数年前に流行った言葉に「空気を読む」という言葉があります。あまりにも「空気を読め」が流行ったため、アンチとして「空気を読むな!」と叫ぶ人たちも後に出てきたと記憶しています。

まぁ、もちろんこういうのは使い分ければいいわけで、空気をよむべきところでは空気を読めばいいし、空気を読んでいては始まらないところでは、Talk Straightでいけばいいのだと思います。

ちょっと話はずれてしまうけれど、採用活動のグループディスカッションなどで、「空気を読めない人」というのは、空気を読めないのが悪いのではなく、述べている意見が完全にズレいるところに問題があるのだと思います。

採用選考のグループディスカッションの場合、述べている意見のズレに関しては多くの人が気付くのですが、これは立場がフラットで、ゴールと論点が明確で、保有している知識や能力が似通っている模擬的な会議の場だかこそ、気付くことが出来るのだと思います。

けれど、多くの組織の会議の場では、立場がフラットじゃないし、ゴールと論点が明確じゃない会議も多いし、当然保有している知識や能力も異なります。だから、

立場や経験が上の人が述べている意見がズレていても、なんとなく素直に受け入れて、反論や対案を述べず、結果的に悪い方向に組織が向かってしまう。

ことも多いのだと思います。これを僕は「悪しき空気を読む習慣」と言っています。

まぁ、実際に反論や対案を述べず、まずは素直に受け入れやってみる。というのは、経済全体が成長している時期には必須の処世訓だったわけですね。とりあえず、戦国時代じゃなければ、親父の遺影に焼香を投げつけた織田信長なんかは空気読めないどころか、ただのうつけ者で終わっていたわけで。

※まぁ、営業担当者にとっては素直に受け入れることは大事だと思います。お客様のご機嫌を害しては終りですから。だから素直さを社訓に入れるのは悪くないですが、社内と社外、時と場合に応じて使いわける必要はあるかなと思います。あと、公務員など終身雇用で上司の意向が全ての組織だと、素直さって大事でしょうね…。


さて、もし組織や業績が停滞していると感じていらっしゃるトップマネジメントの方がいらっしゃれば、とりあえず会議のやり方を変えてみる。ことを提案します。

トップマネジメントの会議のやり方を変えるのに参考になるのは、大橋禅太郎さんが書かれた「すごい会議」です。更に詳細に具体的なやり方を書いた「秘伝すごい会議」という書籍も存在します。


すごい会議−短期間で会社が劇的に変わる!すごい会議−短期間で会社が劇的に変わる!
著者:大橋 禅太郎
販売元:大和書房
発売日:2005-05-18
おすすめ度:3.5
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この本に書かれている会議のやり方で僕がすごいと思ったのは、

  1. 「問い」に対する答えをまず、紙に書き、順にひとつずつ発表すること(複数の意見を紙に書いたのであれば、何周かすることになります。)
  2. 「言わなかった問題」「言えない問題」「「言ってはいけない問題」を書き、発表すること
  3. 必要不可欠な担当分野をそれぞれが考え、6つ程度に絞り、その部門を担当するもっとも適切な人物を各自が書き込むこと
です。もちろん、他にも前向きな気持にさせるショートワークや、スムーズな問題解決を産み出す言い換えなど、全部で12ぐらいの手順が紹介されている(しかも、この通りにやることで最大の成果が発揮される!)のですが、僕がなるほどなぁ。と思ったのは上記3点です。

この3つは、先程述べたような、硬直化した組織が陥りがちな問題を打破できる鍵となりうるからです。

「問い」に対する答えをまず紙に書き、順にひとつずつ発表することで、他の人の意見に左右されず、自分の意見を言うことが出来ます。(その必要性に迫られます。)

組織の中で言いにくい問題を言う場をつくることで、本当に必要な改革の案が出てきます。100組織があれば、そのうちの99はこうした「言いにくい問題」「言えない問題」を言わないまま、表面的な問題解決のみをしているので、結局問題が解決されないのです。だから、この言えない問題を出せた組織はそれだけで他社に対して何歩もリードしていることになります。

組織に関しても、トップマネジメント全員の意見を持ち寄り、客観的に決めます。自分が○○をやりたい。自分は○○が得意。と思っていても、組織の他のメンバーはそれを望んでいない場合があるわけです。個人のキャリア開発などを考えた場合、このやり方は適切でないこともあるかと思いますが、緊急時を乗り切るためには、客観的な視点で適材適所を行うことが何より大切です。もしかしたら、今まで候補に上がっていなかった人を、トップマネジメント層に引き上げるきっかけになるかもしれません。

すごい会議は、こんな形で、悪しき空気をよむ習慣を打ち破るノウハウに満ちています。多くの組織がこの習慣の餌食になってしまっていると思いますし、そこさえ打破すれば、現状を劇的に改善するヒントにも満ちているわけです。

ただ難点は、経営資源をある程度思うように判断できるトップマネジメントのほうが、効果的にこのやり方が機能しないことでしょうか。本当はどのような会議にでも使えるノウハウかもしれないのですが、トップマネジメント向けの会議術ということは言えるかと思います。


ちなみに、短時間で効率的に会議を進めオペレーションをしっかり進めるには、「究極の会議」という本があります。トップマネジメント以外の会議や、初めて部下を持つ人の会議。自分の部門の会議をもっと効率的に進めることが出来ないか悩んでいる人にとっては、こちらの本のほうが参考になるかもしれません。

それでは、また。


究極の会議究極の会議
著者:鈴木 健
販売元:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2007-08-31
おすすめ度:4.5
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