況ー行動ー結果を拾いあげる。
それから同じ状況で、自分ならどうするかを考えて、表を埋める。
(読書感想文の大まかな構成)
基礎情報(課題図書のタイトル、著者、物語の状況設定)の説明
→私は問題を抱えている
→主人公も同じ問題を抱えている
→主人公はこのように行動した
→私なら同じ状況に置かれたらこんな風に行動しただろう
→主人公はこんな結果を得た
→必ずしもベストの結果ではないが、問題に真剣に立ち向かったことは評価できる
→私も主人公のように__していきたい
→(おしまい)
(関連記事)
・とにかく速くて論旨も首尾一貫する文章の書き方 読書猿Classic: between / beyond readers
もう少し心ある人に向けて、「ちゃんと本を読んで、いくらかましな感想文が書ける」方法について書く。
なぜ読書感想文は面倒なのか?
ところで読書感想文に零点はない。
提出さえすれば、どれだけめちゃくちゃな日本語で書かれていてもリジェクト(突き返)されることはまずない。
落とされるとすれば、他人が書いたものをコピペ(丸写し)した時ぐらいだ。
なんとなれば、多くの読書感想文出題者は、何が読書感想文であり何がそうでないかを線引きできるような定義も持ち合わせず、したがって明確な採点基準をつくることもできず、せいぜいが大雑把な3段階評価(優・良・可)をつけるぐらいが関の山だからだ。
読書感想文は、未だに多くのところで「自由作文」的な丸投げをされている。
何のサジェスチョンもなく、課題図書と原稿用紙の枚数だけが提示される。
どう書くか以前に、そもそも何を書いたらいいのか(読書感想文になるのか)すら分からない。
だいたい、あなたが読書感想文をどうやって書けばいいか悩んでいるのは、誰も読書感想文がどういうものか解説も例示もしたことがないからだろう。
これでは当然、読書感想文の書き方など知る由もない。
読書感想文をどう書けばいいかという問いは、それだけを眺めていても、絞り込むだけの条件が明示されていないので答えが出ない。
こうした場合は、問題を設定しなおすのが問題解決の初歩である。
こう問い直そう。
読書感想文をを課す者=読書感想文の読み手はどんなものを読みたいと期待しているのか?
さらに答えやすくするために極端な二択を作ってみる。
次の2種類の読書感想文のうち、より望まれているのはどちらか?
A.あらすじ+「興味が湧かなかった」
B.あらすじ+「おもしろかった」
当然Bの方である。では、Bと次のCの二択ではどうか?
B.あらすじ+「おもしろかった」
C.あらすじ+「これまでの考えを反省した」
当然Cの方である。
読書感想文において期待されているのは、単なる読後の「感想」ではなく、「この本を読んで人生が変わりました」みたいな「読書体験」である。
無茶な要求である。
しかし要求を極端にまで突き詰めたので、目標は明確になった。
読書による「改心」をデザインする
読書感想文では、読書による「改心」を書けばよいことまでは分かった。
しかし大抵の場合、人は本を読んで「改心」なんてしない。
第一、課題図書を読んでいちいち人生が変わっているようでは、読書感想文どころでなくなるだろう。
では、どうするか?
「改心」自体はフィクションであっても構わない。
イージー・バージョンとオーセンティック・バージョンの2つを示そう。
イージー・バージョンは、読書前と読書後の自己プロフィールをでっちあげるものである。
利点(?)としては、課題図書へのアクセスは少なくて済む。
本格派のオーセンティック・バージョンは、登場人物の「改心」をレバリッジにして、自分の「改心」をでっちあげるものである。
読書感想文の課題図書は多くの場合、小説などの物語なのでこの手が使える。ノンフィクションなるジャンルのものも、物語の形態で書かれるので大丈夫。
物語がない課題図書の場合はイージー・バージョンでいくか、普通のレポートの書き方をとる。
読書の使用前/使用後をねつ造するアプローチ
(イージー・バージョン)
読書前と読書後の自分を「比較」する。実際は「比較」したかのようにでっちあげる。
以下の項目について、読書前と読書後の欄を埋めていこう。
本を読みきってから表をつくるのではなく、あらかじめ表は用意しておいて、それを埋めるために拾い読みする。
繰り返すが、この表の内容はフィクションであり、実在の自分とは関係ないことはいうまでもない。
大げさに変化したことにした方が何にせよ書きやすいので、ない変化をでっちあげ、わずかな変化を誇張する。
以下の変化項目のそれぞれについて、きっかけ(に使えそうな箇所)を課題図書の本文から拾っておく。
読書前 | 読書後 | 引用箇所 | |
知識 | 読む前はどんなことを知っていたか? | 読むことで何を知ったか? | |
思考 | 読む前はどう考えていたか? | 読んでどう考えるようになったか? | |
感情 | 読むことで得た新たな感情は? | ||
疑問 | 読む前に持っていた疑問は? | 読むことで生まれた疑問は? | |
行動 | (変化する前の行動) | 読んだ後変化した行動は? | |
記憶 | (読むまで忘れていたこと) | 読むことで思い出した経験、思い出、記憶は? | |
価値観 | 自分が最も重要だと思っていることは何か? | 読書後、それがどう変わったか? |
(読書感想文の大まかな構成)
基礎情報(課題図書のタイトル、著者、物語の状況設定)の説明→この本を読むまでは___と思っていた。
→実際に読んでみて考えが変わった。
→特に心動かされたのは___のところである。
→そこで***(登場人物)は____と考えて___する。その結果___になる。
→この箇所を読んで____と考えるようになった。
→今後も____について考えていきたい
→(あるいは)___するようになった。今後も___という行動を続けていきたい)
→(おしまい)
がっぷり登場人物と絡んで書くアプローチ
(オーセンティック・バージョン)
課題図書を読みながら、次の表を埋めていく/次の表を埋めるために読んでいく。
自分が取り上げたい、取り上げて書きやすそうな人物や行動にしぼって表を作る。
必ずしも主人公を取り上げる必要はないし、すべての登場人物のすべての行動について表を作る必要もない。
一人の登場人物について、物語中のエピソードをいくつか拾い上げ、状況ー行動ー結果にまとめる。
または複数の登場人物について、それぞれの一人の登場人物について、複数の状況ー行動ー結果を拾いあげる。
それから同じ状況で、自分ならどうするかを考えて、表を埋める。
登場人物名 | 状況 | 行動 | 結果 | 自分なら(行動) | 自分なら(結果) | 引用箇所 |
(読書感想文の大まかな構成)
基礎情報(課題図書のタイトル、著者、物語の状況設定)の説明
→私は問題を抱えている
→主人公も同じ問題を抱えている
→主人公はこのように行動した
→私なら同じ状況に置かれたらこんな風に行動しただろう
→主人公はこんな結果を得た
→必ずしもベストの結果ではないが、問題に真剣に立ち向かったことは評価できる
→私も主人公のように__していきたい
→(おしまい)
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