冴えない彼女の育てかた

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冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)
丸戸 史明 深崎 暮人
富士見書房 2012-07-20

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 これは俺、安芸倫也が、ひとりの目立たない少女をヒロインにふさわしいキャラとしてプロデュースしつつ、彼女をモデルにしたギャルゲームを製作するまでを描く感動の物がた……
「は? なんの取り柄もないくせにいきなりゲーム作ろうとか世間なめてんの?」「俺にはこのたぎる情熱がある! ……あ、握り潰すな! せっかく一晩かけて書き上げた企画書なのに」「表紙しかない企画書書くのにどうして一晩かかるのよ」「11時間寝れば必然的に残った時間はわずかに決まってんだろ」「もうどこから突っ込めばいいのよ……このっ、このぉっ!」
 ……ってことで、メインヒロイン育成コメディはじまります!
 起承転結でいうところの転が弱くて結が唐突であっさりだった感じ。今回は各登場人物の顔見せだけで終わってしまった気が。この一冊だけでももうちょっとしっかり盛り上げた上でまとめてほしかったな。まあそれでも続巻あり前提ならこれでもいいのかもしれないが、あとがきからすると続きがあるのかどうかは売上次第のようで、なんだかすっきりしなかった。

(以下ネタバレ)












(ネタバレ開始)

 クライマックスの盛り上げがいまいちだったなぁ。なんで急に加藤がやる気を見せるようになったのかよくわからん。まあ、なんのかんのいって結局のところ加藤も安芸にホレてたってことだろ? と考えればいいのかもしれないけど、そんな様子がほとんど見られなかったのに、実はホレてたんですと考えるのはさすがにちょっと無理がある気もするし。

 主人公の安芸も企画書はテキトーで、最初からイラスト担当やシナリオ担当に頼りまくりってのはどうなんだ。このへんはいい加減なやつに思えて印象が悪かった。そのくせゲームやアニメのためにがんばってバイトをこなしたりと意外に努力家な一面があったり、教師に正面から交渉して学校でアニメ上映会を行うことを認めさせるという交渉能力の高さがあったりと、どういう人物なのかいまいちつかめない。

 さらに第五章の先輩とのやりとりを読むと、どこまで先輩の言っていることが本当かはわからないのでそのあたりを差し引いたとしても、安芸は一時的に興味をひかれた相手にはすごく熱心に迫るけど、あくまで創作のためであって三次元の相手には興味なく、しかも飽きっぽいというろくでもない人物像になるわけだがそのへんはどうなんだろう。何か誤解があるのか、それとも裏設定みたいなのでもあるのか。

 最後の盛り上がりどころというべき企画書が書き進められるようになったあたりも、あれっていわば「現実の加藤よりも二次元妄想カスタマイズした加藤の方がいい」と本人の目の前で宣言しているようなものであって、ろくでもないよなぁとしか思えなかったんだが。いろいろと面倒な生身の人間よりも自分の思い通りになる妄想の方がいいのはある意味当たり前なんだけど、そんなミもフタもない真実は置いといて、「都合のいい妄想よりも生身の加藤の方が好きだ」というのがきれいなまとめ方というものだろうに。きれいなまとめ方を放棄して、あえてドロドロの現実を突き付ける作品というのもあるけど、この作品はそういう作風というわけでもないしなぁ。

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