写真や音楽,動画などのデジタル・データを,ホーム・ネットワーク内で相互利用する規格である「DLNA(Digital Living Network Alliance)」が,ここにきて身近になってきた。サーバーとして「Windows Media Player 11」,クライアントとして「PLAYSTATION 3」などがDLNA対応機能を搭載したことで,Windows XP/Vista上のデジタル・メディアを,テレビで簡単に再生できるようになったからだ。
DLNAとは「Digital Living Network Alliance」という業界団体の略称で,この団体が公開する「DLNAガイドライン」に沿って開発したデジタル家電やソフトウエア同士であれば,様々なデジタル・メディアをホーム・ネットワーク経由で転送し,デジタル家電などで再生できる。2005年頃から,一部のデジタル家電にDLNA対応機能が搭載されるようになった。
そして2007年,DLNAは多くのユーザーにとって非常に身近なものになった。まず,有力なサーバー・ソフトウエアとして,Windows XPとWindows Vistaで利用できる「Windows Media Player 11」が使えるようになった。そして2007年5月末には,「PLAYSTATION 3」がシステム・ソフトウエアのアップデートに伴い,DLNAクライアントとして利用できるようになった。これによって,Windows XPやWindows Vistaに蓄積されているデジカメ写真や音楽,動画などを,ネットワーク経由でPLAYSTATION 3に転送して,再生できるようになったのだ。
Windows Media Playerというと,「Windows標準のメディア・プレイヤ」というイメージが強い。しかし最近は,写真や音楽,動画といったあらゆるデジタル・メディアを管理する「デジタル・メディア・ライブラリ」としての機能が充実しつつある。これはやはり,アップルの「iTunes」を意識してのことだろう。iTunesの重要な役割は,パソコン上でのデジタル・メディア再生というより,「iPod」や「Apple TV」などに転送するデジタル・メディア・ライブラリの管理である。iTunesでデジタル・メディア・ライブラリを構築していれば,それを簡単にiPodやApple TVで再生できる。それと同じように,Windows Media Player 11でデジタル・メディア・ライブラリを構築しておけば,PLAYSTATION 3などのDLNAクライアントで,デジタル・メディアを簡単に再生できるわけだ。
大型テレビでデジカメ写真を
記者も実際に,Windows Media Player 11とPLAYSTATION 3を連携させてみたが,使い勝手は非常に良かった。DLNAは,UPnP(ユニバーサル・プラグ&プレイ)をベースにしているので,DLNAクライアント(PLAYSTATION 3)からDLNAサーバー(Windows Media Player 11)を探す手間はほとんどかからない。また記者の場合,ホーム・ネットワークをギガビット・イーサネットで構築しているからか,ネットワーク経由のメディア再生も非常にスムーズだった。
DLNAを使うと,デジタル・メディアのメタ・データ(タグ情報)も活用できる。DLNAクライアントは,階層構造になっているディレクトリ(フォルダ)をたどってデジタル・メディアを再生するだけではない。例えばデジカメ写真であれば,「撮影日」や「ユーザーが付けたキーワード」,「ユーザーが付けた評価」などのメタ・データでデータが整理されており,「9月4日に撮影した写真だけを再生する」といったことが簡単にできるのだ。これらのメタ・データは,Windows Media Player 11で簡単に管理できる。
記者が特に気に入ったのは,パソコン上に膨大に蓄積されているデジカメ写真を,大型の液晶テレビに映し出す,という行為である。単なる自慢で恐縮だが,記者は4月に40型のフルHD液晶テレビを,16万円という破格の値段で購入できた。画面が大きいと,画像そのものにやはり圧倒されるし,自宅に来た友人に写真を見せるのも便利だった。
また,PLAYSTATION 3の写真表示機能,特にスライドショウ機能は,その演算性能の高さを活用した凝った作りになっており,非常に雰囲気が良い。デジカメ写真を紙焼き(プリント)の写真に見立てて,白いテーブル・クロスに写真を投げるように巻き散らしていく---というスライドショウ機能をフルHD画面で見ると,息をのむほど美しい。
ちなみに,マイクロソフトの「Xbox 360」も,Windows Media Player 11をメディア・サーバーにして,PLAYSTATION 3と同様のことができる。もっともXbox 360が対応しているのは,Windows Media Player 11上にマイクロソフトが実装した独自のDLNAサーバー機能である「Windows Media Connect」限定であり,他のDLNAサーバーには対応していない。またXbox 360の場合,DLNAだけでなくリモート・デスクトップ機能(の簡易実装である「Media Center eXtender for Xbox 360」)を使って,パソコン上のデジタル・メディアをネットワーク経由で再生できるが,こちらの場合,対応するパソコンOSが「Windows XP Media Center Edition」または「Windows Vista Home Premium/Ultimate」に限られる。
先に述べたように,アップルのApple TVも,パソコン上のデジタル・メディアをネットワーク経由で再生できるが,こちらも使っているプロトコルはDLNAではない。しかし,Xbox 360やApple TVの場合,マイクロソフトやアップルのDRM(著作権保護)技術で保護された動画/音楽データも,ネットワーク経由で再生できるというメリットがある(表)。
表●パソコンをサーバーとして利用するネットワーク・プレイヤーの比較
*2 PLAYSTATION 3自体はMPEG-4やH.264に対応しているが,WMP11が対応していないためネットワーク再生ができない *3 代表例は「Napster」 |
もし読者の皆さんが,大型のテレビをお持ちなら,そこにPLAYSTATION 3やXbox 360,Apple TVなどをつないで,パソコン上のメディア・データをネットワーク経由で再生してみてほしい。きっと新しい驚きがあることだろう。