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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
以前のエントリー「常に暫定的な答えがあると考えた方が生きやすい」で:

原則として「研究には正解とか不正解とかない(発声練習)」ので「正解でも不正解でもない状態を受入れつつ、自分の主張を述べる」のではなく、「自分の暫定的な答えを述べる」。検証や議論の末に、その「暫定的な答え」を変更/訂正するという作業を常に繰り返し、「暫定的な答え」は新しいバージョンへとアップされていく。


という「暫定的な答え=仮説(Hypothesis)」に基づく研究の進め方「Hypothesisーdriven approach」が現在の科学研究のフレームワークのひとつであると書きました。

この「暫定的な答えを変更/訂正し、バージョンアップする」やり方を、リクルート出身で元東京都杉並区立 和田中学校校長の藤原 和博さんは「納得解」と呼んでいます。「研究には正解とか不正解とかない」と書きましたが、正解/不正解というはっきりした答えがないのは研究の世界だけではありません。ビジネスでも、普段の人間関係でもそうですし、正解/不正解のはっきりしているのは現行の初等/中等教育ぐらいのものです。藤原氏によれば

学校の授業はほとんどが正解主義で行われますので、「この問題が出たらこういう正解だ」っていうパターン認識力をすごく発達させています。でも、そのパターン認識にはめて授業を聞いている以上は、実は頭は回転していないんです。


よってOECD(経済協力開発機構)のPISA型学力

知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるという能力


をつけるために、まず自分が納得できる暫定的な解答をきめて、それを他人も納得できるように変更/訂正し、バージョンアップするという「納得解」にたどり着く習慣を学校で身につけるトレーニングをすることを藤原氏は提唱&実践していらっしゃいます。

ほぼ「暫定的な答え=仮説=納得解」であるとしても、言葉の問題は非常に重要で、仮説と呼ばずに納得解と呼んだところに「教育のイノベーション」の鍵があるように思います。納得解と呼んでしまえば、あくまでも「解」なのであり、「仮説」よりもずっとソリッドで自身に満ちた印象を受けます。科学者は得てして謙虚で控えめであり、「納得解」という語感に違和感を覚えるかもしれませんが、”人工的な”正解があるという脅迫観念にとらわれた状態から解放されるためには、「納得解」という”別の正解”は正解はないと教えるよりも、はるかにアクション指向で実践的だと思います。




テーマ:創造と表現 - ジャンル:学問・文化・芸術


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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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