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バングラデシュの騒乱はカラー革命ではないが、直ぐにそうなるかも知れない(抄訳)

2024/07/25のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/07/15〜24のバングラデシュの騒乱はカラー革命ではなく、国内の不満から発したものではあるが、容易に外国勢力によって悪用され得る。
The Unrest In Bangladesh Isn’t A Color Revolution But It Could Still Easily Become One



 バングラデシュの学生騒乱はカラー革命か?

 2024/07/25の報道に拠ると、07/15以来、バングラデシュでは政府の雇用割当を巡る学生の抗議活動が引き起こした騒乱が1週間以上続いて200人近くの死者を出した後、07/24にゆっくりと平常状態に戻った。この抗議は戦争で戦った人々の親族に政府の職を確保する従来の30%の枠を削減するよう求めるものだったが、その後最高裁判所は割り当てを5%にまで引き下げた。

 今回の暴動に先立つ背景を説明しよう。

 ・2023/04/16:米国がバングラデシュでレジームチェンジを企んでいるのは何故か?(要点)
 ・11/26:ロシアは米国がバングラデシュでカラー革命を画策するかも知れないと警告(抄訳)
 ・2024/01/10:バングラデシュとブータンの選挙結果はインドに戦略的息抜きを与える(抄訳)
 ・01/28:The Bangladeshi Opposition’s New Narrative Is Meant To Maximally Appeal To The West
 ・05/27:Bangladesh Warned About A Western Plot To Carve Out A Christian Proxy State In The Region

 簡単に纏めると、米国は対ロシア制裁に加担せず独立した外交政策を貫くインドを罰したいと思っており、その為に隣国であるバングラデシュを通じて不安定化させたいと考えている。それに加えてロシアと縁を切ることを拒否したバングラデシュ自体にも不快感を抱いている。

 これらの要因から2024年1月の選挙時には米国はカラー革命を検討するようになったが、最終的には実現しなかった。

 米国とバングラデシュとの信頼関係は急激に悪化しており、バングラデシュ側では米国がバングラデシュを代理国家に変えようとしていることを認識している。

 従って一部の外部観察者には、最近の騒乱は遅れてやって来たカラー革命の様に思われるかも知れないが、現実はもっと複雑だ。



 騒乱の原因は国内問題

 野党が暴力を煽ったのは間違い無いが、抗議者の主体は飽く迄学生達であり、元々政府の雇用割り当て問題は多くの人の感情を掻き立てる問題だ。

 バングラデシュの経済は近年好調で、パキスタン(独立戦争まではバングラデシュはパキスタンの一部だった)を大きく凌いでいる。だが社会の一部の層は富の分配方法に不満を持ち、労働者の権利を懸念している。

 この不満の高まりと不完全雇用の傾向が組み合わさって、元々政府に反対していた若者達の一部が抗議の為に立ち上がった。毎年この分野で確保される新たな仕事の数は、国全体のニーズに比べれば微々たるものではあるが、その仕事に就ければ一生安泰だと考えられているので、家族の繋がりではなく個々人の能力に基付いて採用せよとの声がこれ程までに高まった。

 野党はこの感情を利用して与党に対する反感を煽り、一部の抗議者達を過激化するのに成功した。

 経験の浅い観察者から見ればこれらの動きはカラー革命の様に見えるかも知れないが、これらは実際には何十年も前からの政策に対して燻って来た不満によって引き起こされた、自発的な暴動だ。



 外部勢力に悪用される可能性

 但し、これが外部のプレイヤーによって悪用される可能性は有る。抗議者達は野党や外国の諜報機関が支援する「NGO」に誘き寄せられるかも知れず、その場合は騒乱の第2ラウンドが開始されるかも知れない。若者達が野党とと連携する様になったことは与党にとっては深刻な問題だ。抗議者の一部は治安当局が不当な実力行使を行ったと考えているので尚更だ。

 こうした繋がりの結果として、他のあらゆる種類の社会政治的混乱が現実のものとなるかも知れない。そしてそれは資金提供、組織的支援、メディア報道による宣伝を通じて、外部から悪用される可能性が有る。

 既にそうした兆候は見えている。抗議活動は政府の雇用割り当て政策の改革に対する要求から、首相の謝罪、他の閣僚の辞任、一部の治安部隊の逮捕等の要求へと変化してている。若し政府が取り締まりを強化すれば、政権交代を求める明確な呼び掛け、その為の更なる抗議行動、そして最も過激化した勢力によるテロ反乱が容易に引き起こされるであろうことは想像に難くない。

 従ってバングラデシュが今後更に圧力を受けることは確実だ。但し次のラウンドが何時始まるか、外部プレイヤーがどの程度関与するか、そして事態がどれ程深刻になるかはまだ分からない。

 何れにせよ当局は、「民主的安全保障」理論の教えに従って、野党に平和的に対抗出来る親政府市民社会勢力の育成等、来るべき事態に備える必要が有る。

 バングラデシュはインド洋北端、南アジアと東南アジアの交差点と云う極めて重要な位置に在るので、新冷戦時代のパワーバランスに於けるその地政学的重要性は、バングラデシュが今後も外国の策謀の対象であり続けることを意味する。

 中国、インド、ロシア、米国の間で多面的に連携する(multi-aligning)と云う与党の政策はプラグマティックなものではあるが、それこそがワシントンがバングラデシュに干渉したがる理由でもある。米国の「ジュニア・パートナー」になろうとしなかったバングラデシュを、彼等は許さない。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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