搬送機械、産業機械、精密機械の3つの製造・販売を主力とする西部電機。幅広い分野での高度な技術を強みとし、業界での信頼を勝ち得てきた。人材を育成し、次世代へと技術を伝承するとともに、アジアをはじめとする海外シェアの拡大を目指す。同社の強みと成長の経緯を税所幸一社長に聞いた。

 西部電機は物流関連向けなどの搬送機械、バルブ駆動装置などの産業機械、高精度な部品加工に対応する精密機械という3つの領域の機器の製造・販売を主軸とする。

 搬送機械事業の主力製品は立体自動倉庫やFMS(フレキシブル生産システム)、ケース自動ピッキングシステムなど。多様な製品ラインアップや特殊仕様への対応のほか、システムソリューションをワンストップで提供できる体制も強みだ。産業機械事業ではバルブ駆動装置(バルブアクチュエータ)やゲート駆動装置を扱う。前者は水やガス、石油などの流体制御に使用されている。「バルブ、ゲートに関する深い情報網を持ち、バルブアクチュエータは国内シェア1位」と税所幸一社長は説明する。

搬送機械、産業機械、精密機械が3本柱
搬送機械、産業機械、精密機械が3本柱
同社の搬送機械、産業機械、精密機械の製品例。下左が、高精密自由形状内面研削盤(SFG-35HP)、下右がバルブ駆動装置(Semflex-A50)、上がケース自動倉庫(RIOシステム)(写真=西部電機提供)

 精密機械事業の主力製品はワイヤ放電加工機だ。細い金属製ワイヤ線に高電圧を印加して対象工作物に近づけるとアーク放電と呼ぶ超高温の火花が飛ぶ現象を利用し、この熱で金属を溶かして加工する。誤差を1マイクロメートルに抑える高い精度の加工が実現できる。

 精密機械の高性能を支える技術の1つが、「きさげ」と呼ばれる匠の技だ(下の写真)。部品同士の平面精度が不足していても、ボルト締めなどで強制的に面合わせを行うことは可能だが、この方法では面合わせ部分に継続的にストレスがかかり徐々に部品が変形し、精度が変化してしまう恐れがある。そこで「きさげ」により表面を削り平面精度を高め、無理なく面合わせを実現する技術が活用されている。この技術により結合部の長期にわたる精度維持が可能となる。「きさげの作業を取り入れ、加工精度を追求して信頼性を高めている。これが当社の強み、競合との差異化につながっている」(税所社長)。社内検定制度や精密道場と呼ばれる研修制度により、きさげの匠の技の伝承に努めている。

長期にわたる精度維持を実現するための要となる技術「きさげ」(写真右)を次世代に伝承するため、精密道場や社内検定を実施している(写真=諸石 信)
長期にわたる精度維持を実現するための要となる技術「きさげ」(写真右)を次世代に伝承するため、精密道場や社内検定を実施している(写真=諸石 信)

 2023年度時点での、3つのジャンルの売上高構成比は、搬送機械が36%、産業機械が21%、精密機械が43%。「当社が展開する3領域は使う技術も市場も異なっている。そのために技術の幅が広く、それぞれがシナジー効果を生み出していることが当社の強み」と税所社長。どの領域も、価格では勝負せず、超精密と高精度の付加価値で市場を獲得しており、それが競合優位性となっている。

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