中国勢の台頭や電気自動車(EV)への移行などで自動車業界は激烈な競争に入っている。ホンダと日産自動車の経営統合協議はその象徴だ。2024年4月、ニデック創業者の永守重信・グローバルグループ代表の跡を継いで社長CEO(最高経営責任者)となった岸田光哉氏は、世界各地の充電インフラの状況などから「EVは伸びるが、地域ごとにハイブリッド車(HV)、エンジン車などと併存する」と指摘する。独自の市場観とその中での経営戦略を聞いた。
24年、EVの世界販売の伸びは鈍化しましたが、EV市場は今後、どう推移していくと考えますか。
岸田光哉社長CEO(以下、岸田氏):EVやHV、プラグインハイブリッド車(PHV)、あるいは燃料電池車(FCV)などの車種ミックスは、今の想像を超えるかもしれないと思っています。近未来の人たちが、「昔の人たちの中で誰がこんな車種ミックスになると想像しただろうか」と思うような状況になるのでは、とさえ思っているのです。
EVはこの先10年も伸びるのでしょう。ただ、EVだけという世界は来るのかなと思いますね。結局のところ、各国のインフラ事情を含めて、どんな車がその地域に適しているのか、なのだと感じるんですよ。
欧州勢は挽回を期したEVでも先を行かれた
足元のEV販売の鈍化については「成長の過程の一時的な踊り場」と見る専門家も少なくありません。
岸田氏:例えば、課題の一つが急速充電器のようなインフラです。急速充電網を張り巡らすには設備投資も大きい。一方、HVだと充電しなくても数百キロは走れるので、今の(充電器が多くない)状態のままでも問題がない。だからEVに市場が移り切らないのだと思います。
一方でトヨタ自動車など日本のメーカーはHVで非常に強い。それを見て、ドイツの自動車メーカーなどは、違う戦略を取ることを考えてEV化を図ろうとしたのでしょう。しかし、今度はそこに中国勢がEVで欧州市場に来た。EV需要はもちろんなくなるわけはないから、そちらの道も先を行かれたということではないですか。
欧州市場でHVが強いとはあまり聞きません。
岸田氏:欧州で走っているHVは、日本車ぐらいで、欧州勢はほとんどマイルドHVです。マイルドHVというのは、エンジンを主体にして小型のモーターを使うものです。加速時などに補助的に使うことで燃費の改善や排ガスの削減を図るわけです。
それで今は、もう一度、HVへと舵(かじ)を切っているようです。結局、EV一辺倒ではなくて(当面は)複数の車種の併存型になるということです。
HVもPHVも中国勢の質は高まっている
中国はどうですか。国策でEV化を強力に進めています。
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