屋上に戻ると
ちょうど最後の花火が上がり
あまりの迫力に言葉なんかみつからなかった
「凄い…」
「…綺麗…」
爆音と光の強さに少し引きながらも
日本に来て良かった
*****
それから家主夫婦にお礼を言って
浴衣を脱ぐ
「…なんか、残念…」
「何がだよ…」
「…浴衣姿のチャンミン本当に似合ってたし」
「だからってホテルまで着て行ったら目立つってば」
「そうだけど」
…そうだけど、なんかエロいし、魅惑的で
浴衣を着たまま押し倒したり、ほら、ねぇ…
チャンミンは俺から浴衣を受け取ると
着付けをしてくれた知り合いに手渡した
もしかしたら彼はスタイリストなのかも知れない
いや、わかんないけど
体質的にアルコールが駄目らしく
全くアルコールを摂取しておらず
これからホテルまで送ってくれるそうだ
…コイツ、チャンミンにニヤニヤしやがって…
「ユノ、もう少ししたら出るからね」
「…りょーかい」
*****
ホテルについて部屋に入ると
とりあえずベッドに倒れ込んだ
「…先にシャワー」
「ん、わかってる…」
渋い顔をしたチャンミンは
プライベートなのにマネージャーの顔をしていて
サブとはいえマネージャーだからなぁと
妙に感心
でも今はプライベートだし
「一緒に入る?」
「こんな狭い所でふたりとかあり得ないから」
「…広かったら入ってくれんの?」
「…っ…!!」
一気に顔が赤くなるとか
ほんと可愛らしいんだけど
ニヤニヤ見てたら枕が飛んできた
「ぉぶっ!!」
「早く入れ!!」
「…わかったから」
…チャンミン照れ屋なんだから…
*****
残念な事に俺はチャンミンが戻って来た頃には夢の世界へと旅立っていて
気付けば朝だった
「…マジかよ…」
今日はこれから新幹線で移動するらしい
そんなにも遠くない温泉街で旅館を予約したからホテルをキャンセルしたと韓国を発つ前に言われていた
俺としては東京の街をウロウロしてみたかったのだけれども
温泉街と聞いて、もしかしたらチャンミンの浴衣姿が見られるのではないかと思い反論なんかしなかった
「遠い?」
「東京からそんなに遠くない予定です」
「…予定ね」
「僕も行った事が無いので」
「そうなんだ」
*****
新幹線を降りてから乗り継いで
無事到着した温泉街は
俺が思っていたのと少し違っていて
「賑わってない…」
「…はい、そうですね」
「…草津とか、鬼怒川とか、ほら、」
「さて、行きますか」
「…はい…」
タクシーで向かった旅館に到着したのは
日が落ちてからで
それでも硫黄の匂いが
ここは温泉のある場所だと教えてくれる
「ここ…」
そんなに大きくない旅館で
何でこんな宿を選んだのかと少し凹む
チャンミンが日本語でチェックインを済ませると
着物姿の女性が話し掛けてきた
にこやかに話すチャンミンと女性は
なにやら布を指差していて
「なんだ?」
「ユノ、好きな浴衣を選んでいいみたいですよ」
「え?」
「この中から選べるみたいです」
「へぇ…」
シンプルな浴衣が置かれていて
どれにしようか悩む
「チャンミンはこの色なんかどう?」
「えっ?僕?」
「俺はこれがいいなぁ~」
「うん、似合いそう」
仲居さんは選んだ浴衣を手に取ると
部屋に案内してくれた
そこは少し離れていて
部屋に露天風呂がついていた
「うわ…凄い…」
仲居さんから色々と説明を受け
それからお茶を飲んで
ふと気付いた
「チャンミン、浴衣ってどうやって着るんだよ
昨日は着せてくれたけど、今日は誰も居ないし…」
「浴衣は案外簡単ですよ」
「…そうか?」
「はい、」
「まぁ、それより露天風呂入ろう!!」
「どうぞ」
一緒に入ろう。という想いを込めて放った言葉は
(お一人で)どうぞ。という言葉に
撃ち落とされた
「…誰も見てないから」
「嫌です」
「…じゃあ、さっき仲居さんが言ってた大浴場行くか?」
渋い顔が余計渋くなって
じゃあ、何で旅館にしたんだよとツッコミを入れたかったけれど
きっとそれは言ったらいけない言葉だと理解してスルーした
「先に入って待ってるから
チャンミンも入って」
「…ぇ…」
返事を聞かずに服を脱いでさっさと露天風呂へ
そもそもここを選んだのはチャンミンなんだし
来てくれるだろうけど
俺が逆上せないうちに来てくれるだろうか…
マッタリしていたらチャンミンの気配がして
「…思ってたより広いんですね…」
「うん、それに、気持ちいいよ…」
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