「…それで、何しにいらしたのですか?」
「だから、俺様はお前の溺愛してる人間を見に来たんだっての」
「…もう見ましたね?はい、お帰りください」
「なんだよユノ、冷てぇな…」
「この国の河川を守護するわたくしと
この世の全ての水を守護する貴方様では
位が違い過ぎるのです…」
「…ふふふ、そうだな
だったらユノ、あの人間俺様に寄越せよ」
「はっ!?何を、おっしゃって、」
「俺様に寄越したら帰ってやる」
「…それは、ご勘弁いただきたく…」
「じゃあ帰らねぇ」
本気で言っているのか
それとも只単に
帰りたくないから言っているのか
「…ヒチョル様…」
するとフワリと感じた自分の術が発動した気配
それはきっとシウォンかミノがチャンミンに触れたのだろう
「おっ?なんだ?あの人間に掛けてた術が発動したな…
そうか、飛ばされたのはミノか…ww」
「気付いておられたのですか?」
「あんな簡単な術
俺様には効かねぇけどな」
けらけらと笑うヒチョル様
しかしこの御方は恐ろしい
俺のような末端の神などとは桁が違う
すると扉を叩く音がして
杏子がシウォンを案内して来た
するとシウォンは
ヒチョル様を見るなり
目を見開き床に平伏した
「これはっ、ヒチョル様…」
「よぉシウォン、元気にしてるか?」
「はっ、ヒチョル様もご機嫌麗しく…」
「まぁ、堅苦しいのは無しだ
とりあえずこっちの椅子に座れ」
「…ですが」
「俺様がいいって言ってんだよ」
「…はい」
『何故だ!?』という顔で俺を見つめるシウォン
だが俺だってその理由が聞きたい
渋々椅子に座ったシウォンに
ヒチョル様は
「ユノの寵姫にちょっかい出してるんだってな?」
「いえ、そのような、」
「ヒチョル様、チャンミンは寵姫ではありませぬ」
「…お前の愛妾だろ?」
「愛妾でもありませぬ」
「…じゃあ、何なんだよ」
「…妻にございます」
シウォンの驚いた顔と
ヒチョル様のしたり顔
「…だ、そうだぞシウォン
いくら寛容な俺様でも
流石に妻となる者に手を出したら赦さぬからな」
「…御意…」
「それでだユノ」
「はい」
「お前さぁ、あの人間を妻にするって事が
どれ程の事なのかちゃんと考えたか?」
「はい」
「…ふぅん…それならいいけど
まぁ、何かあったら言えよ
俺様に出来る事なら何でもしてやるから」
「ありがとうございます」
「それからシウォン」
「はっ!!」
「ウマイ菓子持ってきたんだろ?
俺様にも寄越せよ」
「ぇ?ぁ、はいっ!!」
シウォンは慌てて菓子を広げ
ヒチョル様の前に置いた
「クッキーか」
「…はい」
「俺様もこれは好きだな」
笑みを浮かべ菓子を食べる様は
まるでどこぞの姫のような美しさ
しかし、怒らせると国など吹き飛ぶ程の実力者
「…この菓子でチャンミンを釣るつもりだったのか?」
「いえ、あの、きっと喜んで貰えるだろうと思いまして…」
「お前さぁ、そんなに人間に興味があるなら
ひとりいいのがいるんだけど預かれ」
「…は?」
ヒチョル様の言葉に
俺もシウォンも動けず
「ちょっと前に船が沈んだんだけどな
そこにいた人間なんだよ
俺様にはなつかなかったから
お前面倒見てみろ」
「…しかし、」
「ユノが羨ましいのはわかるけど
お前はお前だけのヤツを探せよ」
「…っ、…」
「年の頃はチャンミンと変わらぬだろう
名はキュヒョンだ
明日にでもお前のところに行かせるから」
「…御意…」
「チャンミンと変わらぬなら
いい友になれるやも知れませぬな…」
「だろ?俺様もそう思って
シウォンに任せてみようかと」
「流石ヒチョル様…」
チャンミンとテミンとキュヒョン
きっといい友になれるだろう
「…で、ユノ」
「はい」
「お前、ミノを何処まで飛ばしたんだよ…」
「…それは、」
「あんなとこに飛ばしたら今日は帰って来れねぇなぁ…w」
「ユノヒョン、ミノは何処へ…」
ミノを飛ばした滝壺
それは…
「魔の滝と言われてるアソコだよ」
「…っ、ヒチョル様…」
「はあっ!?あんな所にっ!?」
「わかったかシウォン?
ユノは本気だぞ」
驚愕に目を見開き俺を見つめるシウォンと
楽しそうに菓子を食べるヒチョル様
「…ミノ、生きてますよね?」
「…多分」
「あっはっは!!
シウォン、ユノを怒らせると怖いな!!」
「…はい…」
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