バーで飲んでいた僕の前に現れたのは
前に共演した事のある俳優だった
「飲み過ぎてません」
「しかも、そんな飲み方して…」
「どんな飲み方をしようとそれは僕の自由ですし、貴方には迷惑なんかかけてませんから」
「…かなり酔ってる?」
「…どうですかね…」
会話を続けるのすら億劫で
僕は店を出ようと会計を済ませて立ち上がった
「おっ…?」
「ほら、言わんこっちゃない…」
カクンと膝から力が抜けて
ヨロヨロとしてしまう
彼は僕を支えるようにしてくれて
その温もりが何だか懐かしく感じてしまった
最後にユノと肌を合わせたのはいつだったか…
あぁ、ユノに触れたいし触れて欲しい
「…送ろうか…」
「いえ、結構です」
「遠慮する必要は無いよ」
そう言って僕のカラダに触れた手が
するりするりと欲を煽る
嫌だ、逃げなくちゃ
そう思っても思いの外動けないカラダは彼にされるがまま…
「…んっ…」
「…可愛い声…」
どうしよう、どうすればいい!?
店を出てゆっくりと歩く
これは何処に向かっているのだろうか?
「…タクシーで帰りますからっ…」
「送るよ」
「放してください」
「今夜は車があるんだ」
「ほんと、大丈夫ですって!!」
夢なのか現実なのか
動いた事で急激に酔いがまわったのか
僕は何だかふわふわしていて
だけど危機感だけは確実に感じてる
「…嫌がってんだから離してやったらどうですか?」
「…ぇ?」
半ばパニック状態の僕の耳に届いたのは、誰かが助けてくれた声だった
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