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レピカ マーケティングCFOのブログ

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CFO業務

13 11月

シンガポールの起業家、投資家の常識について(ファイナンスの話)

前回エントリーから間があきまくってしまいましたが、久しぶりにブログを書きます。
ファイナンスに関するネタです。

singaporebar

こちらの写真は本題とは何の関係もありません。
ただのシンガポール出張の記念写真でございます。あしからず。


前置き

さて、僕がいつも楽しく読ませてもらっているthe startupのumeki氏のブログにこんなことが書いてありました。
これは、日本のスタートアップ企業のステージ毎のファイナンス額のイメージです。

the_startup


1stラウンド:1回目の増資(300-500万程度)=いわゆるシードステージ
2ndラウンド:2回目の増資(1,000-3,000万程度)=いわゆるシリーズAレベル
3rdラウンド:3回目の増資(5,000万以上程度)=いわゆるシリーズBレベル

*また、最初から億単位、3,000万単位などもあるため
 あくまで各ラウンドでの調達額は目安に過ぎず、例外も多分にあります。



日本だと、確かにこんなもんかなと、僕にとってもかなり納得感のある数字です。

一方米国はどうでしょう。

これは、TechCrunchの過去のファイナンスに関するDBで、非常に有用なデータです。

crunchdb


さて、これを見てみると、シードステージから、300万ドル(約2.4億円)、190万ドル(約1.5億円)と軒並み1億円超えの数字が並んでいます。

なんで、こんなに日本と規模が違うんですかね??
10倍は差がありますよ。

さて、ここまでが前置きです。


シンガポール出張

11/1(火)〜4(金)でシンガポールに行ってきました。
5月に行って以来、今年2度目のシンガポール出張です。
レピカアララの海外展開の足場固めをすることが目的です。

ちなみに今回どんな行程だったかと言うと、まず10/31(月)に仕事が終わってから、そのまま深夜の飛行機に乗り翌早朝シンガポール着。
で、ホテルに荷物だけ置いて、一発目のミーティングに参加、そのまま4日間で会食含め実に18アポ、21社(or個人)の方とミーティングをし、帰りも10/4(金)の深夜便。

と、まあ極めて生産性が高い(というか怒涛の)出張を満喫してきました♪


ただ、その甲斐あって、今回確実に成果につなげられる出張だったと思います。

今日は、その際にお会いした何人かの起業家の方、投資家の方との話しが非常に刺激になったのでシェアします。


シンガポールの起業家、投資家の常識とは

さて、前置きに何で米国の例を書いたかのネタばらしをしますと、シンガポールでのファイナンスに関する考え方が米国と極めて近いと感じたからです。(中国もかなり近しいです)

冒頭にファイナンスの規模感が10倍違うと書きましたが、その理由は一言で言うと成長性に対する認識が10倍違うからです。
成長性10倍というのは、同じ期間で10倍の数字を目標としているという意味です。

日本人の起業家はまず何を考えるか。
大半の人はまずは人口1億2千万人の日本市場での事業拡大を考えます。
日本人なのですから当然と言えば当然です。
(勿論、全員ではありません。)

一方、シンガポールはどうか。
人口500万人、国内市場は正直非常に小さいです。

そのため、国内市場だけで成り立つような事業をそもそも念頭に置いていません。
というか、そういう発想がありません。

常にアジア、特に中国、そして世界を見てビジネスを考えるということが彼らの常識です。


例えば、とある飲食チェーンの社長はアジアのマクドナルドになると明言していました。
つまり世界に1万店規模のチェーンを作るということです。

日本人で1万店規模の飲食チェーンを作ると豪語する起業家はあまり多くはいません。
目標1000店舗でも、周りからは壮大だ、眉唾な目標だと言われると思います。

ですが、シンガポールでは全く違います。

中国だけでも人口10億人、インドネシアが2億人、フィリピンが1億人、その他のアジア諸国を加えれば、アジアだけでも16億人のマーケットが目の前にあります。

そのマーケットに対して、1万店舗の目標はむしろ常識的な範囲というのが彼らの認識です。

勿論、1万店舗を目標とすれば、必要な資金の量は1000店舗の場合とは全く違います。

それが、結果として冒頭のファイナンス額の10倍の差に表れてきている訳です。

仮に、シードで入る投資家のシェアが日本とそれ程差がないとしたら、バリュエーションも当初から日本の10倍になるということですね。


ただ、幾ら彼らの常識だからと言って、10倍の数字を目指して、果たして達成するかどうかはまた全く別の話です。
当然、確率論的に、ほとんどの会社はそんな数字には到達しないでしょう。

ただ、中には稀に、そこに到達もしくはそれを凌駕する勢いで成長する会社があります。
そういう会社が世界で活躍するIT企業になっていきます。

異論反論覚悟であえて大きな話をすると、僕は日本から世界に通じるIT企業がなかなか出ない理由の1つはこの「常識」のせいではないかと思っています。

日本の常識は世界の非常識!

世界で活躍するITベンチャーを目指すためには「世界の常識」を持って戦わないといけないかと。


さて、今回はファイナンスの話しを中心に書きましたが、ファイナンスに限らず、我らがレピカアララチームは世界の常識を持ってビジネスを進めていきたいと思う今日この頃です。

それでは、今日はこの辺で。


5月出張時のエントリーもよかったらあわせて読んでみてください。

「今世界で断トツで成功している国『シンガポール』が凄いことになってる」
http://blog.livedoor.jp/mktgcfo/archives/2670590.html



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24 6月

電子マネーの発行主になる意味 その2:前受金について

電子マネー2


前回に続いて「電子マネーの発行主になる意味シリーズ」。

これが第2回目です。


◆前回のおさらい

まずは前回と同じ質問から。

なぜ、IYグループとイオングループは自社電子マネー(nanaco、WAON)発行にこだわったのか?

別の言い方をすると、なぜ単純にEdyやSUICAを自店舗に導入するだけではダメだったのか?

そして、これも前回のおさらいですが、答えは電子マネーの発行主になることによって、以下の3つのメリットが得られるからである、と書きました。

1.退蔵益の発生
2.前受金による資金繰り改善と運用益発生
3.新規客、客単価、再来店率アップ(=売上アップ)


今日は、この2つ目の前受金の観点について書こうと思います。


◆前受金とは

前受金とは何かと言うと、プリペイドの電子マネービジネスの世界では、それは消費者が”事前に”チャージをして”プール”されている状態のお金のことを指します。

そして、そのお金はいずれ店舗(またはEC等)で消費されるお金です。


”事前に” と ”プール”

この2つが非常に重要なキーワードです。


◆”事前に”チャージされるメリット

さて、ここで僕が前受金の説明をする時にいつも使う例を紹介します。

例えば、セブンイレブンでEdyでお弁当が売れました。

お店(またはIY社)にはお金は入ってきたでしょうか。

いえ、まだ1円もお金は入ってきていません。
ただ、「シャリーン」と音がして、レシートが出てくるだけで、商品が売れたにもかかわらずお金は入ってきていない状態です。

では、いつお店(またはIY社)にお金が入ってくるかと言えば、1ヶ月位してようやく楽天(旧ビットワレット)から振り込まれて入ってきます。


一方で、もしnanacoでお弁当が売れたらどうでしょう。

お店(またはIY社)にお金は入ってきますでしょうか。

nanacoを使うためには事前のチャージが必要なので、実はお弁当が売れるよりも前に消費者からチャージされて既にお金は入ってきているんです。

(上記は直営のセブンイレブン店舗のレジでチャージされた場合を想定しています。厳密には、FC店舗や提携店でチャージされた場合、またはクレジットでチャージされた場合でお金の流れは変わってきます。)


図解すると以下のような感じです。

電子マネー3


nanaco、WAONのような自社発行電子マネーが最も現金化が早いですね。

更に言うと、現金販売と比べても現金化が早い。

つまり、現金販売であれば、商品販売時に現金を受け取りますが、nanaco、WAONでは、それよりも”事前に”チャージという形でお金を受け取っている訳です。

ちなみに、EdyやSUICAを導入した場合との比較では、資金繰りのサイトで優に2ヶ月は違ってきます。

この差は大きいですね。


◆”プール”されるメリット

消費者からチャージされたお金は、それを使って物やサービスが売れるまで、発行主企業のお財布にプールされます。

では、幾らくらいの金額がプールされるのでしょうか。

前回同様、スターバックスコーヒージャパンの数字を見てみましょう。

2011年3月期の決算短信によると前受金の残高はなんと19億円です。

かなりの額です。

このお金を銀行に預けておけば勿論利息がつきます。
もしくは、銀行の利率はスズメの涙程度ですので、もう少し利回りの良い運用をしても良いでしょう。

残高の一部を借入金の返済に充てる手もありますし、新しい店舗を出店するための投資に充てることもできるでしょう。

19億円が企業のお財布にプールされていることで、様々な経営の選択肢を増やすことが出来る訳です。

もし、スターバックスジャパンが「スターバックスカード(自社の電子マネーサービス)」のサービスをやっていなければ、この19億円は存在しなかった訳ですから、そう考えるとメリットは大きいですね。


◆前受金はあくまで消費者から預かったお金

ここから重要なポイントになります。

上で説明してきたとおり、電子マネーの発行主となることで前受金が発生し、資金繰りのサイトが大きく改善したり、運用益を狙うことができたりと、非常に大きなメリットがあります。

ただ、ここで注意しなければいけないのは、前受金はあくまで消費者から預かっているお金だということです。

言い方を変えると、これは

「将来、消費者に対し預かった前受金相当の商品やサービスを提供しますよと約束している状態」

だということです。

これを正しく認識しておかないと大変なことになる場合があります。


例えば、以前に経営破たんした某英会話教室。

ここは、割引チケット制度という何十回か分の授業料を前払い(会社からすると前受)する料金制度をとっていました。

この割引チケット制度も前受金が発生するという意味では、自社発行の電子マネーのビジネスモデルとよく似ています。

そして、当時の経営者が、この消費者から預かった授業料をある意味私物化してしまい、豪華絢爛な社長室を作るなどして使いこんでしまったため、講師などへの給与が払えなくなり、遂には経営破たんしてしまいました。

また、経営破たん後、それまでに預かっていた授業料が返金されず、大きな社会問題となったことは記憶に新しいところです。


◆会計的には前受金は「負債」

少し、会計の話しをすると、前受金は貸借対照表の貸方、つまり負債項目の科目です。

まあ、平たく言うと消費者から「借金」をしているのと同じことだと言えます。

その借金は、将来、お金を預けてくれた消費者に対し、商品やサービスで返していかなければならないものです。

そして、間違ってそのお金を使いこんでしまうと、将来返済できなくなってしまう可能性が出てくるということです。


さて、長くなりましたのでここまでの話しを整理しましょう。


電子マネーの発行主になるメリット:

(1)前受金が発生し、資金繰りのサイトが改善したり、運用益を狙うことができるなど、大きなメリットがある。
(2)スターバックスジャパンは実際に19億円の前受金を計上している。

注意点とリスク:

消費者から預かったお金を適切に管理しておかないと、将来返済できなくなる可能性がある。


◆資金決済法による消費者保護の仕組み

2010年4月1日に「資金決済法」という法律が施行されました。
これは、電子マネーを発行する会社にとって非常に重要な法律です。

この法律の目的の1つは、上記の某英会話学校の破たんによって、消費者に授業料が返金されなくなってしまうような事態から消費者を保護することにあります。

つまり、一言で言えば、電子マネーの発行主は、この法律に則って、消費者から預かったお金を適切に管理しなければならないということが定められた法律です。

当然、先のIYグループ、イオングループもこの法律に則って電子マネーサービスを提供しています。

そして、2社は前受金を適切に管理する一方で、資金繰りのサイト改善、そして運用益という大きなメリットを享受している訳です。


最後にレピカの話を少し。

当社が提供するレピカのサービスは、nanacoやWAONのような自社発行電子マネーのミニ版をASPで提供するものです。


つまり、少額の投資で、2社同様に資金繰りのサイト改善、運用益のメリットを享受することができます。


また、当社では、資金決済法についてのアドバイスもさせていただきますので、もしレピカのサービスにご興味ございましたら気軽にご連絡ください。
レピカの導入事例はコチラ


それでは、次回に続く。



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19 6月

電子マネーの発行主になる意味 その1:退蔵益について

電子マネー

今日は久しぶりに電子マネーの話を書きます。

題して「電子マネーの発行主になる意味」、全3回の予定です。

まず、最初に質問です。

なぜ、IYグループとイオングループは自社電子マネー(nanaco、WAON)発行にこだわったのか?

別の言い方をすると、なぜ単純にEdyやSUICAを自店舗に導入するだけではダメだったのか?

何故でしょう。

この2社は、相当な金額の設備投資をして、自前の金融系の決済システムを構築し、グループ内に電子マネーを扱う専門会社を設立し、電子マネーサービスを始めています。

果たして、そこまでする必要があったのでしょうか。

その答えを、本ブログの中で順番に説明していこうと思います。


まず先に結論を書いてしまいましょう。

2社にとって、充分以上にその意味はあった

というのが結論です。


◆電子マネーの発行主になることのメリット

何故かと言えば、電子マネーの発行主になることによってそれ以上に大きなメリットを得られるからです。

具体的に得られるメリットは以下の3つ。

1.退蔵益の発生
2.前受金による資金繰り改善と運用益発生
3.新規客、客単価、再来店率アップ(=売上アップ)

今日は、1つ目の「退蔵益」について説明します。


退蔵益と言うのはあまり聞きなれない言葉ですが、プリペイド式の電子マネーのビジネスモデルを考える上で非常に重要な要素となるものです。

具体的には、消費者が電子マネーにチャージしたけど結局使われなかった金額のことを指します。
そして、その金額は電子マネーの発行主が最終的に利益として取り込むことができるものです。

例えば、Edyにまだ300円分のチャージが残っていたが、どこかに無くしてしまったといった場合、その金額はどうなるかと言うと、発行主である楽天(旧ビットワレット)の利益になります。

このメリットは、電子マネーの発行主にならないと享受できません。

ちなみに、それはどの位の金額になるのでしょうか。


◆退蔵益の参考例

参考までに幾つか例を挙げます。

まず古い例ですがテレフォンカード。
これも広い意味でプリペイドの電子マネーの一種です。

テレフォンカードはNTTが発行するものですが、使われない分は会計上は5年ほどでNTTの利益になります。

NTTはピーク時に年間2500億円のテレホンカードを発行していましたが、仮にこの2割、3割使われないとしたらどうでしょう。
実に年間500億~750億円の退蔵益がNTTに発生していたことになります。


では、WAONはどうか。
2011年2月期のイオンの決算短信をみると、WAONの発行枚数は1850万枚、年間の決済金額は8580億円と書かれています。
年間のチャージ額は大よそ決済額と同等になりますので、年間に8580億円程度のチャージがあったとみることができます。

勿論、テレホンカードと比べると、使われない分の割合はかなり小さいはずなので、仮に1~3%使われないとすれば、それでも年間86億~257億円程度の退蔵益が発生する計算になります。

結構な額ですね。


続いて、スターバックスコーヒージャパン。
ここは、スターバックスカードという自店舗だけで使えるカードを発行しています。
2011年3月期の決算の数字を見ると、プリペイドカード失効益という科目で1.4億円計上されています。
イオンとは企業規模が違いますので比べると数字は小さいですが、それでも1.4億円です。

到底見過ごせる金額ではありません。


◆退蔵益の有効な活用法

そして、ここからが重要。
電子マネーの発行企業はこの退蔵益をどのように考えるべきなのか。

単純にしめしめ儲かったと利益に計上して以上完了という考え方もあると思います。

一方で、別の考えをすることもできます。
つまり、その金額をよくお店に来てくれるお客様(ロイヤルカスタマー)に還元していこうというものです。

例えば、電子マネーで商品を買ったらポイントが溜まったり、値引きになったら、お客様は嬉しいですよね。

このポイントや値引きの原資に先ほどの退蔵益を活用するというのが、僕は1つの退蔵益の有効な活用法だと考えます。

そうすればお客様もハッピー、企業もハッピーで、いわゆるWin-Winの関係(最近あまり使わない言葉になってきましたが)を構築することができますし、企業としては実質的に販促費をかけなくてもロイヤルカスタマー向けの販促を打つことが出来る訳です。


もう1つの有効な使い方は、CSRの活動の一環として寄付にまわすというものです。
実際、上記イオンそれからスターバックスは、カードからの収益の一部を寄付するという活動をしています。

これは企業のCSRの活動として大いに意義のあるものだと思います。

(参考)
・ご当地WAON(収益の一部が地域活動に寄付される)
・イチロー・スターバックス カード 寄付報告(若干古いリリースですが)

最初の質問に戻りますが、こう考えると、IYグループとイオングループの2社が自社電子マネー発行にこだわった理由が少し分かりませんか。


さて、長々書いてきましたが、ここでレピカの話を少し。

当社が提供するレピカのサービスは、実はこのnanacoやWAONのミニ版をASPで提供するものです。

つまり、自社で大規模なシステム開発投資をしなくても、少額の投資で自社の電子マネーを発行することができます。

既にカフェドクリエ様を始め多くの企業でご利用いただいてますので、もしご興味ございましたら気軽にご連絡ください。
レピカの導入事例はコチラ

それでは、次回に続く。


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2 2月

映画「ソーシャルネットワーク」 (前半)資本政策について

1/15に公開された映画「ソーシャルネットワーク」を見てきました。



これは面白いです!!
ネット業界にいる方、ファイナンス業務をする方には特に見る価値のある映画だと思います。

さて、あんまり面白かったので2回に分けて感想を書いてみます。

前半はファイナンス編として、映画の中で印象的だった幾つかの「裏切り」のシーンがありますが、その中でも最大の裏切りと言っても良いエドゥアルド・サベリンが、巧妙な資本政策によってフェイスブックから事実上追い出されるシーンについて、CFO目線で、実際にどんなやり取りがされたのか考えてみたいと思います。


≪以下ネタバレ注意≫

まず概要から。

・参照 吉永康樹のCFO News

フェイスブックは、2004年2月にサービスを開始し、それから2ヶ月後の2004年4月半ばにフロリダ州にLLCとして設立。持分は、創立者のマーク・ザッカーバーグが70%、CFOのエドゥアルド・サベリンが30%。

2004年夏にナップスターの創立者、ショーン・パーカーが参画し、弁護士と共に新会社をデラウェア州に設立し、フェイスブック事業を引き継ぐ。
持分は、ザッカーバーグが51%、サベリンが34.4%、共同創立者であるダスティン・モスコヴィッツが6.81%、パーカー6.47%、残りが設立事務を処理した法律事務所に付与。

この時にサベリンがサインした契約書には、すでに社員ではないサベリンの持分は今後希釈化することが書かれたいたが、サベリンはそのことに気付かずサインしてしまう。

その後VCから投資を受け入れた時点で、サベリンの持分は1%以下まで大きく希釈化。サベリンはザッカーバーグを訴えた。

サベリンの持ち分は、映画の中では具体的には0.03%になっていました。
また、書籍「フェイスブック 若き天才の野望」にはこのように書かれているそうです。

サベリンの株式持分は新会社に引き継がれるものの、増資が実行されたり社員に対する報酬の一環としてストックオプションが発行されたりすれば、社員ではないサベリンの持分は必然的に希薄化の対象となる。一方で、引き続いて社員であるザッカーバーグとモスコヴィッツに対しては、会社に対する貢献に見合った新株が発行される

11

つまり、2004年夏にナップスターのショーン・パーカーとともに新会社へ事業を移した時に、サベリンに与えられた株式(①)と、ザッカーバーグ含むそれ以外の人たちに与えられた株式(②)には大きな違いがあったということです。

それに全く気付かずにサベリンは契約書にサインをしてしまったのでしょう。

では、具体的にどんな株式だったのか。

②は、一定の条件になったら新株予約権が付与される権利が付いた優先株式だったのだと思われます。
そして、そのオプションは無償または相当低い価格で行使可能なもので、行使すればそれまでのシェアを維持できるようになっていたのだと思われます。

一方、①にはその権利は付いていなかった。

結果、VCから50万ドルの投資を受ける際に、(元々の計画通り、当然VCもグルで)その条件が発動し、新株予約権がサベリン以外の全員に付与され、同時に行使されたのだと思います。

以下のようなイメージです。
これは、2004年夏の時点の発行済株数を仮に10,000株として作ったシミュレーションです。

フェイスブック


2004年夏の時点では、サベリンは3,440株(34.4%のシェア)を持っています。
そして、増資時に、VCに対し約400万株の新株発行を行い、同時に750万株分のストックオプションがサベリン以外に付与され、即時行使されます。

結果、発行済株式数は約1,147万株になり、3,440株しか持っていないサベリンのシェアは0.03%になってしまうという流れです。

第2位の大株主だったのが、一夜にしてたった0.03%のマイノリティ株主になってしまうとは。
実に1000分の1の希薄化!

相当恐ろしいですね。

これ何かに似ていると思いませんか。
そう、以前に上場会社がこぞって買収対抗策として取り入れた「ポイズンピル」。
これとロジックはほぼ一緒ですね。

・ポイズンピルとは Wilipedia

会社経営にとってどれだけ資本政策が大事かということが痛いほど分かる話です。


最後に、ショーン・パーカーのセリフ「100万ドル程度の企業価値で満足するな、10億ドルを狙え!」はカッコ良かった。

レピカも10億ドルを狙っちゃるか!!


ところで、その後、サベリンは裁判で共同創設者の名前とシェアを取り戻し、現在も5%のシェアを持っているようです。5%は25億ドルなので大金持ちですね。


・参照: Facebook’s Value Worth $50 Billion: Who, What, And Why?


では、今日はこの辺で。


後編はまた違う切り口で映画の感想を書いてみますのでお楽しみに。


20 6月

(続き)国際会計基準適用でポイントの会計処理はどうなる


今日は、前回の続いて僕のレピカでの本業であるCFO業務の話しで、ポイント使用時にどういう会計処理になるかを書きます。

前回、既存の日本の会計基準でも国際会計基準(IFRS)でも、一定期間で見れば売上、利益は変わらないと書きましたが、それはIFRSでは売上が将来に繰り延べられるだけだからです。

まずは、おさらいですが、これがポイント付与時の処理。
1,000円の商品が売れて10%のポイントが付与され、付与されたポイントは将来的に80%が使用される前提です。

<既存の日本の会計>
現 金1,000円/売 上1,000円

<国際会計基準>
現金1,000円/売 上 926円
       /ポイント負債74円

売上=1,000×1,000/(1,000+[100pts×80%])=926


続いて、これがポイント使用時の処理です。
付与された100ptsのうち、50ptsが使用された場合の処理です。

<既存の日本の会計>
売上発生なし

<国際会計基準>
ポイント負債46円/売 上 46円

売上=74×50pts/(100pts×80%)=46


つまり、日本の会計だとポイントが使用されたときには売上ゼロでしたが、IFRSだと、売上が46円計上されます。

最初、1,000円の売上が926円になり、74円下がってしまいましたが、ここでかなり取り戻しました。

さらに、あと30pts分使われると、全部取り戻します。

<国際会計基準>
ポイント負債28円/売 上 28円

売上=74×30pts/(100pts×80%)=28


ここで、あれ?まだ20pts残ってるじゃん!と思うかもしれませんが、元々の前提が付与したポイントの内80%が使われるというものなので、これで計算はピッタリです。

どうでしょうか。
ポイントを活用して、ちゃんとリピート売上につなげていけば、売上も利益も変わりません。

会計基準に惑わされずポイントでどんどんリピート促進していきましょう。

プロフィール

加嶋 正洋

CFOですが、マーケティングをこよなく愛しています。
現在は、ギフトカード事業、メール事業のレピカ取締役と、AR事業の子会社でアララの取締役をやっています。
ITと店舗を繋げる仕事が大好きです。

ブログのテーマは、飲食店、エステ、美容室等の集客・リピート来店促進、ツイッター、フェイスブック、グルーポン、その他ソーシャルツールの活用法、そして僕の本業(?)のCFO業務である会計や財務についてです。
それから、経営者交流会を定期的に開催していので、その案内もこちらでしています。

よろしくお願いします!

<経歴>
1998年、ジョージワシントン大学MBA修了後、日本マクドナルド㈱で経営戦略立案、新業態立上プロジェクトを担当。2001年、米国公認会計士資格取得。2004年、㈱サイバードにおいて、某電子マネー大手企業との共同でモバイルと電子マネーを活用した新サービスを推進。
2006年8月、㈱レピカ設立、同社代表を務めたのち、2008年6月に取締役CFOに就任。2010年10月、アララ㈱設立、取締役就任、現在にいたる。

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