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2011.08.19
ホッブズ『リヴァイアサン』を3分間で説明する
ホッブズは『リヴァイアサン』という本の中で、国家(やその権力や社会秩序)がどこから生まれるかという謎にひとつの答えを出した。
それも「神様のような人間以上のものがうまく設計したのだ」というご都合主義ではないやり方でだ。
原子論が「自然は運動する原子の集まりだ」と考えるように、ホッブスは社会を人間のあつまりだと考えた。
そして人間の性質からはじめて、人間の集まりで何が起こるか、人間と人間が関わりあうことから何が生まれるかを考えた。
どんな人間にもあてはまる性質は、「死にたくない」という欲望と、「おれが、おれの方が」という欲望を持っていることだ。
「おれが、おれの方が」という欲望は、死ぬまで無くならない。
だから、このままだと、いろんなものを取り合って、人間は死ぬまで争い、どんどん死んでいくことになるだろう。
だが人間には「死にたくない」という欲もあり、そして多少はものがわかる能力もある。
ここから最低限のルールが生まれる。
というより「死にたくない」という欲望が能力を働かせて、死にものぐるいで最低限のルールを「発見」することになる。
〈約束は守る〉とか〈自分がされたくないことは人にもしない〉とか、そういうのだ。
こうした最低限のルールが生まれて、ようやく〈契約〉ができるようになる。
そうして、互いに死ぬまで争わぬために、ある特別の〈契約〉をする。
元になるのは〈代理〉という契約だ。
〈代理〉というのは、本当なら自分がすることを、誰かに代わってやってもらうことだ。
この契約を結ぶと〈代理人〉がやったことは、自分がやったことになる。
さて、「おれが、おれの方が」という欲望は、他人を支配しようという欲望になる。
そして誰もがこの欲望を持っているので、支配されたくないという欲望もある。
誰もが支配したいし、支配されたくない。ある人がこの欲望を満たすと、他の人はその欲望を満たすことができない。
つまりこの欲望は、全員が満たす訳にはいかない。
一度、負けたものも、またこの欲望を満たすために争いを起こすだろう。
世の中の大多数はこの欲望が満たされないままなので、争いの火種は絶えることがないだろう。
では、どうするか?
ある一人の者を、社会の全員が〈代理人〉に指名して、他人を支配することを代わってやってもらうのだ。
この〈代理人〉は社会全員の代理であり、社会全員を支配する。
〈代理人〉がやったことは自分がやったことになる、というのを思い出そう。
このリクツでいけば誰もが〈代理人〉を通して、全員を支配するという欲望を満たすことになる。
だが実際は、全員が支配されている。
国家とその権力とは、こうしたヘンテコな契約によって成立する。
もちろん契約なのだから破棄することだってできる。
人々がそうしないのは、破棄した途端、あの死ぬまでの続く争いに逆戻りするからだ。
そして今や国家が成立している。
国家ができる以前ならせいぜい、人間は他の人間と争うだけだった。
今や契約を破棄すれば(全員が一斉に契約を破棄しない限り)、破棄した者は国家と争う羽目になる。
あるいは国家越しに、束になった自分以外の社会全員と争うことになる。
もう勝ち目はない。
この呪いのような契約のせいで、まともに計算できる者は契約を破棄しないとの予測が立ち、その予測にたってみんなが契約を続けることで、予測した通りのことが実現し続ける。
際限のない人間同士の争いは、国家というみんなが参加する〈契約〉がある限り、止められる。
こうして国家は存続していく。
もちろん、こうしたホッブズのリクツは、いろいろ飛躍があるし欠陥もある。
しかし重要なのは、人間の性質を前提条件にして、国家がどうやって成立するか、そのメカニズムを考えたところだ。
それも「神様のような人間以上のものがうまく設計したのだ」というご都合主義ではないやり方でだ。
原子論が「自然は運動する原子の集まりだ」と考えるように、ホッブスは社会を人間のあつまりだと考えた。
そして人間の性質からはじめて、人間の集まりで何が起こるか、人間と人間が関わりあうことから何が生まれるかを考えた。
どんな人間にもあてはまる性質は、「死にたくない」という欲望と、「おれが、おれの方が」という欲望を持っていることだ。
「おれが、おれの方が」という欲望は、死ぬまで無くならない。
だから、このままだと、いろんなものを取り合って、人間は死ぬまで争い、どんどん死んでいくことになるだろう。
だが人間には「死にたくない」という欲もあり、そして多少はものがわかる能力もある。
ここから最低限のルールが生まれる。
というより「死にたくない」という欲望が能力を働かせて、死にものぐるいで最低限のルールを「発見」することになる。
〈約束は守る〉とか〈自分がされたくないことは人にもしない〉とか、そういうのだ。
こうした最低限のルールが生まれて、ようやく〈契約〉ができるようになる。
そうして、互いに死ぬまで争わぬために、ある特別の〈契約〉をする。
元になるのは〈代理〉という契約だ。
〈代理〉というのは、本当なら自分がすることを、誰かに代わってやってもらうことだ。
この契約を結ぶと〈代理人〉がやったことは、自分がやったことになる。
さて、「おれが、おれの方が」という欲望は、他人を支配しようという欲望になる。
そして誰もがこの欲望を持っているので、支配されたくないという欲望もある。
誰もが支配したいし、支配されたくない。ある人がこの欲望を満たすと、他の人はその欲望を満たすことができない。
つまりこの欲望は、全員が満たす訳にはいかない。
一度、負けたものも、またこの欲望を満たすために争いを起こすだろう。
世の中の大多数はこの欲望が満たされないままなので、争いの火種は絶えることがないだろう。
では、どうするか?
ある一人の者を、社会の全員が〈代理人〉に指名して、他人を支配することを代わってやってもらうのだ。
この〈代理人〉は社会全員の代理であり、社会全員を支配する。
〈代理人〉がやったことは自分がやったことになる、というのを思い出そう。
このリクツでいけば誰もが〈代理人〉を通して、全員を支配するという欲望を満たすことになる。
だが実際は、全員が支配されている。
国家とその権力とは、こうしたヘンテコな契約によって成立する。
もちろん契約なのだから破棄することだってできる。
人々がそうしないのは、破棄した途端、あの死ぬまでの続く争いに逆戻りするからだ。
そして今や国家が成立している。
国家ができる以前ならせいぜい、人間は他の人間と争うだけだった。
今や契約を破棄すれば(全員が一斉に契約を破棄しない限り)、破棄した者は国家と争う羽目になる。
あるいは国家越しに、束になった自分以外の社会全員と争うことになる。
もう勝ち目はない。
この呪いのような契約のせいで、まともに計算できる者は契約を破棄しないとの予測が立ち、その予測にたってみんなが契約を続けることで、予測した通りのことが実現し続ける。
際限のない人間同士の争いは、国家というみんなが参加する〈契約〉がある限り、止められる。
こうして国家は存続していく。
もちろん、こうしたホッブズのリクツは、いろいろ飛躍があるし欠陥もある。
しかし重要なのは、人間の性質を前提条件にして、国家がどうやって成立するか、そのメカニズムを考えたところだ。
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