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端末が鳴る。じぶんの鼓動を聞く。息の狭まるのを感じる。あなたの無事を確認したいと不安がるおれをけっして知られてはならない。 あの事件の前から自分に強迫観念があるのは知っていた。初恋のひとが他の男女と寝ているのを黙って受け入れることしかできなかった。おれよりもあのひとを悦ばすことができる相手がいる。その現実は幼いおれをいたく傷つけた。 あなたに告白したとき、おれはほぼ無意識に「そのこと」について触...全文を読む
あなたはもうホテルだろうか。シャワーを浴びてすぐ端末に手を伸ばす。ひとりだと風呂に入らない。食事も適当になる。なにもかもが味気ない。そして、不安だ。 海外研修中に文字通りの意味であなたを失いそうになった。 始まりも不穏だった。ひと月という約束だったため相談もなくOKした。はなしを切り出してすぐ、あなたは眉をひそめた。それまでおれの仕事に何一つ文句をつけないひとだった。きゅうに出張しようが何日も家...全文を読む
丸い湾の遠くに釣船が行き来している。潮のにおいが淡い。波のない、とても穏やかな海だった。 砂浜に腰をおろして端末をとりだす。無事ついたと連絡を入れていなかった。彼は仕事だろうが列車の到着時刻は知らせてある。メールの着信履歴をひらくとご当地美味いもの尽くしで埋められていた。その手のことを何も下調べしていないとお見通しらしい。いや、たんなる土産の催促かもしれないと思い直し、依頼人は想像よりずっと元気...全文を読む
依頼人はわたしの顔を見てすぐに笑顔になった。顔色は悪くない。ベッドの横にいたのはご家族ではなく、ご友人のようだった。お邪魔になっては悪いとかんたんな挨拶だけさしあげて後程また参りますと一礼した。 病院を出てどこに行っていいものかもわからず、自分はこの街のことなど何も知らずに来たのだと思い知る。いや、そもそものところ、名前しか知らなかった場所にいるのだと。バス停の時刻表を眺めてみるが行く宛てもない...全文を読む
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