少し考えさせられる出来事が立て続けにおきたので、忘れないうちに書いておこう。

今日、ある金融機関の方がいらっしゃった。僕が住む地方では最も有力な銀行だ。といったらもう一つしかないけど。

普段は必要性を感じることがあまりないので、会うこともないのだけれど、父の会社に何度か通っていたようで、父が是非と進めるものだから、一度あってみることにした。まぁ、お金はいつ入用になるかわからないし、借りるのであれば調子がいい時に借りておくべきだろうし、そして何より話を聞くだけであれば、タダなので、ちょっとあってみることにしたのだ。

会ってみると、精悍な若者で、もやしっこ文系代表の僕とは明らかに雰囲気が異なるが、感じの良さそうな人だった。

彼は開口一番こういった。

Yさん: すいません、僕はまだ2年目で十分、知識もないがですけど、少し融資のご紹介をさせて頂ければと思いまして、来たがです。

その後、僕は軽く今やっている仕事の紹介をし、融資には興味があるけれど、今すぐ必要とも思わない。審査が出てからおりるまで2週間程度なのであれば、3ヶ月後ぐらいに少し投資しようと思っていることがあるので、もしかしたらその時期であれば、相談させてもらうこともあるかもしれない。という旨をお伝えした。

まぁ、思っていることを率直に伝えただけなので、話は5~10分ぐらいで終わったと思う。その後は僕の質問タイムだ。人材に関する仕事に携わっていたからか、金融機関に勤める2年目の若者が、どのように仕事に対して取り組んでいるのか、非常に興味がある。
fukui: 富山で○○銀行に勤めてるって、エリートだと思うけれど、Yさんの営業成績ってどうなの?

Yさん: いや、僕は全然ダメながです。成績も一番下ぐらいでして。

fukui: やっぱりさ、ノルマとかあるの?

Yさん: ノルマはまだ僕は無いがです。成績は一応、貼り出されとるがですけど。もう少ししたらノルマも出てくると思うがですけど。

fukui: そうなんだ。他の支店の成績とかもわかるの?2年目はやっぱみんなYさんみたいなものかな。

Yさん: いや、それがそうでもなくて、一人氷見のほうにスゴイ人がおるがです。これまでの歴史を塗り替えるぐらいとんでもない成績を挙げ ている人がいて。

fukui: へー。それは凄い。その人は何が凄いんだろうね。成績が凄いのは融資を依頼された件数かな。それとも金額?

Yさん: 件数です。

fukui: 件数って凄いね。それだけ多くの人に評価されてるってことだからね。何か秘密でもあるのかな。

Yさん: 秘密はあるかもしれんがですけど、僕にはわからんがです。

fukui: やっぱさ、滑川だと企業も少ないしなかなか大変だよね。アポだって取りにくいんじゃないの?

Yさん: いややっぱり、名前を出すと一応話だけは聞いてもらえるので、恵まれてると思います。勉強不足であまりいいお話が出来ていないところが問題だと思います。

fukui: そうなんだ。やっぱり正面からいってもなかなか難しいんじゃないの?今度経営者が集まる個人的な集まりがあるから、来れるようだったら紹介しようか。

Yさん: それは大変嬉しいがですけど、、、今度の土曜日はちょっと用事があるがでまたの機会にお邪魔させてください。

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こんな感じの話だったと思う。実際はもう少し雑談していたけれども。

彼は、終始謙虚で印象はよかった。うーん、ちょっと僕にはできない芸当かもしれない。また、正直さを感じたし、自分の成績の悪さを決して他には求めなかった。これも信頼できる資質のひとつだ。だからこそ、僕は彼を魅力的だと思ったし、少し他の人に会わせてみたいな。と思ったのだけれど、彼はそれを断った。

正攻法でいくことを重視されている時期なのかも知れないが、そこに凄く惜しさを感じたし、ほんの少しがっかりしたことも確かだ。もしかしたらお互い一歩歩み寄れるチャンスだったかもしれないのに。

彼との商談は終わり、僕は、「一歩踏み出すと世界が広がるときに踏み出さないのはもったいないなぁ。」なんて上から目線で彼の将来にちょっと思いを馳せてみた。

しかし僕は、彼を引き合いにだして「一歩踏み出すことの大切さ」を文章に残しておきたいわけでは決して無い。

正確に言うと、それを書こうかと思っていたのだけれど、僕自身の2日前の活動を思い出してみると、とてもそんなことを言える立場にないということに気付いたからなのだ。

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2日前。立場は逆転する。

僕は富山のロータリークラブの重鎮であり、地元の名士の方にお会いする機会を得た。それはTwitterでの縁から生まれたもので、僕は非常にラッキーだったわけだけれど、そういえば、その名士の方は僕をロータリークラブに推薦しようか。と言ってくれたのだった。

ロータリークラブという団体は地元の有力者ばかりが集まる。そこで得られる人脈やビジネスの機会は(特に地方では)大変なものだ。しかし、「職業を通じた社会奉仕」を活動の目的のひとつに挙げているし、定期的な会合などへの参加を考えると、年間300万ぐらいの出費は覚悟しなければならない。(もちろん、ケチケチ精神で行けば、入会費+αぐらいの出費でいけるだろう。)

ロータリークラブに入るためには既存会員の推薦が必要になるわけだけれど、僕はこの上もない幸運に恵まれたことになる。しかし、僕はその有り難い話を、

「経済が不安定な時期ですし、推薦頂いて事業が悪化するなど、ご迷惑をおかけすることになるのは避けたいので、もう少し事業が安定してからまたご挨拶に伺います。」

と、実につまらない回答をしてしまったのだ。
まぁ、いろいろ小器用な言い訳を僕はしたけれど、ようは年間の出費と、50代、60代の名士の方々の食事会に混ざることにビビったのだ。

これではYさんのことを「残念だ」などと述べることは、到底できない。

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誰しも、未知な環境に飛び込むこと。身分不相応に感じる場所にたつことは、躊躇する。
そして、緊張する。
時には恐怖する。

しかし、それを一歩踏み出すことが出来るかどうかが、人の器を決めるような気がする。
そして僕はそれを躊躇した。躊躇するというと聞こえがいいが、もっというと恥を書きたくなかったのかもしれない。

失ってしまった時は取り戻せないが、今からもう一度連絡してみようと思っている。
勇気を出して。