日経ビジネスベーシックについてはこちら




 政府と経済界が提唱する「プレミアムフライデー」が導入されてから4カ月が経過しました。その内容は、月末の金曜日は15時に仕事を終えて、余暇を楽しんでもらうなどの個人消費喚起のキャンペーンです。

 「働き方改革」の一環でもありますが、実際に早く帰った人は、どれくらいでしょうか。ある調査結果によると、3.7%にとどまっているとのことです。これでは浸透にはほど遠い状態ということでしょう。

繰り返される“グダグダ会議”

 プレミアムフライデーを使って、さらに月曜日も休むと、3泊4日の旅行ができます。日程はタイトですが、中国や韓国、東南アジアなど海外旅行も楽しめるでしょう。

 短い日程でも存分に楽しむには、事前計画が欠かせません。効率のいい飛行機を予約し、現地でのレストランの下調べもするなど予定作りは欠かせません。多くの人は「できるだけ最短時間」「できるだけ安価」「できるだけ満足できる」旅行にしたいと考えるでしょう。

 まさに「段取りで仕事のほとんどは決まる」と言われますが、こういった事前準備は、あらゆることに適用できます。

 旅行の話を持ち出したのは、時間を使う時には段取りが大切で、それなりの出費も伴うことをお伝えしたかったからです。

 当たり前のように感じるかもしれませんが、普段の「会議」について、こう考える方は少ないようです。つまり、議論の行き先であるはずの「議題(論点)と落とし所」を決めずに会議を始めるケースがほとんどです。

 それでどうなるかというと、時間がかかり、何も決まらない会議になります。いわゆる“グダグダ会議”です。

 旅行で例えると、行き先を決めずに空港にたどり着き、すったもんだして、あっという間に休暇期間が終了するようなものです。ただ、実際の海外旅行ではそんなことは起こり得ません。お金がムダになり、出費という「痛み」が伴うからです。しかし、会議には「出費」という痛みが伴わないので、何度もグダグダ会議が繰り返されます。しかし、会議には、実は大変な出費が伴っています。

会議費用が1人40万円?

 1日8時間、週5日働くと仮定すると、月間では約160時間。年間ですと約2000時間です。年収1000万円なら時給に割り戻すと5000円、年収500万円なら時給2500円です。

 ビジネスパーソンであれば、一般的に役職が上がれば年収も増えます。そして、役職が上がれば、会議での意思決定が多くなり、出席時間も多くなります。

 企業に勤める数多くの部長クラスに聞いてみたところ、仕事の半分は会議に費やされているとのこと。つまり、月160時間のうち、80時間が会議。時給で試算すれば、月40万円が会議に向けて「出費」されています。ちょっとした3泊4日の海外旅行より多い金額ではないでしょうか。それだけ時間をかけた会議が、すべてグダグダ会議であれば、企業にとっても参加している本人にとっても非効率この上ない事態です。

 実は、会議における悩みは、以下の3つに集約されます。

【会議の3大悩み】
その1:時間 とにかく、時間が長い。
その2:中身 何にも決まらない。
その3:進行 会議が活性化しない。

 私がお会いする管理職の方に、「会議についてのお悩みはこの3つでしょう」と聞くと、皆一様に驚いてこう言います。

 「どうして、分かったのですか」

 それだけ、多くのビジネスパーソンが会議のムダについて悩んでいるのです。実は、そのムダはあることを考えるだけで、解決することができるのです。

会議の「行き先」を決める

 あることとは、会議の「行き先」を決める。これだけです。

 先ず、旅行と同じく会議における「制約」を考えてみましょう。それは、「制限時間」「参加者」です。制限時間が30分なのか1時間なのか。参加者が上司なのか部下なのか、事前の知識を持っているか、持っていないかなどが確認内容です。そうした後に「行き先」である「議題と落とし所」を会議前に考えます。

議題:論点なので、かならず疑問文にする
議題の多くが「??について」です。これだと「??について」に対する感想などのムダ話になりがちです。これを「??の何が問題なのか。(What)」、「なぜ??なのか。(Why)」、「どうしたら??できるのか。(How)」というように疑問文にします。こうすることで、会議の内容が、「問い」に対する「答え」を論じるようになるからです。

落とし所:A案かB案かを想定する
議長である場合、先の議題(論点)に対する自分の答え「A案」を持っておきます。A案以外に会議の流れであり得る「B案」も用意しておきます。こうすることで、会議が横道にそれた場合でも、議長がシナリオを持っているので、制限時間を横目に落とし所を探すことができます。

 「行き先」を考えるだけ、たったそれだけで、会議の内容は密度高く、そして時間が半減できます。しかし、考えてみれば簡単です。時間があるバックパッカーの1人旅なら計画のない旅行もあるのでしょうが、忙しいビジネスパーソンの旅行時間は限られています。事前準備をしっかり行い、予定を立てれば効率性は向上し、事前計画なし旅程は時間を浪費するだけです。

 会議にもそんな「当たり前の法則」を応用しただけなのです。しかし、当たり前の法則が応用されないと、時間と資金が無駄になります。

 ぜひ明日の会議からでも試して、その効果を実感してみませんか。

3ステップで組織の生産性が劇的に上がる! 最強の会議術 9月1日(金)、2日(土)開講!
講師の横田伊佐男氏
講師の横田伊佐男氏

 本コラム著者、横田伊佐男氏による1泊2日の合宿型講座です。「確実に」「ストレスなく」組織の生産性を上げる会議の進行手法を2日に分けてしっかり学べます。

 プログラムは「最大の効果を引き出すためのカンタン準備術」「論点を定める『拡大思考』」「アイディアを整理する『分割思考』」「圧倒的な実行力を生み出す『俯瞰思考』」などで構成。15分の簡易ミーティングから数日に及ぶビジネス合宿まで、各種会議を効率的に取り仕切ることができるようになります。

 2日間の時間投資で、すぐに会議の質が変わる本講座。ぜひご参加ください。詳しくはこちら

まずは会員登録(無料)

登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。

こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

初割実施中