富士ソフトのTOB(株式公開買い付け)を巡り、米投資ファンドのKKRとベインキャピタルによる争奪戦が異例の展開を見せている。ベインは12月18日、TOB開始の前提条件として富士ソフト側からの賛同を放棄すると発表した。ベインが「同意なき買収」に乗り出せば、TOB対象の会社側と協力しながら比較的長期的に企業価値向上を目指すPE(プライベート・エクイティ)ファンドとしては国内では前例がない状況となる。
対するKKRは現在、1株の買い付け価格9451円で富士ソフトのTOBを実施中だ。ベインの動きを受けて、TOB期間を12月19日から2025年1月9日まで延長した。株主の応募を増やし、TOB成立の可能性を高める狙いだ。
KKRのTOBが成立しなかった、または撤回された場合、ベインは25年1月下旬から2月上旬をめどにTOBを始める考えを示す。KKRのTOBより149円高い9600円の買い付け価格を想定する。市場では高価格への期待から、年初に6000円ほどだった富士ソフト株が足元では9900円前後に高騰している。
両ファンドが大株主として併存する可能性も
富士ソフトがTOBによって非公開化されれば、他の少数株主は富士ソフトから離れることになる。少数株主にとっては、より高いTOB価格を提示するベイン案の方が魅力的に映るだろう。
富士ソフト創業者の野澤宏氏はベイン案を支持している。ベインは、同氏をはじめとする創業家が保有する発行済み株式の16.18%を事実上確保する。
一方、富士ソフトは12月17日の取締役会で、9600円を想定するベイン案に反対し、9451円でTOBを実施しているKKRの提案に賛同する決議をしている。富士ソフトがKKR案へ賛同する理由の1つは、KKRが既に富士ソフト株を3分の1以上保有しているからだ。
【初割・2カ月無料】お申し込みで…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題
この記事はシリーズ「同意なき買収の時代」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。