それからヒチョルヒョンと僕はタクシーで自宅に向かった
「…どうぞ…」
リビングに通しソファーに座って貰うと
隣に座るように促された
「で、そんなに酔ってる理由は?」
直球で訊かれてしまい
答えに困る
「ユノは…居ないのか?」
コクンと頷くと
それだけですべてを理解してしまったようで
そっと僕を抱きしめてくれた
「…寂しいのか?」
「…ぅっ…」
僕は何も言って無いのに
こんなにも理解してくれるなんて
嬉しくて涙が溢れた
「百日愛になる程ユノを好きだったんだよな…
一人じゃ寂しくて飲まないとやってらんないのか?」
「……」
「…チャンミン…」
「ヒチョ…」
僕の唇に触れてるのは
やわらかなヒチョルヒョンの唇で
ユノじゃない
だけど久々の感覚に胸が熱くなる
…もしもこれがユノの唇なら…
するりと滑り込んで来た舌が僕の舌を絡め取る
「んっ、ユノ…」
「……」
ぐいっと頭を両手で固定されて
酔いのまわってる僕の頭は混乱してる
これはヒチョルヒョンだ
ユノじゃない
離れなくちゃ
でも、キモチイイ
でも、離れなくちゃ
でも、
でも、
「…何してんの?」
「聞くなよ、野暮だな」
咄嗟に離れようと腕に力を込めたけど
ギュッと抱きしめられてそれは叶わなかった
「…チャンミン?」
「…ゅ……」
ユノの声が怒ってる
あたりまえだよ
僕は、酔って何て事をしてしまったんだ
怖くてユノを見る事が出来ない
「…はっ、ぁ、ぅ……」
「…チャンミン?」
「な、なん、か、変……」
「おい!!チャンミン!!」
「嫌、嫌だ、怖い……」
僕を強く抱きしめるヒチョルヒョンと
それをやめさせようとするユノ
僕の呼吸は苦しくなって
どんどん意識が黒いものに飲み込まれて行く
駄目だ、これはヤバイ
「…ユノ…」
ユノに助けを求め手を伸ばすと
ユノは僕を見て目を見開いた
「…チャンミナ…」
遠くなる意識
僕の手はユノに届かなかった
.