東の横綱不在、つまり際立って目立ったヒット商品がなかった2010年上期のヒット商品番付です。
日経MJ6月16日付から
2010年上期ヒット商品番付
東 |
| 西 |
― | 横綱 | 3D |
スマートフォン | 大関 | 竜馬 |
iPad (アップル) | 関脇 | LED電球 |
東京スカイツリー | 小結 | ラー油 |
コロプラ (コロニーな生活☆PLUS) | 前頭 | もしドラ (ダイヤモンド社) |
220ボルト家電 | 同 | ビッグアメリカシリーズ (日本マクドナルド) |
デパクロ | 同 | オルニチン |
1Q84 BOOK3 (新潮社) | 同 | ストライド (キャドバリー・ジャパン) |
250円牛丼 | 同 | 150円ロールケーキ |
こちらいつも参考にさせてもらっている理央 周さんのブログ
http://ameblo.jp/businessjin/entry-10564511686.html
この中で、僕がまず気になるのはやはりマックのビッグアメリカンと250円牛丼です。
共に大ヒットとは言え、その裏にあるマーケティングという意味では対照的に見えます。
つまり、方や完全に価格競争から脱しブランディングを強化するマックと、方や、ギリギリの価格競争で体力を擦り減らす牛丼チェーンです。
以下は、牛丼チェーンの参考記事です。
すき家と松屋、最安値250円に 吉野家つぶし“仁義なき牛丼戦争”
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100405/biz1004051522009-n1.htm
この牛丼チェーンの価格競争は、僕が1998年に日本マクドナルドに入社して以降のマクドナルドの価格戦略を思い出させます。
僕が入社した当時はハンバーガーは1つ130円でした。それを2000年には平日半額の65円に、2002年には59円にまで値下げしました。
値下げから1年くらいはすさまじく売れました。それこそ2000年のヒット商品番付の西の横綱は「平日半額バーガー」でした。その位世の中にインパクトを与える価格でした。(ちなみに東の横綱は「ユニクロ」)
しかしながら、その後の消費者の価格に対する「慣れ」とともに一気に業績は悪化していきます。
その当時の消費者調査の推移が面白いものでしたので、若干うろ覚えですが紹介します。
<マクドナルドのイメージ>
かっこいい (アメリカ文化の象徴)
↓
母親 (家族向けのイメージでここまでは良いでしょう)
↓
友達 (この辺からやばい)
↓
ペット (ここまで来ると完全に消費者に見下されています)
価格戦略が一気に進んだタイミングと重なるように、イメージが「友達」、「ペット」となっていきます。
ここから分かるのは、価格戦略が企業のブランドイメージに大きく影響があるということです。
そして、消費者が価格に慣れ、売上が思ったほど上がらなくなってくると残るのは「悪いブランドイメージ」のみです。
そして、この悪いブランドイメージが企業に与える影響は、実は想像以上に甚大です。
一番良くないのは店舗のスタッフの士気が下がり、笑顔の接客が徐々になくなってしまうことです。
店舗のスタッフは当然、かっこいい、働き甲斐のあるお店で働きたいと思っています。それが、お客様からそのように見られなくなってくると段々と胸を張って自信をもった接客ができなくなってしまうということです。
現在の牛丼チェーン各社がそのようになっているとは言いませんが、そうなる可能性は大いにあります。特にシェアを奪われる「吉野家」は厳しいかもしれません。
そうなる前に一刻も早く価格以外での勝負をしかけないといけません。
マクドナルドも価格戦略から脱するまでかなりの時間を要しました。それだけ難易度は高いということだと思います。
この時、1位企業と2位以下の企業では戦い方が違うと言われています。
1位企業は、王者の戦略を取ることができます。つまりマクドナルドがアメリカンの王道のハンバーガーを出してきたように。
一方、2位以下の企業は、1位企業がやりたくても出来ないことを1つ1つやるというのが戦略になるかと思います。例えば、手間はかかりますが、完全カスタマイズのバーガーを出したり、世で流行っているものをいち早く取り入れたり。(モスのざくざくラー油バーガーとか)
さて、これからどこの牛丼チェーンが最初に価格戦略から脱するか、それを見ているのは楽しみではあります。
それでは。