仕事の資料を整理していたところ、面白いデータがあったのでご紹介。
下記は、国内の代表的な優良企業の海外売上比率と海外新興国の売上比率を示したグラフだ。

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資料:榊原正幸著 大学教授が考えた本気で「株」で1億円!より作成


赤線は日米欧以外の国に対する売上比率で、青線は欧米をひっくるめた海外売上比率だ。

これによると、日本電産のように海外売上のほとんどが新興国という会社もあれば、任天堂のように海外売上比率は極めて高いけれど、米欧に依存している会社もある。武田薬品のように、海外売上は高いものの新興国ではほとんど存在感のない企業も存在する。

  • 日本電産 海外売上比率 50.0% 新興国売上比率 47.9%
  • 任天堂  海外売上比率 87.1% 新興国売上比率 4.4%
  • トヨタ  海外売上比率 63.6% 新興国売上比率 19.8%
  • 武田薬品 海外売上比率 46.3% 新興国売上比率 0.6%

もちろん産業によって、新興国への進出タイミングは異なってくるだろう。アドバンテストや日本電産のように、製造ラインで用いられる部品をつくったり、製造ラインで必要とされる機器を製造している会社は新興国での売上比率が高まる。

日本のお家芸である自動車や家電は一定の存在感を示すものの、現段階では裕福層を対象としたブランド商品という位置づけだろう。

アミューズメントや薬(大衆薬ではなく、医科向けの薬)などは、新興国が成熟した段階で市場が伸びていくのかもしれない。
日本の産業の中心は製造業で、この20年間は米欧を中心に市場を海外にシフトさせることに成功した企業が生産性を向上させ、国内企業を牽引してきた。

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資料:財務省「法人企業統計」から三菱UFJ証券が作成(縦軸の単位は百万円)


一方でこれからは、新興国のシェア拡大が著しく、先進国での競争は厳しさを増していく。また、先進国向けの商品を新興国で作っていた企業は人件費の高騰や増加する労働争議に悩まされつつある。この10年ぐらいの間に海外の関連会社の位置づけを生産の中心からエリア別のマーケティング拠点へとシフトさせる必要が出てくるところは多いはずだ。

GDP

資料:IMF Gross domestic product, current prices U.S. dollarsより作成
2015-2024の期間はIMFによる2009-2014の平均成長率予測に基づき試算



15年後に先進国と新興国のGDP比は逆転を遂げる。既に新興国の売上比率が高い企業はいかに市場シェアを伸ばしていくか。先進国のシェアが高い企業は、高価格帯でのブランドを守る戦略をとるのか、低価格帯への進出をはかるのか。成長を志向するのであれば後者の道をとるのが常套手段だとは思うけれど、それが、いつ、どのように行われるかは大変興味深い。

一言に海外売上比率といっても、欧米に極度に依存している企業は「これまでの国際化企業」で、新興国に徐々に売上の軸を移している企業は「これからの国際化企業」と言える。(もちろん、前述のように業界別に進出タイミングは異なるので、同じ業界の中で比較してはじめて国際化の度合いは評価できるのだけど。)


これからの15年は大きな変化の年になるはずなので、そういう視点で就職先や投資先を考えてみるのも面白いと思う。(いずれも長期投資になるけれど。)



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著者:榊原 正幸
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2010-01-29
おすすめ度:5.0
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