近代中国のロマン派詩人(1):林徽因(りんきいん)
中国のロマン派女流詩人:林徽因
林徽因は近代中国のロマン派の女流詩人また建築家としても有名で、天安門広場前に立つ人民英雄記念碑の設計などで知られる。梁啓超の息子で建築史学者の梁思成と結婚し、夫婦ともに精華大学などで建築学や建築史の教授を務めた。
林徽因は若い頃に海外で働く父親と共にイギリスやアメリカで暮らし、16歳の頃にはケンブリッジに留学していた詩人の徐志摩と恋愛関係となった。またロンドン大学留学中に林徽因に片思いした精華大学哲学教授の金岳霖は、林徽因への愛情から一生独身を貫いた。
こうした林徽因を巡るイギリスを舞台にした三角関係は、中国の近代ロマン派の詩のエピソードとして有名でテレビ・ドラマにもなっている。林徽因と徐志摩は西洋の影響を受けたロマンチックな詩の先駆けとして、中国文学史ではかなり重要な地位を占めているが残念ながら日本ではほとんど知られていない。
いつか中国近代ロマン派の詩人たちの恋愛エピソードと詩を出版したいと思って数年前に購入した詩集が出てきたので、林徽因の詩「你来了」を以下に一つ私訳してみた。
「あなたが来たら」
あなたが来たら
絵の中の山辺に立つ小屋に
風に乗せて交響曲が流れてくるわ
草々が空まで伸びていくの
日光がどこに向かって照るかなんて、誰も気にしない
あなたも私も
絵の中の人物みたいね
振り返るともういないの
あなたが来たら
花が深紅に咲き誇り
池を覆う浮草が朝の夢を織りなすの
鳥たちが歌い
木々の枝が絡みあうわ
でも白い雲が、私たちを
ゆっくり空を何重にも巡らせるの
野崎晃市(42)