1/15に公開された映画「ソーシャルネットワーク」を見てきました。
これは面白いです!!
ネット業界にいる方、ファイナンス業務をする方には特に見る価値のある映画だと思います。
さて、あんまり面白かったので2回に分けて感想を書いてみます。
前半はファイナンス編として、映画の中で印象的だった幾つかの「裏切り」のシーンがありますが、その中でも最大の裏切りと言っても良いエドゥアルド・サベリンが、巧妙な資本政策によってフェイスブックから事実上追い出されるシーンについて、CFO目線で、実際にどんなやり取りがされたのか考えてみたいと思います。
≪以下ネタバレ注意≫
まず概要から。
・参照 吉永康樹のCFO News
フェイスブックは、2004年2月にサービスを開始し、それから2ヶ月後の2004年4月半ばにフロリダ州にLLCとして設立。持分は、創立者のマーク・ザッカーバーグが70%、CFOのエドゥアルド・サベリンが30%。
2004年夏にナップスターの創立者、ショーン・パーカーが参画し、弁護士と共に新会社をデラウェア州に設立し、フェイスブック事業を引き継ぐ。
持分は、ザッカーバーグが51%、サベリンが34.4%、共同創立者であるダスティン・モスコヴィッツが6.81%、パーカー6.47%、残りが設立事務を処理した法律事務所に付与。
この時にサベリンがサインした契約書には、すでに社員ではないサベリンの持分は今後希釈化することが書かれたいたが、サベリンはそのことに気付かずサインしてしまう。
その後VCから投資を受け入れた時点で、サベリンの持分は1%以下まで大きく希釈化。サベリンはザッカーバーグを訴えた。
サベリンの持ち分は、映画の中では具体的には0.03%になっていました。
また、書籍「フェイスブック 若き天才の野望」にはこのように書かれているそうです。
サベリンの株式持分は新会社に引き継がれるものの、増資が実行されたり社員に対する報酬の一環としてストックオプションが発行されたりすれば、社員ではないサベリンの持分は必然的に希薄化の対象となる。一方で、引き続いて社員であるザッカーバーグとモスコヴィッツに対しては、会社に対する貢献に見合った新株が発行される
つまり、2004年夏にナップスターのショーン・パーカーとともに新会社へ事業を移した時に、サベリンに与えられた株式(①)と、ザッカーバーグ含むそれ以外の人たちに与えられた株式(②)には大きな違いがあったということです。
それに全く気付かずにサベリンは契約書にサインをしてしまったのでしょう。
では、具体的にどんな株式だったのか。
②は、一定の条件になったら新株予約権が付与される権利が付いた優先株式だったのだと思われます。
そして、そのオプションは無償または相当低い価格で行使可能なもので、行使すればそれまでのシェアを維持できるようになっていたのだと思われます。
一方、①にはその権利は付いていなかった。
結果、VCから50万ドルの投資を受ける際に、(元々の計画通り、当然VCもグルで)その条件が発動し、新株予約権がサベリン以外の全員に付与され、同時に行使されたのだと思います。
以下のようなイメージです。
これは、2004年夏の時点の発行済株数を仮に10,000株として作ったシミュレーションです。
2004年夏の時点では、サベリンは3,440株(34.4%のシェア)を持っています。
そして、増資時に、VCに対し約400万株の新株発行を行い、同時に750万株分のストックオプションがサベリン以外に付与され、即時行使されます。
結果、発行済株式数は約1,147万株になり、3,440株しか持っていないサベリンのシェアは0.03%になってしまうという流れです。
第2位の大株主だったのが、一夜にしてたった0.03%のマイノリティ株主になってしまうとは。
実に1000分の1の希薄化!
相当恐ろしいですね。
これ何かに似ていると思いませんか。
そう、以前に上場会社がこぞって買収対抗策として取り入れた「ポイズンピル」。
これとロジックはほぼ一緒ですね。
・ポイズンピルとは Wilipedia
会社経営にとってどれだけ資本政策が大事かということが痛いほど分かる話です。
最後に、ショーン・パーカーのセリフ「100万ドル程度の企業価値で満足するな、10億ドルを狙え!」はカッコ良かった。
レピカも10億ドルを狙っちゃるか!!
ところで、その後、サベリンは裁判で共同創設者の名前とシェアを取り戻し、現在も5%のシェアを持っているようです。5%は25億ドルなので大金持ちですね。
・参照: Facebook’s Value Worth $50 Billion: Who, What, And Why?
では、今日はこの辺で。
後編はまた違う切り口で映画の感想を書いてみますのでお楽しみに。