「TSMC(台湾積体電路製造)と競合他社の差がさらに開いた印象」――。2024年12月に米国サンフランシスコで開催された、半導体分野で世界最大級の国際会議「International Electron Devices Meeting 2024(IEDM 2024)」に参加した複数の半導体技術者がこのような感想で一致した。

 現在、半導体受託製造の分野では、台湾TSMCが60%の世界シェアを握り、世界をリードしている。今回開催されたIEDM 2024で、参加者の関心を最も集めたのは、やはりTSMCによる発表だった。最先端のロジック半導体の微細化技術について、2つの「世界初」となる技術成果を明らかにした。

 1つは、いわゆる2nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)世代のCMOS(相補性金属酸化膜半導体)ロジック・プラットフォーム「N2」に関する発表である。AI、モバイル、高性能コンピューティングなどの用途に向けた、エネルギー効率が高いロジック半導体製造技術の詳細を明らかにした。チップ(回路)同士を3次元的に接続し、高集積化を可能にする「3DIC(3次元IC)」向けに最適化したという。

 TSMCによれば、28nm世代の製造技術に比べて、エネルギー効率を140倍以上に高めることに成功したという。現在、量産品として世界最先端となる3nm世代の技術と比べても、15%の高速化(消費電力が等しい場合)、30%の消費電力削減(性能が等しい場合)、チップ密度の15%向上を達成できるとしている。

 試作チップについては、高密度化の指標となるSRAM(記憶保持動作が不要な随時書き込み読み出しメモリー)マクロの密度として38Mビット/mm2と、これまでで最高値を達成した。ロジック回路の基本素子であるトランジスタとしては、2nm世代向けに各社が開発を進める「GAA(Gate All Around)」と呼ばれる、ゲートが全方向からチャネルを包み込む構造をTSMCも採用している。

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